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ベンチャーNo.2の瀬川さんは、Z世代がわからない  作者: ru
1.パワハラ上司の憂鬱

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3/21

3.


 会議が終わると、社員たちは露骨にほっとした顔で散っていった。


 結局、休憩の後はこれからどう動くかを決めただけで終わった。責任の所在も曖昧なままだ。戸田が無理なら他の人間が変わるべきだが適任者がいない。


 高城はMacbookを抱えたまま、つったって僕をみていた。


 さっき遮られた事が、今になってふつふつと苛立ちに変わる。なんで僕の言葉を止める権利がコイツにあるんだ。


 つい、舌打ちする。


「まったく、余計なことを」


 高城は気にした風もなく、少し首を傾げた。


「何がです?」


「僕は、責任追及をしていたわけじゃない」


「そっすね。事態をまるっと解決するために、原因を探してんだろうなとは思いました」


 躊躇いなく返され、僕は眉を寄せた。


「わかってるなら、なぜ遮った。君は僕のやり方に意見できるほど、会社を理解しているのか?」


「いや、そういうわけじゃないすけど」


「ではどうして」


「や、なんか、無駄だなとおもって」


「……は?」


 僕が無駄だと言いたいのか? そこまでストレートに言われる筋合いはないぞ。


「だって、どうせ戸田さん答えらんないし、瀬川さん怖っ、て感じで一時間たっちゃったら、時間の無駄じゃないすか。もし戸田さん辞めちゃったら、一からやり直しでしょ」


 辞めないようにもっと優しく接しろだとか。厳しすぎるとか。お前はパワハラだとか。正義ぶって言ってくるやつはたまにいる。こいつもそういいたいのか。


 馬鹿馬鹿しい。指導教育は上司の仕事だ。仕事をしないやつに、給与を払う余裕はない。


「それで潰れたら、その程度なんだろ」


「そうですね。その程度です……この会社が」


「ふざけるなっ!!」


 僕のこめかみが痙攣した。この会社を馬鹿にするのは許せない。


 しかし高城は、怒鳴りつけても全く動じなかった。


「離職率、かなり高いですよね。湊さんのカリスマで入社も多いですけど……入社したらギャップがあるのも確かです」


「……だが」


 反論しかけたが、確かに、その通りなのだ。離職率は高い。特に、入社1年以内で辞めるのが多い。こいつの言うとおり、原因は外から見たイメージとのギャップだろう。しかし、しかしだ。


「仕事なんだ。泥臭いことも嫌なこともあるに決まっているだろう。学生じゃあるまいし。会社を舐めているとしか思えない」


「や、それはそうなんすけど」


 高城は長い指で顎を掻いた。


「なんか、みてて気持ち悪いんすよね。やらなきゃいけないこと全部瀬川さんがやっているのに、悪いことも全部瀬川さんのせいになってる」


「……随分と、生意気なことを言うな」


「俺、試用期間が来週までて。三か月いて、そう思ったっす」


 そう言われて、僕はわずかに動揺した。


 ここでこんなことを言ってくるという事は、つまり、……退職する気なのだろうか。


 最後に言いたいことを言って逃げる。そういう人間を、これまで何人も見てきた。


「君……辞めるのか?」


「いいえ」


「……そうか」


 何でもないように否定する言葉に、少しほっとした。最近は本当に骨のある人間が少ない。高城のことは湊も気に入っているようで気にかけていた。僕のせいで辞めると言われるのは困る。


 僕は資料とLenovoのノートPCを脇に抱えた。自席に戻りたいのだが、ぬりかべ男はそれを邪魔するように立っている。


「あ、瀬川さん。相談があるんですけど」


「今か?」


 後にしろと言外に伝えたつもりだったが、高城はドアの前からどかない。


「俺、経営管理部行きたいんですけど。瀬川さんの補佐やりたくて入ったんで」


「君はエンジニアだろ」


「湊さんに聞いてません? 一応面接の時、全体見る経験したいっつったら、じゃあ経管だね、試用期間終わったら考えるって、言われてたんすけど」


 僕は何も聞いてない。あとそれは、入社させるための餌だろう。やりたい仕事に適性があって、実際にできる人間なんて一握りだ。


「は、君にできるわけがない」


 事務方に行きたがるやつはたまにいる。大体が現場がきついとか客先とコミュニケーションを取りたくないとか、今より楽だと思っているのだ。


 ふざけるな。


「やってみなきゃわからないですよ。瀬川さんの補佐なんて、俺以外やりたい人いますかね」


 僕の心のうちも知らず、軽い口調で言われて腹が立った。舐められている。


「必要ない」


「あ、そうすか」


 高城はそう言って開発部のフロアに戻って行った。


 素直に引き下がられるとそれはそれで苛つく。


 ……やりたいならもっと食いさがれ。



ここまで読んでいただきありがとうございます。ブクマ、評価などしていただけると嬉しいです。

管理部あるある、お仕事あるあるを入れていけたらいいなと思っております。

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