さけべ変態
「んで、そっちの美女は夜桜かおる先輩だ」
成田キュウなる人物は私の隣に立つ先輩の名前を言った。
夜桜かおるって本当にかっこいい名前だ。ああ私も夜桜家に生まれたかった。とにかく今まで自分の中で名前がなかった先輩の本名が知れてなんだか欲しかったものが手に入った様な喜びを感じた。
「かおるん先輩と呼んでやれ。」ぐっしっしと口を横に広げて成田先輩は言った。
「そんなことは絶対に許さん。というか私の自己紹介を勝手にしないでくれ」
「うっひっひ」
夜桜先輩と成田先輩はとっても仲良しの様です。
「えーとじゃあ、成田先輩はなんて呼べばいいですか?」
会話の流れで私はそう聞いてみた。
その途端、成田先輩のメガネがキラッと光った様に感じた。
「その質問、待ってましたああああっ」
あまり広くない部屋に暑苦しい声が響く。
「私のことはキュウちゃんって呼んでくれ」
顔がきらきらと輝いている。顔から下はもので隠れてて見えないけどたぶん腰に手を当てて胸を張っているんだろう。動きがいちいち面白い。
「じゃあ、キュウちゃん先輩ですね」
何気なく言ったが、素直すぎた。
その瞬間、キュウちゃん先輩はとっても嬉しそうな顔をして
「サンキューううう!」と叫んだ。
「うるさいぞキュウ」ハイテンションなキュウちゃんを今度は夜桜先輩はたしなめる。
そしてまだ突っ込まれたキュウちゃんはそのこと自体が面白い様に笑う。
とってもたわいなくて暖かい時間だった。
「で結局何をしているのかというと自由に創作活動をしているというかわけだ。」
自己紹介もひと段落ついて、私は二人の先輩たちとさっき見たいろいろなものの山の裏に座っていた。ちゃんと椅子があった。散らかって山になっているのはだいたい本とかプリントがその原因だった、カラフルな表紙が混沌とした空間を作り出して、3人を取り囲む。慣れてきたら安心感がある。
「私は小説とかを書いてるけど、キュウの方はパソコンでわけのわからないことをしたりしている。」
「それは聞き捨てならないな、かおるん。わけがわからないといっても分かろうとしてないだけでその世界に一歩踏み入れてみれば果てしない地平が広がっているのさ。そして気づく、自分はなんてアホなんだろうと。そしてそのアホさに、、」
「基本的に図書室が5時で閉まるからそのあとに部室に来る。今日は早く来たがいつもはこのうるさい先輩と関わるのは1時間だけでいい」夜桜先輩はキュウちゃんの語りを完全にスルーして続ける。
「わかりました。でも、私はどうしたらいいですか?」
「なーんにもしなくてもいいよ」キュウちゃんはかるーく言い放った。
「図書室が閉まったあとの暇な時間はここを思い出てくれればそれでいいよ。
とにかくワタシ達で楽しいことしようぜ」
先輩の優しさってこんなに暖かいものだったのか。初めは緊張したけど、今はこんなにも落ち着ける。初めてのことばかりだけど頼もしい先輩の背中がある。このことがどれだけ私の支えに立っただろうか。
「取り敢えず私は新作の小説を書く。」
隣に座った夜桜先輩が散らかった机の上の手元だけを片付けて、カバンからノートを取り出す。
「じゃあアタシは階段の下に男子がいても中身が見えないギリギリのスカートの長さを計算するっ。そして実験するっ。」キュウちゃんはステッカーがたくさん貼られたノートパソコンをバッグから出す。
「アホか」夜桜先輩が呆れた様に、そして愛を込めて言う。
「なめるなよ、かおるん。これが完成したらクるぞ。何かが。」キュウちゃんはパソコンの画面をがっつく様に見て言った。ブラインドタッチでカタカタと心地よくキーボードを叩いている。
「どうでもいい」うんざりとした夜桜先輩の声に思わずわらってしまった。本当に楽しい。
「じゃあ私は本を読みまあす!」二人に負けない様に私も宣言した。




