第20話
「ファインプレーでしょ」
ミキがスマホの裏を見せてきた。
右手に箸、左手にスマホ。さらに、お弁当を食べながら見せてくるミキは器用だ。
たくさん貼ってあるシールの中に、私と空田さんのツーショットプリクラがある。
他のシールに比べて、新品だし規格が違うしで小さくてもやたら目立つ。
「なんで、自分のスマホに貼ってるの?」
「だから、ポラロイドにはメモリーカードがあって‥‥‥」
「そうじゃない。空田さんの写真がどうして、ミキのスマホに?」
「私とのツーショットじゃないよ。ちゃんと、潮美とのだから、問題ないでしょ」
「過保護だ。あまり、見せびらかさないでよ」
「もう、学校中に知れ渡ってるよ。あれだけ派手に、手をつないで廊下を走れば目立つって」
「あれは、だって‥‥‥」
「あれは嬉しかったでしょ。連れ出してもらえて」
スマホの画面を下にして、机の上に置く。
わざとシールを見せてるな。
「まあ、そう、かな」
「映画、卒業のラストシーンだって、重美ちゃんと手を取り合ってしまったわよ」
「卒業?」
「名作だよ。結婚式で花嫁を奪って逃げだすシーンがあるのよ。知らない」
「なんか、そこだけ見たことあるかも」
「名シーンだよ。あんたがヒロインだったんだよ。もっと、感動しろよ」
「まあ、そう、嬉しいかも」
私は柄にもなくご飯をほおばった。
「これで、告白してくる男、いなくなっただろ」
箸が止まる。
「いるの? そいつ、強者だな。少し、考える余地あるかも」
「ありません」
「‥‥‥そうですか」
「そうです」
ミキ、どうしてそこで白米を食べるの?
「それで、どうだったの。空田さんの反応は? 見せたんでしょ」
「空田さんも、その、スマホに貼ってた」
「なにぃ!」
大声を出したミキは私を見たままだが、私はそれどころではなかった。
みんなが注目している。
昼休みで、外や学食で食べる生徒もいるけど、それでも半数近くは教室に残っている。
「ちょっと、声大きい。重美ちゃんが無断で貼ったみたいなの」
「それでも、剥がさなかったんでしょ。そこだよ。大躍進じゃん。おめでとう」
ミキがミニトマトを私のお弁当に入れる。
「今日は、これもつけちゃう」
ブロッコリーが追加された。
「ミキ、ブロッコリー好きでしょ。栄養あるって言ってたし」
「今日は特別。これで、お肌もぴちぴちだ」
「もともとぴちぴちです」
「空田さん好みのぴちぴちになるよ」
私はブロッコリーを食べてみる。
やはり、美味しくない。これ、カリフラワーとどこが違うんだろう。
「どう?」
「あまり、好きじゃないかも」
「空田さんのためだ。我慢して食べな」
「はい、ママ」
私はブロッコリーを飲み込んだ。
「いいなぁ。完全に両思いだ」
私は、残されたミニトマトを食べた。
うん。やっぱり美味しい。




