第10話
私たちは敷き詰められた段ボールの上に座って、お弁当を食べている。
ミキ、スカートで胡坐はまずいと思うんだけどな。
さっきの立膝よりはましか。
「いよいよ、明日だね。楽しみだな文化祭」
「うん」
「プリクラハウスも思ったより綺麗にできて、姉さん嬉しいよ」
教室の半分近くがプリクラハウスになった。
学校教育の問題から、体が密着する狭い個室空間は認められなかった。
四人が入れるほどの空間に拡張された。
女子の間から、少し不満の声が上がった。
男子からは、それを上回るブーイングがでた。暴動が起きるかと思った。
「何とか、このサイズで納めることが出来た」
学校側は、教室全体を使いなさいと言ってきたが、それじゃ写真館だ。
閉ざされた空間こそが、プリクラだ。
「一時はどうなるかと思ったけど」
「ミキ、頑張ったもんね」
「みんなの前で、イチャイチャツーショットは、拷問だ。空田さん、絶対やってくれないだろ」
「無理だと思う。私だって、無理だし」
「そして、ピンクのガムテープにしたのは正解だ。潮美、グッドジョブ」
「かわいいでしょ」
継ぎ接ぎだらけになった段ボールだが、つなぎ目は全てピンクのガムテープが貼ってある。
それがピンクのラインになって、少しだけかわいらしさをアピールしていた。
「さて、お弁当も食べ終えたことだし」
「まだ、ミニトマト残ってるじゃない」
「事前チェックだ」
あっ、無視された。
「空田さんの推定年齢は十七から十九歳」
「うん」
「うん、じゃない。ちゃんと聞きださないから、推定年齢になるんだ」
「ごめん」
「身長は?」
「電車に座ってるから分かりません。空田さん、一度も立ち上がったことないし」
「ほんと、ポンコツだね」
「しょうがないじゃない」
「そこは、さりげなく聞き出すところだろ。私、背がちっちゃいんだよね。空田さんは何センチ? って」
私は手で相槌を打った。
「昭和かよ、それおばさんのしぐさだよ。たまに昭和からタイムスリップした女子高生になるね。おばあちゃん子?」
「‥‥‥正解。子供のころ、夏休みはずっと長野のおばあちゃんのところに行ってた」
「それで、納得した」
ミキが手で相槌を打つ。
「マネしないでよ、もう」
「次、服装」
また、ミキに無視されてしまった。
「縦じまのシャツと、ジーパン」
「縦じま?」
「微妙に違う縦じまのシャツを毎回着てる」
「ジョブスか」
「えっ」
「ザッカーバーグも同じ服だったかな。服選びにかける時間がもったいないんだって。その分仕事したいらしい」
「そうなの」
「ちょっと変わってるね、空田さん。服選びは楽しいのに」
「女の子はね。別にいいじゃない、男なんだから」
「おっ、肩持ちますね」
ミキがニヤニヤしている。
「潮美、目をつぶって」
「何?」
「目をつぶって、空田さんの姿を思い出すの。今、何してる?」
「えーっと」
空いていた口に、ミニトマトを放り込まれた。
「何する!」
「全部食べたら、文化祭と空田さん、どっちも大成功だよ」
私は一気に飲み込んだ。




