15.
「……確かに、俺、髪は、多いし。体型は、結構気をつけてますけど……」
やっと、僕が何が言いたいのか分かってきたのか、先ほどまでのふてぶてしさが少し弱まる。
「君がこの現場で落とすべきは、若い女性ではない。決済者だ。それを踏まえて、鏡を見て、考えろ」
「や、別に俺、女にモテたいわけでは」
それでももごもごと口答えする高城に、僕はついに怒鳴りつけた。
「だから! モテたい奴らの中に、モテる奴が突然入ってきたら、そいつはモテない奴にモテると思うか? 無理だろ!? 君みたいなヤツはなあ、少しダサめにして、可愛がられるしかないんだよ!」
「え? あ、う」
「それがわからないほど君は馬鹿か?」
高城は鏡と僕を見ながら戸惑っているようだ。
……ここまで説明して、まだ分からないのか。僕は高城を買い被っていたのか。
再度ため息をついて、改めて聞いた。
「……わからないなら、僕の補佐にはできない。開発チームに入れる。入湊がなんと言おうと。どうする?」
まだごちゃごちゃ言うかと思ったが、高城は一つ喉を鳴らして、いつものようにまっすぐ僕を見下ろした。しかしいつもより、目が強い気がする。
「着ます。それ、貸してください」
ようやくシャツに手をかけた高城に安堵する。
「名刺交換したことはあるか?」
「まあ、一応」
「どちらから受け取るかわかるか?」
「え、先に出した方?」
「……」
つい、頭を抱える。
「……着替えながら一度で覚えろ」
今日は一人で動くこともないだろうし、名刺交換さえ乗り切れば、なんとかなる。
高城は大人しく「うす」と、相槌を打ちながら手早く着替えを済ませた。こいつは覚えは早い。とりあえず大丈夫だろう。
髪を後ろに撫で付けるように、表情が見えるような髪形にさせる。これには大人しく従った。眉と額が見えると不気味さが薄れ、少し幼く見える。
鏡を覗いて、額のニキビ跡をしきりに触っている。これが気になっていたのだろうか。
「君は会話は下手ではない。発言は我慢しなくていい。だが、偉そうで生意気そうだ。そうだな、顎を引いて、目に力を入れてみろ」
「こうすか」
「……目を見開くな、怖い。あと、こうですか、とはっきり言え。口をちゃんと開けて、聞き取りやすくしゃべれ」
「うす……はい。こ・う・で・す・か」
……わざとらしさは残るが、初々しさで何とかなる。だいたい、おっさんというのは基本、新卒や若者が好きだ。一生懸命な雰囲気があれば、多少生意気でも不器用でも、何とかしてやろうと手を貸してくれる。
「よし。あとは僕をよく見てろ。行くぞ」
「はい」
少し緊張気味の歯切れ良い返事に、少し僕の機嫌は上を向いた。




