エピローグ この道の果てに
墓石にてっぺんから水をかけ、正面に回って目を閉じる。
でも手を合わせた僕の心には、これといった感情なんてなにひとつ浮かんでこなかった。
当然、心の中でかける言葉なんてものも見つからない。
まあ、皆元気にやってるよ、くらいは言えるけどさ。
目を開けて振り返れば、そこには僕と同じように手を合わせている優菜と光一の姿。
けど、この二人なんて、もっとかける言葉に困るんじゃなかろうか。
だって、僕と違って面識すらないわけなのだし。
それにしても、あれからもう二週間、か。
そう、二週間だ。
灼騎士が襲ってきたあの日。
僕の『黒き魂』の『力』が『暴走』したあの日。
あの日からもう、二週間が経っていた。
時刻は昼。
夏休みに入ったから、こんな時間でも墓参りに来れてしまう。
でも、なんで――。
「なんでお前まで来てるんだ? 司。これ、僕の爺ちゃんの墓参りだっていうのに」
それに司は、自分の隣を目で示しながら返してきた。
「神原まどかさんのことはスルー?」
「あー、まあ、そこには突っ込まないことにした。どうせ僕の監視でもしてるんだろ」
ため息混じりにそう言うと、司の隣にいたまどかが一歩前に出て、笑顔を向けてくる。
「さすがは和樹さん、鋭いですねえ」
やっぱりそうだったか。
でも、いくらなんでもわかるって。
なんせ彼女は今日の朝、突然うちに戻ってきたんだから。
戻ってきたというのは、あれだ。
これは優菜から聞かされたことなんだけど、なんでもまどか、いまから一週間以上前に聖教会に帰っていったらしいのだ。
そして僕は僕で、『あの日』から丸々一週間、意識不明の状態に陥っていた。
で、目覚めてからも『まだ身体のほうが本調子じゃないから』と今日までの一週間ほどを家でのんびりまったりと過ごし。
そうしていたら今日の朝に、まどかの突然の訪問である。
まあ、いいけどね。いいけどさ。
僕の魂の回収命令は、なんか撤回されたらしいから。
でもまどかは、そのまま爺ちゃんの墓参りについてきた。
聖教会に帰ることなく、ついてきた。
もう、僕に伝えるべきことは全部伝え終えたはずなのに、だ。
だから、まだ彼女の用事は済んでないんだろうなあ、と薄々勘づいてはいたんだけど。
ううん、監視かあ。
まあ、命を狙われるのに比べれば……マシ、だよな?
しかし、なんでこういう日に限って、親父と母さんはいないのか。
二人とも、昨日までは家にいたっていうのに、タイミングが悪いことこの上ない。
まあ、一週間前、目を覚ましたら親父たちがちゃんといてくれたっていうのは、嬉しかったけどさ。
……ああ、嬉しかったさ! 嬉しかったとも! 文句あるか!!
……いや、素直には喜びづらいんだよ、こういうのって。
秋葉のことにしたって、そうだしさ。
いやまあ、なんというか、さ。
まさか、あの状態から、秋葉が奇跡的に一命を取り留めるとは……。
だって、胸にナイフがグサッ! だよ?
右胸に刺さっていたのが幸いした、心臓直撃してなかったからなんとかなった、とのことなのだけれど、それにしたって、こう、あのときに『感動的な別れ』みたいなことをやっちゃったものだからさあ……。
本当、回復した秋葉に会うのが気まずくて、気恥ずかしかったなあ、ものすごく。
あの日、秋葉は僕に告白して。
僕は、それに当然のように応えて。
でも、じゃあ彼女に恋愛感情を抱いているのかと自問すれば……困ったことに、それは『ない』わけで。
……で、でもさあ!
無理だって!
あんな状況で『ごめんなさい』とか言える奴、絶対いないって!
うん、まあ、けど……その場の勢いで言ったことだからって、それを理由に『やっぱり気持ちに応えることはできない』なんて言うつもりは、僕にはこれっぽっちもないわけで。
そしてここで、よかったんだか悪かったんだかよくわからない事実がひとつ。
なんか秋葉、陸上で有名な高校に転校することになってしまったのだ。
本当に、突然。いきなりすぎるくらい、唐突に。
しかも、それを知らなかったのは僕だけだったときたもんだ。
まあ、優菜たちは秋葉と同じクラスなんだから、知ってて当然っちゃあ当然なのかもしれないけど。
でもさあ、秋葉さんよ。僕にだって教えておいてくれてもよかったんじゃあないか?
そりゃ学年は違うわけだけど、だからって仲間外れにするのは酷いだろ!
まあ、そんなわけで、僕と秋葉は現在、俗にいう遠距離恋愛中。
でも、これはこれでよかったかな、と僕は思っていたりもする。
いまはまだ、秋葉のことを好きだって、胸を張っては言えないけど。
でも、つきあっていくうちに好きになっていけばいいって、時間をかけて好きになっていけばいいって、そう思えるようには、なってきたから。
……いや、しかし。
いや、しかし!
別れ際の秋葉の『あの言葉』はどうだろう!?
――和樹先輩。そんなわけで、ちょっとの間お別れです。やっと念願叶って恋人同士になれたのに残念ですけど……。
でも私、いまは陸上命なので! 陸上、ラブなので!!
だもんなあ……。
まあ、『らしい』っちゃあ『らしい』か……?
それに、飛馬やひーねぇのときみたいに、なにも言わずにいなくなっちゃったってわけでもないんだし。
だからまあ、うん、これはこれでいいのか。
だって、お互いが会いたいと思えば、いつだって会うことができるんだから。
……ま、まあ、その割には連絡がなさすぎるような気もするけど。……でも、それはほら、便りがないのはいい証拠ってやつだよ、きっと!
うん、捨てられてなんかない。陸上に秋葉を取られてなんかないぞ!
――やがて、ひと通り墓参りを済ませ。
僕たち五人は、墓から離れて歩き始めた。
そして、道がいくつかに枝分かれしている場所に差しかかったところで。
「ごめん、兄さん。まどかさんと先に行ってて。私と光一と司は、ちょっと寄っていくところがあるから」
そう、優菜が足を止めて、少し早口で言ってきた。
「寄ってくところ? 誰かの墓参りでもするのか? でも、僕だけが知らない三人の共通の知人なんていたっけ? それも故人で」
「い、いるの! ほ、ほら……兄さんは私たちとひとりだけ学年が違うんだから、こういうこともたまにはあるって!」
「いや、でもさ。お前と光一の交友関係は完璧に把握してるぞ? 僕」
「そ、それは、そうなんだけど……」
なんか困ったような、悲しそうな表情で黙り込む優菜。
……え? なに? この罪悪感。
と、そこで司が淡々と口を挟んできた。
「ことは単純。僕たち三人には、瀬川和樹さんが把握できていない交友関係も存在していたということ。いま現在の状況が、その証拠」
「まあ、そういうことになるんだろうけどさ。でも、なんか引っかかるんだよなあ……」
僕が眉根を寄せると、優菜と司だけじゃなく、光一とまどかまでなぜか複雑そうな表情になってしまった。
そこから読みとれる感情は、戸惑いと哀れみと……あとは、少しばかりの……怒り?
でも、一体なんで……?
「とにかく行きますよ、和樹さん」
妙な沈黙を破って歩みを再開させたのは、まどかだった。
「私も和樹さんと二人だけで話したいことがありましたから、ちょうどいいですし」
話したいこと、か。……『黒き魂』に関する話かな?
それを受け、僕は無言で皆に『ごめん。じゃあ先に行かせてもらうな?』と右手を縦にして顔の前に持っていった。
そうしてまどかの隣に並び、歩きだす。
しかし……『呑まれ』たときのこと、か。
あのときのことは、ぶっちゃけ、あんまり進んで思いだしたくはないなあ。
まあ、そうは言ってられないんだろうけどさ。
――あの日。
これでもかってほどの『負の感情』に呑み込まれ、僕は文字通り『暴走』した。
竹刀っぽいものを作って、まどかを傷つけようとしていた。
『黒き魂』は『破壊衝動の塊』というのも、いまなら素直にうなずける。
もっとも、一番恐ろしかったのは、目を覚ましたときに異常なほど清々しい気分になっていたことだけど。
まるで、すべてのストレスを吐きだしたかのようだった。
もちろん、発散方法としては最悪にもほどがある。
清々しさを覚えてしまったという事実そのものに、申し訳なさを抱いてしまいもした。
そんなことを考えているうちに、優菜たち三人の後ろ姿が遠くなり、やがて、見えなくなっていった。
それとほぼ同時に、まどかが僕のほうを見上げてくる。
「それにしても、ただの石の塊なんかに、一体なにを思って手なんか合わせてるんですかね? 人間は」
振られたのは、『黒き魂』とはなんの関係もない、ただの雑談だった。
ちょっと肩すかしを食らった気分になりながら、それでも僕はつきあう。
「それは……きっと、あれだ。中継点ってやつなんだろう。別に墓石でないといけないってことは、ないんだと思う。
それでも、中継点にするには、やっぱり目に見えるわかりやすい『カタチ』が必要で、それをとおしてじゃないと、人間は『あの世』ってものをおぼろげにすら認識できなくて……。だから、そのために用意したのが墓石だったっていう……それだけのことなんじゃないか?」
その返答に、まどかは「そういうものですか……」と、割とどうでもよさそうにつぶやいてから、ようやく本題を切り出してきた。
「それで、和樹さんの今後のことですが。
朝にも言ったとおり、和樹さんの魂の回収命令は撤回ということになりました。なんでも、危険とされていたのは『力そのもの』ではなく、和樹さんに『自覚がない状態』だったらしくて。
和樹さんが『黒き魂』の存在を自覚したため、『スペリオル聖教会の監視下にある限りは生かしておいても問題ない』となったわけですね。
あ、もちろん監視役として遣わされたのは私ですよ? そんなわけで、これからもよろしくお願いいたします。まあ、今度はこれまでと違って、長いつきあいになりそうですけど」
朝にやってきたまどかの様子を見て、大体はそんなところに落ちついたんだろう、と予想はできていた。
でも本人の口から改めて『生かしておいても問題ない』と聞かされると、やっぱり安堵の度合いが違う。
これでもう、彼女と敵対する可能性を思って、あれこれと思考を巡らせるなんてことをしなくてもいいんだって。
「それと、和樹さんの中にある『黒き魂』の『力』ですが。これからは、『力』を可能な限り制御できるようになってもらいます。
要は、私の指示に従って修行してもらう、ということですね。まあ、和樹さんの場合、身体は割とできあがっていますから、精神の修行が主になるでしょうけど」
「それはむしろ、僕のほうから頼みたいくらいだな。またなにかの拍子に暴走したら大変だし」
それに、暴走癖がつくのも嫌だ。
うん、まどかが監視役兼師匠になってくれるなんて、本当、願ったり叶ったりだな。
彼女なら、僕がまた『暴走』したとしても、きっと速やかに気絶させてくれるだろうし。
いや、でもまどかって、『暴走』した僕には押されてたような気も……?
ちょっと冷や汗をかく僕にかまわず、「あと」とまどかは続ける。
「最終的には、『黒き魂』の『力』を使いこなしてもらい、有事の際の戦力になってもらえれば、と聖教会は考えています。
なにしろ、常に深刻な人手不足に見舞われてますからね、聖教会は。戦闘寄りの能力を持っている人間は、喉から手が出るほどほしいんです。
当然、そのときには学校よりも聖教会の任務を優先していただくことになりますが……かまいませんね?」
「ああ、もちろん」
けど、僕、なんか一種の兵器みたいな扱い受けてないか?
いやまあ、別に文句はないけどさ。
『黒き魂』の制御は、やっぱりできるようになりたいし。
それに、なにより……。
「強くなれば、いつか、ひーねぇにも会えるかな……」
ひーねぇ。
現在は、どこでどうしているのかもわからない、僕の姉のような存在。
僕とは四つ離れてるから、いまは十九歳の女子大生のはずだ。
やっぱり、楽しい大学生活を満喫してたりするんだろうか。
いや、別れ際のひーねぇのことを思えば、それはないだろう。
僕には想像もできない困難に挑もうとしていた。
『この世すべての善』を成すと言っていた。
そして、ユメの続きを見ると言っていた。
僕と一緒に過ごした日々のことを『ユメ』と言った、ひーねぇ。
なら、彼女がすべてのことを成し終えれば、ひーねぇは必ず僕に会いに来てくれる。
彼女にとっての『ユメ』である僕のところに、いつか絶対に帰ってきてくれる。
思えば僕は、そんなことを、つい最近まで思っていた。
意識することなく、思っていた。
けど、いまは違う。
考えてたんだ。ここ数日、ずっとずっと。
なんで僕の中に、『黒き魂』なんてものがあるんだろうって。
僕は、その存在を望んでいなかった。
僕には必要のないものじゃないかって、思った。
でも、もし、必要だからこそ、だとしたら?
僕にとって必要だから、『黒き魂』が僕の中にあるんだとしたら?
そう考えているうちに、ふと、ひーねぇの言葉が頭に浮かんだ。
ひーねぇは言ってたじゃないか。
『守ってほしい』って。
あらゆる悪意と理不尽から『助けてほしい』って。
だから『黒き魂』は、きっと、ひーねぇの助けになるための『力』なんだ。
僕なんかでも、『黒き魂』の『力』があれば、それができるんだ。
ひーねぇを守れるくらい強くなって、僕のほうから彼女に会いにいく。
『黒き魂』は、それを実現させることのできる『力』なんだ。
会いたい、と思う。
ひーねぇのほうから会いに来てくれるのを、待つんじゃなくて。
僕のほうから、会いにいきたいと思う。
そのためには、強くならなくちゃ。
そして『黒き魂』の『力』は、僕が強くなるために必要なもの。
この『力』をちゃんと『使える』ようになった未来で、ひーねぇに会えるはず。
子供じみた妄想かもしれない。
自分に都合のいいように解釈してるだけかもしれない。
でも、そう思うことができるようになったからこそ、僕は受け入れられた。
『黒き魂』っていう厄介なモノも、僕にとっては必要なものなんだって、受け入れることができた。
――会いたい。
もう一度、ひーねぇに会いたい。
会ってどうしたいとかじゃなく、ただ、会いたい。
そのために、強くなりたい。
誰よりも、とは思わないけれど。
ひーねぇに会うための、強さがほしい。
ひーねぇに会う資格のある自分になるための、強さがほしい。
優菜のような、心の強さ。
司のような、不器用な強さ。
秋葉のような、まっすぐな強さ。
そして、まどかや灼騎士のような、『力』というわかりやすい強さ。
そういうものが、僕もほしい。
『黒き魂』は、それを得るための手段。
僕なんかでも強くなれるかもしれない、という可能性。
だったら、『黒き魂』がもたらすあれこれに、不満なんて抱くはずもない。
むしろ、いま胸に溢れているのは、希望だった。
それをこんなに強く感じたのは、思えば、いつ以来だろう。
そんな想いを胸にまどかを見ると、なぜだろう、彼女は少しだけ不機嫌そうにしていた。
「……私は『ひーねぇ』という方のことを知りません。なので、絶対に会えるなんて軽々しく言うこともできません。けれど、ひとつだけ言わせてください。
強くなれば、とは、一体誰を基準にして言っているんですか? 灼騎士? それとも私? どちらであろうと、いまのあなたでは足元にも及びませんよ。
『黒き魂』に『呑まれ』ている状態であればまだしも、正気のときのあなたは、どうしようもないほど精神的に弱すぎます。
そう、たとえるならば――」
そこでまどかは、なぜか少しだけためらうような素振りをみせ、
「……たとえるならば、大切な人の死を受け入れられず、記憶を捏造することでしか自意識を保てない。そういう人と同じくらい、弱すぎます」
「なんだよ、それ……。そんなの、最低の行為じゃないか……」
「ええ、そうですよ。最低の行為です。死者への冒涜と言ってもいいでしょう。なのに……なのに、どうしてっ……!!」
「――っ……!? ま、まどか……?」
「……すみません、あなたに憤っても仕方のないことでしたね。ただ、そういう人もいるんだってことを、心に留めておいてもらえると、嬉しいです……」
そう言って、まどかは頭を下げてきた。
僕はそれに「あ、ああ……」としか返せない。
すごい迫力だった。一瞬ではあったけど、すごい迫力だった。
殺気がこもってたんじゃないだろうか、なんて思ってしまうくらいには、すごい迫力だった。
もしかして、とは思うのだけれど。
まどかには、過去にそんな人を見て、たまらない気持ちになった経験があるんだろうか。
だとしたら、それは一体誰だろう?
まさかとは思うけど……親父?
いやいや、まさか……。
「……まあ、とにかくそういうことです。まずは精神を鍛え、『黒き魂』の『別人格』とでもいうべきものを、『力』を発動させても完璧に抑えられるようになること。それが、いまの和樹さんの最重要課題です」
「それはつまり、『黒き魂』の『力』を、『呑まれ』ることなく使えるようになれってこと……だよな?」
「そうですね。……とりあえず、これから毎日、一日一回でいいですから、私の前で『黒き魂』の『力』を使うようにしてください。で、どれくらいの時間なら正気を保っていられるかを試すんです。慣れてくれば、正気を保っていられる時間も長くなることでしょう。もちろん、『呑まれ』たら私が即座に気絶させますので、ご安心を。
あ、言うまでもないとは思いますが、私の前以外で『黒き魂』の『力』を使うのは厳禁ですよ?」
なるほど。
理屈はわかった。
わかった、のだけれど……。
「あのさ、さっそく情けないことを言うようで悪いんだけど……。僕、意識的に『黒き魂』の『力』を使うなんてこと、できる気がしないっていうか……」
「大丈夫ですって。自分の中にあるものなんですから、『やろう』という意思があればできますよ」
「そ、そういうもん?」
「もちろんです。……でも、そうですね。スイッチを入れやすくするための言葉を、前もってちゃんと決めておくとしましょうか。私の『鎌月双閃』みたいに。
『開放言語』っていうんですけどね、まあ、一種の暗示みたいなものです」
「とりがー・わーず? 暗示?」
「ほら、梅干しを見ると酸っぱい感じが口の中に広がるでしょう? あれと似たようなものですよ。『開放言語』を口にすると反射的に身体が『その状態』になるよう、文字通り『身体に覚え込ませる』んです。
実際、戦いの最中に何十秒もかけて精神集中とか、現実にはやってられないじゃないですか。なので私も含めた皆が皆、この『開放言語』を使ってるんです。瞬時に『精神集中を終えた状態』になれるように」
「なんか、わかったような、わからないような……。――とりあえず、どんな言葉を『開放言語』にすればいいんだ?」
「それはもちろん、和樹さんのお好みで。あ、でも、それっぽい物騒なもののほうが効果出やすいんですよね。
たとえば……『殲滅対象認定』、とか」
――『殲滅対象認定』。
なぜだろう。なんか、すごくしっくりくる。
上手くは言えないけど、僕の『魂』がその言葉を欲してるような気がするっていうか。
「……よし。それ、もらった」
「いいんですか!? いま私、かなり適当に言いましたよ!?」
「いいんだよ。なんかこう、すごく『これ』って感じがしたんだ」
「まあ、それなら別にいいですけど……。さて、これからは大変になりますよ。……きっと、和樹さんが想像しているよりも、ずっと」
「――望むところだ」
だって、ようやく『道』が見つかったって気がしてるんだから。
振り落とされそうになっても、力の限りしがみついていってみせるさ。
――いまはまだ、どこにいるのかもわからない『ひーねぇ』。
陸上という自分の『夢』を追うために、僕のそばから離れていった秋葉。
別れはやっぱり、辛くて、悲しい。
それでも、同じ世界には、いるはずだから。
だから、いまはただ、進もう。
目の前に延びている『道』を、懸命に歩いていこう。
『信じられる』なんて言うことは、まだ、できないけれど。
いつか、この『道』を歩んだ果てにまた会えると。
再会できるのだと、そんな日を、夢に見ながら――。
そんなこんなで、『序章』のエピローグでした。
いかがでしたでしょうか?
まあ、エピローグといっても、あともう一話あるんですけどね、『序章』は(苦笑)。
では、また次回。




