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眠り猫は抱き枕を離さない  作者: しんら
19/30

18.(sideフィー)

 

 クラウド・ハリスのことは以前から知っていた。


 2年ほど前、突然、副都に現れたSクラス冒険者。

 ハイスペックで見目麗しい少年の存在にギルド内だけでなく街全体がざわめいた。


 だが、その目がリディアを追っている事に気づいた人はあまりいなかったかもしれない。


 焦がれるような切ない視線だった。

 だから印象に残っている。



 二人に接点があるなんて話は聞いたことがないし、リディアはここ数年、恋愛に浮かれるような状況じゃなかった。それにリディアの方は微塵も彼を意識していなかった。





 リディアとは同郷だ。


 わたしは容姿とは真逆で、ひどく可愛げのない子どもだった。

 まわりの同年代はみんな阿呆に見えたし、容姿だけを見てちやほやしてくる大人は愚かだと思ってた。


 両親はわたしをかわいがってくれたけれど、可憐に、おしとやかに、ただ笑っていることを求めた。それは、ただの人形だ。


 親や周りから求められるものと自分の性格との埋められない差が苦しかった。

 なぜ男に産んでくれなかったのかと、理不尽に両親を責めたこともあった。

 結婚が女の幸せだと説く両親に反発し、男に頼らず1人で生きていくと強く心に決めていた。



 そんなわたしを差し置いて、近所でもとびきり変わっていたのがリディアだ。


 誰にも理解できない不思議な発言をする子ども。数字や計算が好きとかで、ぼんやりしているのに頭はよかった。

 いま思えば、前世が影響していたのかもしれない。


 完全に周りから浮いていたし、嫌われてはいないけど遠巻きにされていた。

 本人は全く気にしていない様子だったけど。



 別に仲がよかったわけではない。でも、わたしはリディアを強く意識していた。


 ある時、自由気ままに生きている彼女があまりに羨ましくて、自分の中の消化できない苛立ちをぶつけてしまったことがある。リディアは何も悪くない。

 身勝手な怒りを一方的にまくし立てたわたしに、彼女は呆気にとられていた。


 そして一言、こう言った。



「フィーは、かっこいいね」



 その言葉に、どれほど自分を恥じたか。


 嘘のない言葉に、どれほど救われたか。


 リディアだけがわたしを見てくれた。




 副都に行って冒険者になる。

 いよいよ耐えられなくなって、思いつきで宣言した。

 そんなわたしを止めなかったのも笑わなかったのもリディアだけだ。


「でも、フィーなら稀代きだいの悪女にだってなれるよ。その容姿と演技力で周囲を欺いて、愚かな男たちを侍らせて貢がせるの。すごく似合う」


 ぶん殴ってやった。


「なんにでもなれるよ。フィーらしく生きられる場所に行けばいい」


 逃げていい。

 一緒に行こう。


「わたしはギルド職員になる」


 そう言って、さっさと有言実行した彼女を心から尊敬している。



 リディアは可愛いくせにぼんやりしているから、わたしが守ろうと決めた。

 悪い男に騙されそうになるだろうから目を光らせておこう。


 息苦しかった世界から救い出してくれた友人。


 悲しい出来事に打ちのめされるあの子に、わたしは何もしてあげられなかった。




 クラウド・ハリス。

 再び現れ、今度はリディアに急接近した。

 今回は好意を隠すことなくグイグイ攻めているらしい。

 見ている方が当てられると、職場内でも噂のようだ。

 気づいていないのは究極に鈍いリディアだけだ。


 わたしが静観しているのは、リディアの笑顔が明るくなったからだ。最近は顔色もいい。


 でも。

 もしも生半可な覚悟でリディアを口説いているなら許さない。

 Sランクだろうと関係ない。

 ぶちのめす。



フィーさんはなんの戦闘力もないうさぎさんだけど心意気だけはSランク。

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