第14話
今、プリクラハウスの中にいる。
カラフルなLEDライトが点灯している。
全て百均で私が買っていたものだ。
客になることを想定していなかったといえば嘘になる。
この光には私の願望も少し入っていた。
空田さんと二人だけの空間に思えるが、制作者の一員だった私は知っている。
「空田さん、見られてますから」
小声でささやく。
隣の部屋で多分ミキがポラロイドカメラを操作している。
檻の中で観察されているような気分になった。
ガサガサ音がする。
重美ちゃんまでいるのかな。これは。
兄思いのいい子だと思う。思うんだけど、やりすぎだよ。
「空田さん、始めます」
私はコイン投入口に100円玉を入れる。
「それじゃフレームに入りません。もっとくっついてください」
ミキ、わざと事務的に喋っている。
機械の真似しなくてもいいのに。
「ニイチャン、あと二十センチ寄らないと、晩御飯抜きだよ」
重美ちゃん、強い。
フラッシュがたかれる。
上手に笑えただろうか。
初めてミキとプリクラを撮った時のことを思い出す。
ミキ、出会った初日にプリクラに誘ったよね。
あの時も、微妙な笑顔だったな。
ポラロイドからプリントが出てくる途中で、カメラごとボコっと取り外される。
ダンボールの壁の向こうでガサゴソ音がする。
最初に見せてくれないの?
私たち、お客さんだよね。
「これは、却下です。もう少し、自然に微笑みましょう。特に、空田さん」
私じゃなかった。
空田さん、頑張ろう。
私は聞こえないよう、目で合図した。
なんとかプリクラをクリアした。
ミキ達の脱線もあったが、楽しかった。
正直、思っていた以上に楽しかった。
ミキ、ありがとう。
重美ちゃん、ありがとう。
空田さんは、重美ちゃんと帰っていった。
仲の良い兄妹だった。
少しだけでいいから、今日は空田さんに優しくしてあげてね。
空田さん、頑張ったよ。
それは、分かってるか。




