第38話
「潮美はトランプを持ってきて。大富豪やるから、二組ね。裏は絶対同じデザインね。私は花札を持っているから。電車の中はスマホで対戦ゲーム。で夜はエンドレスで大富豪大会だ」
ミキのお弁当の進み具合が早い。
「人生ゲームとかボードゲームも持っていきたいけど、無理だよね。宅配便で届けるか。旅館に」
「迷惑だよ。来年から、出禁になるよ。後輩たちが泣くよ」
「それはまずいよね。トランプだけで我慢するか。でも、アタシ大富豪強いよ」
それはなんとなく察しがつく。
楽しみだよね。京都、奈良。
「それで、空田さんにはなんて伝えた?」
「明日から、三日間電車には乗れなくなるって」
「アタシがいなくて、寂しいでしょって言った?」
「言えるわけないじゃん。そんなこと」
「会えない三日間が二人のきずなを強くする」
変なメロディで歌いだした。
「なに、それ。演歌?」
「よくわかるね。こないだ、オジサンとカラオケ行ったんだ」
「制服で、チノパンオジサンと」
「受付の人にジロジロ見られた。別に気にしないけど」
「まあ、もう慣れたか」
「まあね」
ミキのお弁当が半分以下になった。
私も頑張らないと。
「それで、空田さんの連絡先は知ってるんだよね」
「‥‥‥知らないの」
「空田さん、スマホ持ってるよね。キリギリスの動画見せられたって言ってたじゃない」
「思い出させないでよ。食事中だよ。それにたまたま見えちゃっただけ。空田さんはそんな意地悪しません」
「しかし、何やってるの。半年間何してたの」
「ごめんなさい。お話してました」
「根掘り葉掘り聞けとは言わないけど。あの空田さんだから。でも、じゃあ、どうするの? 音信不通だよ」
「行方不明みたいに言わないで」
「何かあったら、どうするの」
「何もありません」
「毎日、やり取りしてるかと思ってた。おはようとか、おやすみのチュッとか」
「しません。それに、電車の中で沢山話してます」
「電車の中で、行ってきますのチュー?」
「だから、しませんってば」
私はお弁当をパクパク食べ始めた。
ミキのお弁当は残り少なくなっている。
それを大事そうに食べている。
今日は勝てるかもしれない。
「でも、会えなくなるんだよ」
「たったの三日間です」
「寂しくない? まあ、アタシは重美ちゃんと繋がってるから。知ろうと思えば、分かるけど」
「‥‥‥」
「空田さんがどうしてるか、聞いてあげようか」
「いいです」
「ほんと?」
ミキがミニトマトをアルミのおかずカップごと私の前に置く。
ミキのお弁当は空になっていた。
「ミニトマトはもらうけど、空田さんの状況は報告しなくてもいいですから」
私は強がりを言って、ミニトマトを食べた。




