返答
「だから私は今も待っているんです」
面談室に夜桜かおるの声は強く響いた。彼女の落ち着いた声色が、真剣さを一層増して聞くものの心を打つ。
「なるほどね」金子瞳はふうと、息を吐いて上を向く。
「夜桜は卒業したらどうするんだっけ。」
確かめるように聞く。
「家を継ぎます。」
「ああ、、、」
「ということになってるんですけどね」
悪戯っぽく夜桜かおるは笑った。
そんな子どもらしさも残す彼女はとても魅力的に見えた。私が男子だったら120パーセントほっとかない。あ、それストーカーか。
「別に会えなくなるわけじゃないんだったら、待っててあげてればいいんじゃないの」
それが妥当だと思うが。すると彼女は俯いて
「私は、あの子が辛い思いをし続けるのが苦しいんです。」
と返す。しんなりとした髪がふらりと揺れる。
「諦めて、なんて絶対言えないし、頑張れとも言えない。」弱々しい彼女には、よくわからない色気のようなものがあった。これが俗に言う「守ってあげたい!」というやつ?いつもは男勝りに堂々としてるから余計にそう思う。
「だから先生のちからを貸してくれませんか?」
「うん、考えとこう」ノータイムで答えた。それが教師の使命だと思う。
「ありがとうございます」
深々と彼女が頭をさげる。
「どうってことないわ」
考えるだけで終わりになんてしない。
生徒が楽しく学校生活を送れればそれでいいんだ。私はそう思ってる。でもまだ生徒の前でそのことを言えるほどの人間じゃない。それが私の「きっといつか」の目標なのかな。
「ゆっくり、ゆっくりでいいんだ」
彼女の言葉を繰り返す。
「そうですね」そう微笑み返した顔は少し晴れやかだった。




