↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
42/47

第42話

「肝心なこと、聞いてないんだけど」


「何、急に」


 ミキがお弁当をゆっくり食べながら聞いてきた。


 こういう時は、何かある。


「そろそろ、教えてくれてもいいんじゃない」


「何のこと」


「空田さんだよ」


 ミキがしびれを切らしたように、ご飯に箸を立てる。


 お行儀悪いよ。


「いつ出会ったの。どこに惹かれたの。空田さんがいい人だっていうのは知ってるけど。出会いだよ。いつ知り合ったんだよ」


「気が付いたら、電車の中にいたの」


「何、それ」


「元々、下り電車で乗客が五、六人くらいしかいないんだけど」


「うん、うん」


「毎日、縦じまのシャツを着ている人がいて。最初は同じ服を着ていると思って、不潔だと思ったの。でも、微妙に色や縦じまのデザインが違うことに気づいて」


「毎日着替えてると思ったんだ」


「そう。でも、ちょっと変わった人だなって」


「そりゃそうだ。ジョブズじゃないんだから。それで」


 ミキのご飯がすすむ。


「いつも同じ時間の電車で同じドアの横に座ってるし、どんな人なのかなって」


「気になりだしたんだ」


「何もしないで、窓の景色を見てるの。毎日、同じ景色なのに、興味深そうに」


「ほんと、変わってるね」


「それが何日も続いて、何かその人の周りだけ時が止まって変化がないような気がして」


「はい」


 ミキ、相槌が雑になってきたよ。


 詩的な表現をしたら、飽きてきたな。


 これからが、いいところなのに。


「白い杖を持った女の子が乗ってきたの」


「可愛かったの?」


「覚えていない。それで、その子が鈴のついた多分キーホルダーだと思うんだけど、落としちゃって。でも、その子気づかなくて」


「うん。それで」


「それで、女の子が立ち上がってドアの前に立ったから、降りちゃったらまずいと思って。私、拾おうとしたの」


「うん」


「そしたら、私より遠くにいた空田さんが駆け寄って先に拾ったの。女の子の手のひらにキーホルダーを落として、女の子は嬉しそうだった。空田さんも頷いていて」


「へーえ、優しいじゃん」


「いい人だなって」


「いい人だね」


「それで、次の日。おはようございますって、挨拶したの」


「やるね。ナンパだ。女子高生からのナンパだ」


「そんな、ナンパだなんて」


「知らない男にお近づきになりたくて、声を掛けたんでしょ。立派なナンパだよ。わぁー、いいな。青春だ。アタシも男に声をかけまくろうかな」


「もう、いいよ。ナンパで」


 私は、大きめのご飯を口に入れた。


「まあ、そう怒らずに。お口直しにどうぞ」


 ミキがミニトマトを差し出した。


 私は遠慮なしにそれを口に放り込んだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。