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ベンチャーNo.2の瀬川さんは、Z世代がわからない  作者: ru
1.パワハラ上司の憂鬱

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2/21

2.


 だが高城は、怯えた様子もなく真っ直ぐ僕を見ていた。何を考えているのかよくわからない目が、僕は、心底気に入らなかった。


 高城に向かった僕の視線の端で、戸田がほっと溜息をついた。それでカチンときた。


「なぜ今? そんなことMTGまでにやって当然だろう? 戸田!」


 戸田は新人に舐められて、庇われて、悔しくないのか。しかし当の本人は顔を白くして目を泳がせている。高城が代わりに答えた。


「昨日は、別件の障害対応で戸田さんとられてて」


 代弁にしては態度がふてぶてしい。


「だから共有できたの、今日になっちゃって」


「言い訳か。そもそも、リアルタイムで共有できていないのが問題じゃあないのか?」


 ぬりかべはぬっと立ち上がった。


 デカいやつというのは、それだけで威圧感がある。


「それも、含めて。整理する時間を、ください。五分で、いいすから」


 高城の声が少し大きくなる。見下すような視線、僕を宥めるような言い方にイラついた。


「だから、それは……」


「今やるのは、原因の特定ではなくて、リカバリでしょう?」


 会議室に響く低い声が、もう一段階大きくなり、僕の声に被さった。それで気が削がれた。けして気圧された訳ではない。あくまでも静かな声だった。


「チッ」


 ……確かに今は解決が優先だ。


 戸田の態度には腹が立つが、それで本題を見失っていたら僕も同じだ。

 高城はその場しのぎで戸田を庇っているような顔ではない。睨んでみてもぬりかべは動じなかった。


 なんだか苛々しているのが馬鹿馬鹿しい。僕の方が子供のようだ。


「ハア。情けない」


 僕は落ち着こうとため息をついた。


「……五分だな」


「ありがとうございます」


 高城は戸田の横に回り込み、MacBookの画面をのぞき込んだ。


「ふうん。……ここでこの話があって、……ああ、向こうの担当変わったんすね。これ、最初どんな話だったんすか?」


「え、ええと……」


 さっきまで凍っていた戸田が、ぎこちなく喋り出す。


「なるほど、見積もりみて激怒しちゃったんすか。これが含まれてると思ってたから」


「そ、そう。こちらは、それは技術的には可能って言っただけだったんだけど、気が付いたら当然やることになってて」


「これ、サービスでやるとどうしたってマイナスっすね。要は、適正価格で通すにはどうしたらいいか、であってます?」


「あ、いや、でも、……納期も伸ばしてもらわないと」


「あーそうなんすか。じゃあこれは後から考えるとして……」


 僕はそれを見ながら、内心で舌打ちした。これを、会議までにやるのが、戸田の仕事だろうが。


 少し考えればわかる。問題を明確にして、解決するための流れを整理して、やるべきことをやる。それだけだ。誰でもできる。できて当然だ。こんな僕にだってできるのに。


 なぜだ。何でやらないんだ。……仕事を、僕を舐めているのか。


 休憩とはいいながら、会議室の空気はどんよりと重い。その中に妙に落ち着いた低い声が流れていく。


 その五分は、まるで僕一人で、世界の仕事のすべてに押しつぶされるような気分だった。


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