第40話
「大富豪返し(革命返し)」
ミキが畳の上にトランプを叩きつける。
カードが五枚並べられた。
どうしていつも、そんな手札を持ってるの?
ちょっと、ズルい。
この手札に対抗できる人はいなかった。
「はい、上り」
ミキ、三連勝。強すぎる。
チップがわりのキャンディがミキの元へ集まる。
「余は満足じゃ」
また、時代劇してる。
ミキが窓のカーテンを開ける。
「京都の夜景は‥‥‥」
ミキがギャーという悲鳴を上げる。
窓ガラスにびっしりとカメムシがついていた。
「なにこれ」
「京都の夜景が、カメムシに占領された。皆の者出あえ。出あえ」
みんなで窓ガラスをバンバン叩くが、カメムシは一向にどく気配がない。
ミキがカーテンを閉める。
「見なかったことにしよう。ここは京都。綺麗な街並みであった」
「そうだね」
「大富豪、続きやろうか」
私は、トランプをみんなに配り始めた。
ロビーの自販機で甘いココアを買う。
ソファに座り、飲んでいるとミキが来た。
「不良だ。ひとりで夜遊びしてる」
「ミキも飲む。小銭持ってるよ」
「大丈夫。アタシも買いに来たから」
ミキは栄養ドリンクのボタンを押す。
これから、何をする気?
ミキが私の隣に座る。
「こんな感じ?」
「えっ?」
「空田さんだよ」
「‥‥‥」
「意外と顔が近いね。顔を見る勇気も必要だ。自然に見れるようになったんだね。凄い、進歩じゃん」
ミキが肩をつつく。
「いいなあ。アタシも彼氏がほしい」
「彼氏じゃないよ」
「もう、彼氏じゃん。誰に聞いても、それは彼氏だって答えるよ」
「言わないでよ」
「言わないよ。大切だもんね。分かってるよ」
スマホを取り出す。
カメラを起動して、構えたのでココアを顔の前に置く。
小顔効果だ。
ミキは大胆に栄誉ドリンクのラベルを見せている。
狙ってるな。
「いい写真が撮れた」
二人で撮った画像を確認する。
「ほんとにいいの。空田さんの近況を知らなくて。自分の近況を伝えなくて。これ重美ちゃんに送ろうか?」
「いいんです」
「心で通じ合ってるとか、最高だね」
ミキはスマホをポケットにしまう。
「高校生活折り返しを過ぎたね。あとは受験か就職か。潮美はもう考えてるの」
「ネイルアートとかいいかなって」
「あんたが? ネイルどころか、メイクもほとんどしてないじゃん」
「重美ちゃんが、ネイルしてるの見てて。可愛いなって」
「空田家か。いっそ空田家の一員になっちゃえ」
「それは、ちょっと」
「まだ、早すぎる?」
「先を読まないで!」
「重美ちゃん、いい子だよね。可愛いし。あんな妹、欲しくない」
「欲しいけど」
「だよね。ネエチャンって呼ばれるのかな。重美ちゃんだと」
「なんか、私に合わないよね」
「合うようになるんじゃない。空田家の一員になれば」
「また、それを言う」
私はココアを一口飲む。
ミキは栄養ドリンクを一気に飲み干した。




