演習地
ラスティの視点です。
自分の世界観を描くのって難しいですね。
だって、自分でも細かい部分はまだ知らないから( ̄▽ ̄;)
エルデン国は1つの大陸だ。
360度海に囲まれている。
他の大陸と比べると小さいが国として見れば大きい方だ。
大陸を囲むように山があり、一部途切れている場所に大きな港町がある。
初代王のアズベルトが外敵から国を守る為に魔法によってこのような形に作ったからだと言われている。
海があり山があり森があり草原があり畑がある。
エルデン国は自然豊かで春夏秋冬、色んな物が採れるので食材には事欠かない。
これらがエルデン国の特産と言えるだろう。
僕達の演習が行われるのは王都の東側にある森の中だ。
徒歩で3日ほどかかる。
移動は馬車か馬でといきたいところだけど、僕ら学生にとっては演習だから残念ながら徒歩なんだよね。
ただ、王太子様と、3人の学者は馬車なので少し先行している。
その護衛である父上率いる聖騎士団は馬で先行している。
僕達は第3騎士団と森を目指している。
森には動物と多少魔物もいる。
まあ、そこまで危ないものは住んでいない。
森の近く町に一泊して森に入ることになった。
先行していた王太子様達は2泊している。
王族が泊まると言うことで町は大騒ぎだった。
小さくないけど大きくもない町に王族や貴族が泊まるのを想定した宿屋は無い。
食事だって庶民の食べるようなものしかない。
そこで材料持参で厨房だけ借りることにして、先に行かせておいた料理人が用意していた。
まあ、人数が人数なので僕達生徒と第3騎士団は泊まりきれないので町の外で野営だ。
事情を知らない人が見れば明らかに異質過ぎる光景だろう。
今回の遺跡発見はたまたま訓練にきていた第3騎士団が発見したものだ。
通常であれば王族が調査に同行するなんてことはないんだけど……。
実はウィルがかつて利用していた場所なんだとか。
そうなると王様や父上達が興味を示さないわけがない。
当然僕も。
そんなわけで僕の演習と絡めたわけ。
皆には言えないけど。
本当は王様も行きたがっていたんだけど、王様と王太子様が揃って不在ってわけにはいかないので、平和的にジャンケンで決められた。
負けた瞬間の切なそうな王様の顔。
仲の良い友達に仲間外れにされた子供のようだった。
因みに兄上は外交で留守。
一番前は案内役の第三騎士団第1班、その後に王太子様と父上が率いる聖騎士団の第1班。学者が3人。その後ろが僕のクラス40人。最後尾に第三騎士団の第2班。
全員で100人近い人間の移動だ。
そう言えば 、出発前に王太子様が一緒だって聞いて皆、驚愕していたなー。
騎士団達もいて大所帯だから他のクラスは別の森に演習に行っている。
不満たらたらで……。
遺跡についた頃は昼を過ぎていた。
テントの設営や準備などもあるので調査は明日の朝からとなった。
保存が効くように硬く焼いたパンと塩の効いた缶詰めと水が今日の昼食。
緊急時の非常食を食べるのも訓練の1つ。
不味くはないんだけど……。
美味しいサンドイッチが食べたいなぁー。
昼食がすむと遺跡近くでテントを張り夕食の支度を始めた。
昨日は整備された町の近くだったので問題無くテントが張れたけど、森の中は石がゴロゴロしていたり、木の根がはっていたりして場所決めから四苦八苦。
足場が悪いと杭を打つ時、踏ん張るのが難しかったり、テントの中が凸凹してるので簡易ベッドが設置しにくかったりと良い経験になったと思う。危険地帯の場合はテントを張らずにすぐに逃げれれるようにそんまま寝転んだり木に持たれて休息をとることになる。
僕はまだ経験が無いけど。
薪を拾ってきた班は火を起こし、料理班は野菜や肉を切り、スープを作る。
パンはさっきと同じ硬いパン。
野宿だとほぼ、このパンを食べるのが確定。
料理する余裕がある時はこんな風にスープを作って浸して柔らかくして食べるんだ。
今日は町で買った肉や野菜を使っているけど、場合によっては森で狩りをしたり食べられる野草やキノコ、魚を釣るとかして食材を調達して作るんだ。
それが難しい時は干し肉や乾燥野菜を使って作る。
1年生の時に学校の実習で作ったけど、正直好まない。
缶詰が開発されたあとは随分美味しくなった。
この缶詰の発案はアリシアなんだ。
本当に色々思いつくよな。
干し肉と干し野菜で作ったスープの不味さをアリシアに零したのが切っ掛け。
なんせ僕は粗食に慣れてないから本当に美味しくなかったんだよ。
そしたら缶詰を作れば問題無いじゃないかと。
そのまま食べれる缶詰と火を通した食材が入った缶詰と中身をお湯に溶かせば美味しいスープになる缶詰と様々だ。
王様や王太子様も気に入って即採用。
今、ルーク王子が中心になってたくさんの試作品を開発中らしい。
ゆくゆくはこれも特産品の1つになるだろう。
「ラスティ様。王太子殿下が食事の後にお話があるとのことです」
見覚えのある父上の部下の1人が僕のテントまで伝令に来た。
「えっと……」
僕は授業の一環でここにいるので、それがありなのかどうか戸惑う。
訓練じゃなければ特に問題は無いだろうけど、特別扱いとか思われたりしないのかな?
まあ、皆僕のことを知っているんだから不思議に思われることもないだろうけど。
断るべき?
「もう1つ伝言です。『お前が会いたい人がいるぞ!』だそうです」
この時期で王太子様から言われるその人物に当てはまるのは1人しかいないんですけど……。
期待しますよ、王太子様。
「片付けが済み次第お伺いしますとお伝えください」
僕はなるべく平常心を保ちながらそう伝えた。
僕はキッチリと後片付けをしてから、先生に許可をもらって王太子様のテントを訪ねた。
中には父上もいて。
「ウィル!!」
駆け寄って抱きついた。
小さい頃からそうしているから16になっても癖が抜けない。
最近のウィルは大きい方の二十歳手前ぐらいの姿をしている。
僕より頭一つ分背が高い。
今日は黒に金糸の刺繍を施されたローブを身につけている。
「ここに調査に来るって言うからさ、何か懐かしくて参加させてもらったんだ。一応肩書きは王家の客員魔術師」
ウィルは懐かしげに目を細めた。
「ここはどういところなの?」
「ここはね、この国を建国する時に本拠地にしていた建物だよ。僕が魔法で作ったんだ」
のほほんと驚愕の事実を吐露した。
王太子様も父上も驚愕している。
ここはエルデン国の始まりの地と言ってもいいような場所というわけだ。
この話を聞いたら王様はどんな顔をするだろう?
「初代の王ってどんな人だったの?」
僕は興味津々に聞いた。
だって、初代の王を見た人物の話なんて、そうそう聞けるものでは無い。
「どんなって……」
ウィルは腕を組んで首を傾げた。
「正義感が強くて飴と鞭の使い分けが美味かっったんだと思うよ。従わない者に脅しをかけまくった後に甘い誘惑で安心させて手のひらで上手に転がしていて見てて面白いって側近が言ってたし。腹黒で強かとも言ってたはず」
「ウィル自身はどう見えてたの?」
「 うーん、その頃の僕は今より人間の感情に疎かったから」
え? 信じられないんだけど。
ウィルはどっちかというと人の心の機微を敏感に読み取る方に僕には見えるし。
でも、確かに読み取るのは上手いけどウィル自身の感情って聞いたことないな。
「でも、6人の中では一番気に入っていたよ」
「6人って?」
「その当時、国を治めていた王だけど?」
ウィルはそれが何か? という風に首を傾げる。
「6人の王、全てと知り合いなのか?」
王太子様が驚愕の顔のまま聞いた。
「それはそうだよ。6人に国造りを進めたのは僕だし」
「……それって、歴史書に出てくる賢者のことなの?」
確か歴史の勉強で世界で賢者の導きによって世界に6つの国が誕生したと習ったはずだ。
「賢者って言ったこと無いけど、多分それ」
僕は益々吃驚してしまった。
それは王太子様も父上も同じだと思う。
ウィルにとっては単なる過去の話だけど僕達にとっては凄いことだ。
ウィルは僕達の様子に首を傾げるばかりだ。
感覚の違い。
これが疎いに繋がるのだろうな。
「あの時はもう来ることも無いから片付けようと思ったんだけど、アズベルトが記念に残しておきたいっていうから、そのままにしてあったんだ」
「扉が開かないって報告が聞いていたが鍵は?」
王太子様が驚愕で開けっ放しになって乾ききった喉を紅茶で潤してから聞いた。
「僕か、アズベルトの血を引いている者なら誰でも開くよ」
その後に色々話してから1度自分のテントに戻ったけど遺跡が王家縁の物と判明したことにより、僕も王太子様達と行動することになり、まずは王族である王太子様、父上、そして僕の3人だけが入ることになった。
第3部隊が王族ゆかりと聞いていなかった為、難色を示したが、何故だかこの遺跡に関する古文書をウィルが持っていて、渋々納得していた。
まあ、彼らは古文書なんて読めないから半信半疑だったんだど、ビクともしなかった扉を王太子殿下がすんなりと開けたことで信じたようだった。
でも、第3部隊の隊長の顔はかなり不満そうだ。
自分達が発見したのだから、一番に中に入りかったんだろうと思うけど、そんなにあからさまに浮かべるのは不味いと思うけど。
下手したら不敬罪になるからね。
王族だけと言っていてウィルが一緒に入ると色々問題があるので、ウィルはあとから転移で入ってきた。
まあ、肉体的には僕と双子なんだから王族で間違いないんだけどね。
「空間を閉じていたから綺麗なものだろ?」
ウィルの言葉に見渡すと確かに埃のひとつもない。ガランとしていて何も無い。
正面の扉を開けると執務室のようだ。
机と椅子とソファーと小さなテーブル。
それ以外は何も無くて生活感が無い。
「家具以外は何も残って無いから好きに調べさせるといいよ」
「家具以外はどうしたの?」
「一部は城の閲覧制限のある書庫にあるよ。私物とか文献の一部は僕が持ってるけどね。あと、北の塔にあるのもそうだよ」
ウィルはじっと執務用の机を見ていた。
在りし日のアズベルト王の姿を思い出しているのかもしれない。
「ねえ、ラスティ」
「何?」
「平凡な暮らしって何だろう?」
「どうして?」
僕は突然の質問に首を傾げた。
「アズベルトが言ったんだ。今度は平凡に暮らしたいって」
「王様じゃない生活ってことじゃないかな?」
僕は単純明快に答えた。
「でも、王様じゃないからって平凡な人生を送るかどうか分からないだろう?」
まあ、そうだね。
平民だとしても何かに巻き込まれてしまうこともあるし、何かの理由で犯罪者になることだってあるわけだし。
でも、僕が思うに何となく呟いた思いな気がする。
だとすれば単純明快な答えだと思うんだ。
僕がそう言うとウィルはしばらく考え込んだ。
ウィルにとってアルベルト王のこの言葉は重要なことなのかもしれない。
「僕は先に戻っているよ」
そう言って来た時と同じく転移した。
「王太子様と父上なら何て答えました?」
僕は気になって聞いてみた。
「難しい質問だな。平凡というのは個々の基準によって色々と違うからな」
王太子様が答える。
「例えばアリシアが良い例だな。あれだけの才能があるのに自己評価は地味で平凡だろ?」
まあ、アリシアが言っているのは才能と容姿のことで生活のことじゃないけど。
平凡の基準という点での例えとしては理解できる。
アリシアは結構自分を過小評価するきらいがある。
「では、王太子様の思う平凡な生活ってどんなものですか?」
「取り敢えずは王太子じゃない身分で妻や子と穏やかに暮らす生活かな?」
「変化が無くて退屈されるのではないですか?」
「それは叔父上の方ではありませんか? 剣を振るう理由が無くなりますし」
「私は争い事もない今の生活が平凡な生活だと思っておりますのでご心配なく。ただ、死ぬまで平凡であって欲しいとは思いますが…………」
何だか含みのある父上の言葉に王太子様が微かに頷く。
何かあるのかな?
僕は不安そうな顔をしていたのか無言のまま父上が優しく頭を撫でた。
王太子様も父上もそれ以上は何も言わなかったので、改めて部屋を見つめる。
ウィルの影響なのか何だか懐かしい気持ちが湧いてくる。
婚約者ができた時に、ウィルに見られるのが恥ずかしくて僕の様子を見ないでほしいと言ったことがある。
ウィルは、きょとんとした顔をしたあと笑みを浮かべた。
「繋がっていると言ってもラスティが見聞きしたことが自然にわかるわけじゃないよ」
「へ?」
だって、僕が悲しい時や悔しい時は言わなくても黙って抱きしめてくれたり、慰めたりしてくれていたのに?
それを言うと僕が強く思った感情は分かるけど実際に見えてるわけじゃないらしい。
よっぽどの時は様子を見ることもあるらしいけど、最近ではほとんどそれもしていないらしい。
でも、後で見ようと思えば過去を遡って見ることは可能らしい。
「もう、小さな子供じゃないだろう?」
当時10歳だから人間からしたら小さな子供なんだけどね。
まあ、小さい頃から教育をみっちり受けてるから他の子供よりは大人びていたとは思うけどさ。
ウィルの感覚は普通の人間とちょっと違うんだよね。
逆に僕がウィルの感情を感じることがあるのかと聞いたら「ほとんど無いと思うよ」ということだ。
確かに一度も無かったと思う。
ほとんどなのだから絶対に無いわけじゃない。
だからもし、この思いがウィルのものだったとしたら、それだけ彼にとって特別な場所ということになる。
それならじっくり見たいな。
僕は少し我儘を言って他の皆が入ってきても演習には加わらず、王太子殿下とあちこちと見て回った。
残念ながら父上は騎士団の統率があるので一緒には見れなかったけど




