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「……という事だ」
湊と池上と僕。創業メンバーだ。何かあればこの三人で結論を出す。
といっても、最後に決めるのは湊だ。二人が反対しても、湊がやると言ったらやる。それがうちのルールだった。
ちなみに池上は湊の大学の友人だ。僕は高校までの友人。なので僕と池上は仕事で知り合った仕事の仲間だ。
「ひゃあ、カレンダー読める人いないんかね、それか分身するう? 湊と俺様が10人ずつになったらいける。ひひっ もう無理。モームリ! ひひっ」
珍しく池上が、湊より先に口を開き、引き気味の笑い声を上げながら早口で言った。
「……ええええ」
湊は頭を抱えた。
「これはさすがに、逆境に燃えるぜ、とか言えねえ」
「……無理に引き受けて、評判を落とすか、断って今後の取引をあきらめるか」
僕があえて冷静に言うと、湊は唸るような声を出した。
「瀬川はどう思う」
「どう考えたって断った方が傷は浅い」
「や、ちょっとまって、チョットマッテおにーさん、未来から10人くらい転移してくれば、ワンチャン、ひひ、ほら、未来感」
「池上、ちょっと黙れ~」
池上は湊にたしなめられて肩をすぼめて見せた。大袈裟な、アニメーションのような表情。いつも大人しくて動かない池上がこうなるのは、本当にてんぱっている時だから、そっとしておいてくれと湊に言われている。
「うーわーーーーー」
湊は池上に負けないオーバーリアクションで顔を覆った。
「えーーー、ここまでやったのにいい」
湊もてんぱっているのだろう。
「うー、無理だな、あああ、どう考えても無理だなあ」
「……」
僕は迷った。一つだけ、打開策はある。
ただ、それがどういう結果をもたらすか。少し考えればわかることだ。それを、僕だけの問題だと、湊は切り捨ててくれるだろうか。
「……多分、緒方さんなら上から説得できる。……原さんもコンサルがどうのと言っていた。頼んでみようか、何とかならないか」
「何とかなるなら、最初から言えよ瀬川氏いい」
池上が飛び起きて肩を組んできた。下手なウインクをしてサムズアップして見せる。
「じゃあそれでいいじゃん。はー、良かった良かったのすけ。……じゃ、俺もどるね」
池上は、すん、と落ち着くと、席を立とうとする。
「まて」
湊がそれを固い声で制した。
「あの人は駄目だ。頼ったら駄目だ。……そんな気がする」
それを聞いて、ついホッとした自分に嫌悪する。これでは止めてもらいたかったみたいではないか。
しかし湊は僕を見てはおらず、経営者の顔で宙を睨んでいた。




