結果
見つけた封筒を守るように持つ。誰もいないエレベーターに乗り込むと 宛先を確認した。『猫実未来 様』とはっきりと印刷されている。遂に来たのだ。まな板の鯉の気持ちでいなければいけない時間はもう終わる。その次に来るのは、どんな気持ちなのか。鼓動が早まる。
特にどんな感情でもない。ただ透明な気持ちが激しく揺れていた。嬉しくもなく、悲しくもなく、ただ何もない感情が移り変わろうとして泡立っていた。
やけに長く感じた上昇時間を終えて住処のあるフロアにたどり着く。そしてドアの前に。封筒を落とさないようにカバンから鍵を触覚だけを頼りに取り出して、差し込んだ。
「ただいまー」おそらく家にいるだろう母に聞こえるように言う。
家に着いたのに、普段感じる緊張感が緩む感覚はなかった。
「お帰りなさい」
母の返事に頷いて、急いで自分の部屋に入る。ここでやっと、落ち着いた。だがしなくてはならない事がある。
急いで机についでのハサミで封筒を開ける。折りたたまれた白い紙を目をつぶりながら開く。
「お、お願いしますっ」
ばっと机上に広げた紙に書かれた文字を読む。目に飛び込んだのは、『残念ながら、落選とさせていただきます。』
さっきまで空白だった心にに様々な感情が入り乱れる。過敏になりすぎていた。その封筒を開ける前と後では世界が変わったかのように感じるぐらい、私の心は激しく揺さぶられた。耳の奥で何か変な音がこだましている。視界が少し揺れた。すぐ机の向かいにあるベッドになだれ込む。全身から力が抜ける。そこでやっと目の前の現実がはっきりした。自分の小説は落選した。言葉すればそれだけの事だった。




