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ベンチャーNo.2の瀬川さんは、Z世代がわからない  作者: ru
2.社会見学

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27.

 

 湊の勘は、当たる。


 だから、「そんな気がする」といわれたら、僕も池上も文句はない。


 僕だって、緒方さんに頼むことへのリスクは考えていた。恩を売られ、独立への協力をせざるを得なくはなるだろう。でも、考えてみれば、なにも部下になる必要はない。業務委託とか、アライアンスを組むとか。まあ、物凄く不利な話をされそうだけど。


 しかし、会社同士の契約や交渉なら、もう僕の方が経験は上だ。そうやすやすと好きにはさせない。


 なので、緒方さんから内情を探るというのは、どのみちやるつもりでいたのだ。


 池上も湊も現場に戻って行った。見晴らしの良い会議室には僕一人。雲がかかり色のない空を見ながらスマホを手にした。


 物凄く、物凄く嫌だが、名刺の裏に手書きされた携帯番号を打ち込む。この間帰り際に渡されたものだ。……ああ、物凄く嫌だ。


 何度、あの人に電話をしただろうか。最初の一声のパターンがいくつも頭を駆け抜ける。機嫌のいいとき、悪いとき、都合がいいとき、悪いとき……


 しかしこれは仕事だ。一つ唾を飲み込んで、大きく息を吐いた。


 意を決して発信ボタンを押すと、表示名が「緒方さん」になる。なんだか見張られているようで、内臓がひゅっとした。

 プライベートの電話番号は変わっていなかったのか。アカウントの紐づけで表示されたのだろう。


 出てほしくないという気持ちと、さっさと要件を片付けたい気持ちでコール音を聞く。


『はい』


 低い余所行きの声に、鼓動が嫌な感じに跳ねる。そして僕はその一声で、彼が顧客と一緒にいることを察する。


 出たのなら話せない状況ではない。大したことでなければ「あとで」だけ言って切られる声だ。短く要件を伝えるだけが正解。


 一度、「お忙しいところすみません」と言ってしまって、あとでブチ切れられた。「判断するのに2秒無駄だろうがよ」と。


「瀬川です」『あ~~!瀬川あ!』


 しかし、予想を裏切る反応だった。


 旧友にあったような、嬉しそうな声を上げて、『ちょっと待って』と言うと電話から口を離して誰かに言った。『可愛い後輩から、大事な電話なので、少し外します』


 可愛い後輩……? わざとらしい。これは、僕に切らせないためだ。わざわざ優先してやったのだと、そう言いたいのだ。


『電話くれて嬉しいよ~、考えてくれた?』


 ウキウキした声に唾を飲み込む。緒方さんの話の腰を折るのは勇気がいる。


「その話は、また今度に……すみません、違う話なんですけど」


『違う話じゃないよ、システムの件でしょ。未来未来。お前ならわかるとおもったよ、いつにする? お前を僕のビジネスパートナーとして、一番上に紹介してやるよ。そうしたら変わるんじゃない? 現状』


 電話の声に集中する。機嫌のいい声。自分の思い通りに事が進んでいるという事だ。


 まさか……無茶な仕様変更の話はこいつが発端で、その理由は僕を吊り上げるためで、僕が思い通りに電話してきたから嬉しい、と、そういうことか?


 つまり、役員の誰かが緒方さんに言われた事を気軽に言って、それに忖度したやつがいて、それで現場にしわ寄せが来た……そういうことなのか?


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