第16話
「スマホ見せて」
お弁当を四分の三食べたころ、ミキが突然話題を変えてきた。
「どうして?」
と言いながらも、スマホをミキに渡す。
ミキはスマホの裏側にプリクラにしては大きめなシールを貼る。
「じゃーん」
ミキがスマホに貼ったシールは、先日撮った空田さんと私のツーショット写真だった。
「どうして、ミキが持っているの」
「最新のポラロイドにはメモリーカードが付いているから。元データは私が持ってるということだよ」
ちょっと、二人の笑顔がぎこちない。
でも、これ以上は無理だというくらい頬を寄せ合っている。
「個人情報はどこへ行った」
「さあ、廊下のあたりで、止まってるんじゃない。ここは治外法権。私がそう決めた」
「勝手なんだから」
ミキからスマホを返してもらう。
「絶対、剥がしちゃ駄目だよ。まあ、しないか」
私は、もう一度写真を見る。
初めての空田さんとの写真だ。
「よかったね。これで、いつも一緒だ」
私はスマホをポケットにしまう。
「もう、見なくていいの?」
「大丈夫です」
私は再びお弁当を食べ始めた。
「次は何がしたい?」
「えっ?」
「イベントが色々あるでしょ。お誕生日にプレゼントを渡したりとか」
「‥‥‥」
「まさか、空田さんの誕生日を知らないの?」
「機会が無くて」
「電車の中の十五分はどうした。まさか、毎日天気の報告会をしてるだけじゃないよね」
「ちがう」
「潮美の誕生日は伝えた?」
「それも、機会が無くて」
「すぐに聞いて。潮美の誕生日はまだ先だからいいけど、問題は空田さん。誕生日過ぎてたら、どうするの? 来年まで待つつもり?」
「それは‥‥‥」
「来年も、あると思うなよ」
「‥‥‥」
「あっ、大丈夫。潮美可愛いから、振られたりしないよ」
「ほんと?」
「大丈夫‥‥‥浮気はするかもしれないけど」
「空田さんはしません!」
「そう、だよね。しないよね」
「‥‥‥」
「そう、睨まない! 仕方ないなぁ」
ミキがスマホを取り出し、タップし始めた。
お弁当が残り少なくなったころ、ミキのスマホが振動した。
ミキは箸をくわえたまま、スマホをのぞき込む。
そして、ニンマリする。
「空田さんの誕生日、分かったよ。まだ、間に合う」
「どうして?」
「重美ちゃんと友達になったの」
文化祭のあの日。一度しか、会ってないよね。
「私はジョーカーを手に入れてるんだよ。何でもわかるよ。家族しか知らないことも」
ミキがミニトマトの残ったお弁当を差し出してきた。
「空田さんの誕生日、知りたい?」
「‥‥‥」
「知りたいよね!」
少し迷ったけど、ミキのお弁当からミニトマトをつまみ上げた。
「よし、いいぞ。そのまま口の中へ運べ」
「クレーンゲームじゃないんだから」
私は、ミニトマトを口の中に落とした。
子供食いは、久しぶりだった。




