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第23話

 昨夜からの小雨がまだ続いていた。


 電車の窓ガラスを流れ落ちる雨の不規則な動きを見るのが好きだ。


 前の道筋をなぞるようでいて、ちょっとだけ逸れていく。


 見た目通りに流れていかない雨を見るのが好きだった。


 子供のころはシートの上に正座して食い入るように眺めていた。


 今はもう、できなくなってしまった。


 危ない人だと思われる。



 海部さんが駆け込んでくる。


 鞄を頭の上にのせて雨除けにしていた。


「大丈夫?」


「はい。この辺りまでは雨除けがありましたから」


 駅舎の所だけ、濡れないように電車の近くまで屋根がある。


 海部さんが少しだけ、離れて座った。


 雨で濡れた服を近づけるのをためらったのだろうか。


 小雨だから、気にしないでいいのに。


 距離は離れてしまったが、海部さんの気遣いが嬉しかった。


「傘は持ってる?」


「はい。折り畳み傘が鞄の中に。学校へは傘をさしていくので大丈夫です」


 昨日から降り続けている雨だ。傘を忘れて家を出るはずはなかった。


 でも、確認したかった。


「中間テスト。もうすぐなんです」


「そうだね」


 フリースクールには中間テストがない。


 でも、席を置いている高校からのテストを受けることは出来た。


 任意だが、僕は受けることを選択した。


 少しでも、高校と繋がっていたかったのかもしれない。


「空田さんって、勉強、できそうです‥‥‥よね」


 珍しく海部さんが、僕の内側に切り込んできた。


 テストの成績は学年で十番以内をキープしている。


 高校の授業の進行具合は分からないが、教科書は既に読破していた。


 こんな人間は嫌われるだろうか。


「それ程でもないよ」


「でも、私よりはいいと思います。私、苦手なんです」


 海部さんは成績を気にするのだろうか。


 気にしない人間はいないか。


 僕だって、気にしている。逆の意味で。


 何もしないで成績がいいと、妬まれてしまう。


 逆にがり勉で成績が普通だと、みんなにバカにされる。


 だから何もしないで、わざと出来ないふりをして真ん中くらいの成績を維持することにした。


 最初からこうすればよかったんだ。


 僕はそれに気づくのが、ちょっとだけ遅かった。


 今の高校のクラスメートは僕のことを知らない。


 最初からずっと欠席だからだ。


 だから頑張って勉強して、十番以内をキープしていると思っているだろう。


 優秀ながり勉だと思われてるかもしれない。


 それでいい。


「電車の中で、勉強していってもいいよ」


「いえ、大丈夫です」


「じゃあ、僕も勉強するから。一緒に勉強しようか」


 僕は鞄から、ほとんど使ってない英語の教科書を取り出す。


「あっ、同じ教科書だ」


 海部さんが笑った。


 海部さんが同じ英語の教科書を出す。


 僕の教科書の横に並べる。


 同じ表紙だった。


 海部さんの方が、少しだけ使い込まれているように見えた。


 電車の中と外の温度差からか、窓ガラスがいつの間にか曇りだしていた。


 外の景色がほとんど見えない。


 僕は少しだけ、図書館にいるような気になっ

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