表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベンチャーNo.2の瀬川さんは、Z世代がわからない  作者: ru
1.パワハラ上司の憂鬱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/20

1.

 

「少し考えればわかるだろうが」


 ――バン。


 資料の該当箇所を指しただけのつもりだったが、僕の掌が机に当たった音は思った以上に大きく響いた。


 会議室の空気が、一瞬で凍りつく。


「なぜ報告をしなかった? なぜ昨日の日報に、問題なし、なんていう言葉がある?」


 空気とは対照的に、やたらと明るい会議室。壁はカラフルで、テーブルも椅子も白く、洒落たカフェのようだ。


 集まっている人間達も、カラフルなパーカーやTシャツ姿。会社の会議だというのに、ジャケットすら着ていない。


 その中で、僕だけがスーツだった。


「昨日の時点でわかっていれば、ここまでマイナスにならなかった」


 ああ、小学校の先生とはこのような気分なのかもしれない。嫌われ者の、厳しい先生。


「そのくらいはわかるか? なあ、理解できるか?」


 社員たちに、それと似たような存在だと思われている。自覚はある。


 向かいに座る戸田は俯いた。それを頷きと捉え、僕は続ける。


「なぜ、報告をしなかった? さっきからそれを聞いている」


 戸田はこのプロジェクトのリーダーだ。予定外のことがあれば報告し、僕や湊に相談するべきだった。


 なのにそれをしなかった。


 追求されても黙り、下を向いたままだ。隣の社員はチームメンバーのくせに視線を逸らす。誰も、何も言い出さない。まさに沈黙のワンチームだ。


「おい、何とか言ったらどうだ」


 僕の低い声に、戸田の肩がぴくりと揺れた。


「い、いえ、その……」


「その、何だ」


 縮こまっているのは、僕に怯えているのだという事は分かっている。だからといって、なぜ、やるべきことをやらなかった人間に、僕が配慮して優しくしてやらなければならない?


「せ、先方は、現場サイドで話を納めたいぽくて」


「は? そりゃそうだろ。金を払わなくてすむならそれが一番だ。それで君がそう判断した。ならばその工数に給与は要らないな?」


「……」


 また沈黙。ああ、イライラする。


 トントントントン、と、僕が机をたたく音だけがしらじらしく響く。


「あのー、瀬川さん」


 その空気を破ったのは、端で議事録を取っていた高城だった。


 三か月前に入社したばかりの若いエンジニア。背が高い上にオーバーサイズのグレーのスウェット姿で、なんというか、妖怪のぬりかべのようだ。その上、うねった明るい色の髪が眉を隠し、表情が読みづらい。


 ぬりかべの声は、ピリピリしている会議室に似合わず落ち着いていた。


「五分、休憩にしませんか」


「あ? 今それどころじゃないだろ」


「五分ください。ちょっと、わかんなくなっちゃったんで。話まとめる時間ください」


「はぁ?」


 下がった僕の声に、会議室の空気がさらに冷えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ