10.(sideクラウド)
リディアさんの家を出て、トカゲの短い足でなんとか帰りついた実家。息子が3ヶ月失踪していたというのに、家族はこれっぽっちも心配していなかった。
「あらあら、トカゲちゃん」
「なんだ、帰ってきたの」
「クラウド、久しぶりだなぁ」
上から母、姉、父。
家族揃って最強種の竜種だからこそ、万が一にも何かあるわけないと思っている節がある。
ちなみにトカゲの姿になってしまうのは家族の中でぼくだけ。魔力が多すぎて制御できず、魔導管が詰まってしまうらしい。要はぼくが不器用なだけ。
でもさ、竜なのにトカゲになっちゃうってところがさ...なんかさ...。
母さんの手によって魔力を整えられたぼくは、久しぶりに人の姿に戻った。
「...番を見つけた」
「まぁ、それじゃ早くその体質を治しなさいな」
「治せるならとっくにやってるよ!」
「...あらあら、そんな泣き言しか言えないなら番様のことは諦めなさいね」
「え」
「お前のような心の弱い男と生涯を共にしなければならないなんて、その方が可哀想だもの」
「え、母さん...?」
「二度と番様と会うことは許しませんよ」
終始にこにこ微笑んだままの母さんに戦慄する。
「や、ちょっと待って!」
土下座する勢いで許しを乞い、ヘタレた根性を叩き治せと命令された。母さん怖い。
魔力を安定させるためにと謎の爺様の元に修行に出され、したくもない旅をさせられた。
少し離れるだけのつもりで愛しい人の部屋を抜け出して、リディアさんに会えなかった3年間。地獄。
大陸中をあちこち連れ回され、死にたくないから必死に食らいついて生き延びた。なんやかんやで気づいたらSランク冒険者になってて、なぜか爺さんがちょっと得意そうだった。
ずっと一緒に旅してピンピンしてるあの爺さんこそ化け物なんですけど。魔物の類いじゃないの、あれ。
何度か死んだ気もするけど、魔力の制御も安定しようやく帰郷を許された。
リディアさんに会える!とギルドに向かったけれど、彼女はぼくに気づきもしなかった。番だと思ってるのは僕だけなんだと悲しくなった。でもそんなことで諦めるなら今ここにいない。
今もまだあの頃のように苦しんでいるのなら、リディアさんは匂いを感じ取れない。心が疲れきって体に負担がかかってしまった結果。
匂いを感じ取れないリディアさんに番の話をしてもきっと信じてもらえない。だったら男として好きになってもらうしかない。
これから始めるんだ。口説いて落として自分の番になってもらうんだ。好きだって伝えて抱きしめて匂いをかいでキスをして、それからそれから...なによりリディアさんのそばにいたい。
ぼくはその日、ギルド職員になることを決めた。
そのせいで彼女から再び引き離されるとか、予想できるわけないじゃんか。
ただただリディアさんに夢中




