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ベンチャーNo.2の瀬川さんは、Z世代がわからない  作者: ru
2.社会見学

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25/32

25.

 

 それからしばらくは、順調だった。非常に忙しかったが、現場は昔からの社員が中心でやりやすかった。勢いがあったころに戻ったようで、日々充実していた。


 二月も終わりに近づき、プロジェクトも大詰めを迎えていた。このころになってしまうと逆に僕のやれることは減る。高城は助っ人で開発チームに入った。僕は日々の進捗管理をしたり、差し入れをしたりしながら、現場を手伝えない自分の無能さをかみしめていた。


 が。


「……それについては、最初に、対応しないと決まったはずでは」


「そ、そうなんですけどね。いや、折角の大きな機会じゃないですか、やっぱり、こうテーマを考えると、どうしても、もっと、未来感がほしい、という話が出て」


 話がある、と、僕だけが呼び出された無機質な、窓のない狭い会議室。


 先方の担当者である原さんは、丸くてつるりとした額をハンカチでおさえながら、とんでもないことを切り出したのだ。


「それは……仕様の変更、という事ですか」


「う、うん。そうなりますかね」


「……今からでは、難しいと思いますが」


 できればNOと言いたくはない。お任せくださいと言ってしまいたい。


 しかし、僕から見ても、この仕事はゴール寸前なのだ。今ここで、ゴールが険しい山の向こう側になった、といわれても無理だ。


「なにも、このままでやってほしいわけではないんです、人員も配置するし、予算もプラスになるから。上のレビューでそういう話になりまして。なんか、役員が、コンサルに言われたみたいで」


「いや、しかし」


「本当に申し訳ない。でも、このシステムは上も期待していて。もうすこし何とかならんかと、言われてしまうと、私には、ねえ」


 ひとまずここは切り上げて、相談の結果難しかったと回答申し上げるしかないだろう。


「……一度、持ち帰らせていただきます。返答は……」


「こ、これからも、取引が出来るといいと、私は思っているんですよ」


 原さんは慌てたように、人のよさそうな顔をしかめて言い出した。


「うちでも、おたくのような会社と直接取引をするのはめずらしいから、いままで様子をみさせてもらいました。活気もあるし、皆さん優秀だし、柔軟に対応してくれているのは、助かってます、評価しています」


 困ったような顔は、何とか僕に頷いてもらわなければならない、という必死さがにじみ出ていた。


「でも、上の方には結果と書面しか届かないですから。わ、私もね、皆さん、評価されるべきだと思うんです。でも、うんと言ってくれないと、現場の頑張りが、無に帰してしまうかもしれない。やっぱり間に一社入れた方が良いんじゃないかって言われたら、もう直接お話しすることもできないかも」


「原さん……」


 なれていない脅し文句に、僕たちを本当に評価してくれている本音が透けて見えて、僕はもう一度答えた。


「一度、持ち帰らせていただいて、検討いたします」


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