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僕(俺)が従魔になるまで  作者: 月猫 美月
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僕の婚約

ラスティ目線です。

僕は10歳になり、婚約した。


僕が10歳の誕生日を迎えた途端に、そろそろ婚約者でもという話が出始めた。

僕にはもう決めた人がいたから正直困ったんだよね。

でも、何とかその人と婚約することができたんだ。


エルタード公爵家のエレノア嬢。

それが僕の婚約者の名前。

兄上と同じプラチナブロンドの髪で青い美しい青玉(サファイア)の瞳をしているんだ。


婚約する前日までに実は1度しか会っていないんだけど。

それも数十分。

5歳のお茶会の日に偶然に出会ったんだ。


貴族の子女は3歳5歳7歳に王城に招かれてお茶会に参加するんだ。

王都から遠く離れた場所に住んでる人は参加しないこともあるみたいだけど、基本は貴族の義務の1つ。

昔は7歳まで無事に育つのが難しかったから将来を担う子供達の成長を確認する為にできた風習なんだって。


僕もその日はお茶会だったんだけど僕には退屈で……。

だって、自分の家だし、特に興味の引く子もいなかったし。

だから、こっそり散歩に出て、その時に出会ったんだ。

北の塔を側で見てみたいっていうから案内してあげたんだ。


並んで一緒に上を見上げてるだけで、何だか楽しかった。

でもすぐに僕を探しに来た兄上に言われてお茶会に戻ったから言葉もほとんど交わせなかった。


所謂一目惚れかな。


僕はさっそく婚約者したいって王様に言ったんだけど、エルタード公爵家は昔、問題を起こしている上に今は家庭状況も良くないから駄目って言われた。

確かにエレノア嬢は年の割に小さくて細くて顔色が悪かった。

着ている物もチグハグで確かに家庭状況は悪そうだった。


その後にウィルと運命の出会いをして、ある時ふとその話をしたら僕とエレノアの相性を見てくれた。


相性は悪くないって。


状況が好転したら王様に口添えしてくれるって言ってくれて嬉しかった。


7歳のお茶会の時、またエレノアに会えるかなと思っていたのに令息達のお茶会は王様の都合で令嬢達とは違う日に開かれた。

エレノアが王城に来ている時、僕は家庭教師から授業を受けていて会えなかった。

本当に残念だった。


エレノアも僕に会うことを望んでくれていたのか塔まで来てたってウィルに聞いた。

塔の上で一緒にお茶してお喋りしたんだって。


え? それって大丈夫なの?


塔が何のためにあるのかを知っているのは王族だけだし、名前も身分も教えてないし、他の人には話せないように、こっそり制約の魔術をかけてあるから問題ないとのこと。


なるほどね。


疑問が解決すれば、ちょっと憮然とした。


僕だけ除け者なんて酷いや!


エレノアの家庭状況はまだ悪いらしくてウィルが色々助言したみたい。

表立って動けない僕の為に色々見守ってくれてたことを後から知った。


婚約する少し前まで内緒にされていたんだ。


僕がウィルに嫉妬したり、エレノアがウィルを好きになったらどうしようかとか不安に思わないように気遣ってくれたみたいなんだ。


確かに否定できないな。


10歳の誕生日にウィルがくれたのは12枚のハンカチ。

刺繍の得意なエレノアに頼んで刺してもらったんだって!

その場にいた兄上に吃驚されるぐらい大はしゃぎして、うっかり躓いて転んだ。


恥ずかしい。


10歳のお披露目パーティで見たエレノアは青いバラを刺繍したドレスを着ていた。

装飾も化粧も無かったけど、僕は可愛いなって思った。

背は相変わらず低かったけど、顔色は良くなって少しだけ肉付きが良くなっていた。


色白で化粧しなくても、ほんのり赤い唇が可愛い過ぎる。


それにしても王城でのパーティで身支度も整えてあげないなんて公爵家ってどうなってんの?


王妃様との挨拶時に目が合って嬉しくて笑えばエレノアも笑顔を返してくれた。


全く視線を合わさなかった彼女の妹が1人照れているので、兄上と目が合ったのかと見れば、兄上も不思議そうな顔をしている。


そう言えば、高飛車なのに、かなり夢見がちな痛い子だって誰かが言ってたな。

それにしても何て派手な装いだろう。

化粧も香水もキツくて全く好感が持てない。

全く似合ってないし……。


この2人の姿の差にヒソヒソと噂をしている声がきこえる。


僕は一通り挨拶が終わるとエレノアを探しに行った。


ウィルの話ではダンスもすごく上手いらしいので是非とも誘わなくちゃ!


教えたのがウィルっていうのは、ちょっと複雑な気持ちになったけど、他の男の人と練習されるよりはいいかも。


あれ? 僕って嫉妬深い???


多分、人があまりいないような壁際の場所にいるだろうと探してみれば、すぐに見つかった。

傍に行こうとした時に彼女の妹が顔が歪む程に怒り狂った形相でエレノアに近づいていくのが見えた。

10歳と思えないぐらい醜悪だ。

こういう場では感情を表に出さないのが基本なのにエルタード公爵家で教育していないのかと首を傾げたところで、それは起こった。


彼女は手にしたグラスの中身を躊躇することなくエレノアに浴びせた。


エレノアは全く慌てることなく自分のドレスに広がる赤紫のシミを見つめてから嘆息し妹を見た。

怒るでもなく悲しむでもなく窘めるでもなく、静かな眼差しで見ていた。


何も言わずに立ち去ろうとするエレノアに僕は声をかけた。


「大丈夫?」


僕を見るなりエレノアの妹があからさまに狼狽えた顔になる。


「……うっかり姉にぶつかってしまって」


可愛らしい仕草と声だけど、僕にはちっとも魅力的じゃない。


「んー、僕、全部見てたけど?」


何をとは言わず、僕は態(わざ)と可愛くコテンと首を傾げた。

何故だかこういう仕草をする時って周りがいつの間にか僕に注目してくれている。

公爵やエレノアには悪いけど、エレノアの妹の愚かさを周りに印象付けたかった。

まあ、こんな事をして彼女自身が注目を浴びないわけは無いんだけどね。


僕はエレノアにハンカチを差し出した。


エレノアは躊躇いながらそれを受け取ったけど、使わずに、じっとハンカチを見つめた。

2、3度瞬きを繰り返してから僕を仰ぎ見た。


自分が刺したハンカチと気がついてくれたみたい。


僕は僅かに笑みを浮かべた。


「良かったら妹のドレスをお貸ししますよ」


エレノアの答えを待たずに僕は手を差し出した。


「…………ありがとうございます」


エレノアはおずおずと僕の手に自らの手を重ねた。


痩せてても女の子らしい柔らかい手だ。


エレノアの妹は周りの目を気にもせず殺気の篭ったような目でエレノアを睨めつけている。


周りにいる人から小さな呆れた声が上がり、眉を顰めている


「どこのご令嬢ですの?」


「ほら、お茶会でいつも女王様気取りの……」


流石に身分が下のものがエルタード公爵家の名を言うのが憚るのか濁して言っている。

でも、ここにいるのは同い年の子供の親である。

子息しかいない家でも親同士のつながりで知り得ているのだろう。

誰もが納得した顔になっている。


それにしても女王様気取りって!


王妃様主催のお茶会で色々やらかしているらしい。


僕は素知らぬ顔でエレノアをエスコートして廊下に出ると嘆息した。


「パーティには別に戻らなくても良いよ」


僕はエレノアを安心させるようにニッコリ笑った。


「このまま城に泊まっていけば良いよ」


エレノアが戸惑った表情で目を泳がせたあと、何かを想像してか身震いする。


「こら! ラスティ。説明を端折って不安にさせるんじゃない」


僕の頭に衝撃がはしる。


いつの間にか兄上がいて僕を軽く睨んでいる。


「酷いです、兄上」


あまり痛くはないけど不意打ちとは卑怯な。


剣の鍛錬をしているから人の気配には敏感なはずだけど、何でだか兄上には気が付きにくい。


「心配しなくても悪いようにはしないよ」


兄上は淡く微笑んでエレノアの頭を撫でた。

エレノアが擽ったそうに笑っている。


うーー。羨ましい!


「実は明日、エルタード公爵家の者を呼んで確認したいことがあるんだが、君に関係することでもあるんだ。まだ詳しくは言えないけど、君を今日のうちに確保しておく方が良いと判断されたんだ。どう話を持っていこうかと思っていたら、アレだろ」


兄上は苦笑を浮かべた。


「君の父上の許可はあとでとっておくから心配しないで。それに上手く行けば君をあの家族から離すことができる。…………一緒にいたいとは思っていないだろ?」


エレノアはコクンと頷いた。


目を潤ませて嬉しそうに笑う。


ん? もしかしてエレノアって兄上が好きだったりする?


僕は急に不安になった。


明日には僕とエレノアの婚約の事を王様と父上からエルタード公爵に話してもらえる約束なんだけど、もしかして断られるなんてことは……。


冷静に考えると今日を合わせて2回しか会っていない僕に好意を抱いてくれている保証は無い。


むむむ……。


でも、兄上とだって2回のはず……。


でも、僕が一目惚れしたんだからエレノアが兄上に一目惚れしてたっておかしくない。


「軽食を用意しておくからお風呂に入って着替えたら食べて休むといい」


「はい」


エレノアの声に我に返る。


兄上を見る目が熱いような気がするのは、ぼ、僕の気の所為だよね。


後日ウィルにそのことを話して僕の妄想だと言って貰えるまで僕の不安は続いた。

そしてウィルの零した一言に驚愕した。


「結局、ダンス誘えてないし、タイミングが悪かったね」


つ、次こそは必ず踊るんだから!


そして、正式に婚約が発表になった日。

3歳までに何度かエレノアと遊んだことがあることを婚約を喜んだ母上に聞かされた。


一目惚れじゃなかった……よ。あはは……。


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