涙
私の小説は落選した。
悔しさが溢れてくる。あんなに頑張ったのに、あんなに先輩が教えてくれたのに。本もたくさん読んだ、寝る間も惜しんで文を書いたあの日々が、音を立てて軋んで壊れ落ちていくのを感じた。それは私によってではなく、この手紙が壊したんだ。
ベッドにから見上げた天井が滲んではまたさらに大きく滲む。受け入れがたい事実の前で、私は目の横を伝う雫を当たり前のように受け入れていた。きっと私の体は泣けばラクになるという事を知っているんだろう。だから涙がこんなに出るんだろう。でも、泣いて何になるんだろう。結果が変わるわけでもない。ただ、自分を落ち着かせるためだけの涙が勝手に流れていくだけだ。
壁に貼った『締め切りまであと1週間!』と言う張り紙がむなしく私を見下す。
どうして、どうして、と問いだけがカラ回りしている。泳げないのに、落ちていく事がわかっているのに必死にもがいている。また、その自分がみじめで、かわいそうで、、、
「くやしい」
そう呟いた拍子に肺が震え、自分の声さえもコントロールを失いかける。母に聞かれないように布団に頭をうずめる。視界が真っ暗になった途端、もう声が聞かれないとわかった途端、涙がさらに溢れてきた。泣くのを我慢するのを諦めた。
何も見えない中で真っ先に思い浮かべたのは同好会の先輩たちの顔だった。申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
ぐるぐると気持ちは回る。逆に考えれば小説を書き始めたばっかりの自分が入選する方が難しいはずだ。それでも悔しかった。あれだけ信用してた努力というものに裏切られたと思った。信じた自分も恥ずかしい。自分の脳にそんな黒々とした思考がよぎったことを恐ろしく思ったりもした。認めたくはないがこうして必死に泣いて自分を慰める事がある意味でいい気持ちだと感じてきた。はっきりとした快感ではない。ただずっとこうしていたいという、ネガティヴな感覚だ。露骨に、野生的に自分をラクにしようとするそれを、そう簡単に受け入れたくはなかった。
どのくらい時間が経ったのかはらない。ドア越しに夕食ができた、と母の声がかかった。泣きはらした顔を見られたくはない。
「今日はいい」
「えっ?」
「本当に今日はいいから、、、」
母に対する自分の態度さえ嫌に思った。
「どうかしたの?」
「なんでもない」
「具合悪いの?病院いく?」
「本当になんでもない」
「何がどうであれ食べた方がいいわよ」
「じゃあ、ドアの前に置いといて、勝手に食べるから」
そんな頼みごとを親にするのは初めてだ。しばらくして、母が夕食を置きにきた。同じ家にいるのに会いたくなかった。だから、しばらくしてから取りに行く。まだ少し暖かい夕食を勉強机で食べる。そんなことも初めてだ。
口を動かしていくうちにだんだん気持ちが落ち着いてきた。むしろ泣いたおかげですっきりしていた。夕食の焼き魚はそんなに好きではなかったが、不思議なほど美味しく感じた。
「ごちそうさま」
一人、手をあわせる。




