4.
要らんといったのに、高城は僕の補佐をすることになった。先日の会議の話が湊の耳に入ったらしい。
「瀬川をだまらせるなんてすげえ!!」と、鶴の一声で決まってしまった。
ただし現場の仕事はそのままで、所属も開発部のまま。高城の仕事が増えただけだ。
ならば、忙しいなどと言って、何もせずにすぐ戻っていくだろう。
「高城です。管理系の仕事は初めてですが、瀬川さんみたいになりたいんで、頑張ります。よろしくお願いします」
わかりやすいおべんちゃらだ。言い慣れてないのだろう、口元がにやけている。
そんなこと言って、どうせ、すぐ辞めるんだろ。
内心そう思ったが、笑顔を作り拍手する。
「えー、かっこいいー」「しっ」
インターンの鈴木がぽろっと呟く。すぐに花田に注意され、口を閉じた。
確かに、高城は背も高く、穏やかな印象だ。いやしかし、こういうのほど、裏で何をやっているかわからないではないか。
「あざす。でも瀬川さんほどじゃないですよ」
「……」
やりすぎの下手な世辞に、頭を抑える。馬鹿にしているとしか思えない。
そういえばこいつはずっとフリーターで、正社員の経験がないのだった。社会の常識や空気のようなものも教える必要があるのだろうか。
「本当ですって。ねえ」
高城に話を振られて、鈴木さんが「あははー」と愛想笑いをする。……なんだろう。無駄に傷つけられた気がする。
「おい、いいかげんにしろよ」
「ありがとうございましたー。瀬川さんがツッコミで、俺がボケ担当します。コンビ結成です。よろしくお願いします」
ついには漫才のようなイントネーションでそう言い放ち、特に真面目な連中がそろっている経営管理部を、変な空気にしていた。
花田の視線を感じる。僕の顔色を伺っているのだろう。僕は軽口を叩かれてもさほど気にならない。やることをやらない奴に対して、腹が立つだけだ。
花田は僕の機嫌が悪くないと受け取ったのか、明るい声で高城の案内を始めた。
「高城君は瀬川さんのサポートってことなので、席、ここね」
「ありがとうございます。固定の席って意外といいっすね。なんか落ち着く」
「開発は席自由だもんね」
高城は僕の斜め前に座った。パーテーションで顔が見えなくなる。花田が書類の場所や管理方法を伝えている。
しばらくは僕に用はないだろう。PCを開いて、彼に渡せる仕事を探す。失敗しても大きな問題にならない仕事を。
ああ、そうだ。
ちょうどいいものを見つけた。
後回しになっていた、社員研修を丸投げしてやろう。社内だから、最悪できなくても失敗しても、外部に影響はない。




