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ベンチャーNo.2の瀬川さんは、Z世代がわからない  作者: ru
1.パワハラ上司の憂鬱

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10/24

10.

 

 社内セミナーの件から、高城は調子に乗り始めた。


「瀬川さん、経管のダッシュボードってないんすか?」


「は?」


「いや、他の人が何やってんのかわからないなって思って」


 開発や営業には、案件の管理と進捗の共有、数字の確認の為のダッシュボードがある。しかし経管は、高城を除き社員2人の部署だ。やることも明確に分かれている。把握すべきことは個々で管理すれば十分だ。


「作っていいですか? 瀬川さんの仕事棚卸しして、一覧にしてくださいよ」


「僕の業務は機密の範囲も多いから」


「そのへんはマル秘で黒塗りしちゃっていいんで」


「……」


 そういわれると、普段から情報共有をしろと社内に言っている僕が断るのも変だ。


 改めて自分の業務リストをざっと見て、インデックスだけなら問題ないと判断した。確かに、周りからは僕が何をやっているのかよくわからないだろう。瀬川は難癖付けて回っているだけ、と言っているやつもいるようだ。


「項目だけでいいなら、共有する」


「あざす。……うげ」


 ダイレクトメッセージで送ってやると、それを見て高城はうめいた。


「多くないすか」


「年一の物も多い。それほどでもない」


「いやこの、”代表のマネジメント”ってなんすか。”マーケティング運用”って瀬川さんじゃなくないですか」


「じゃあ誰がやるんだ」


「……たしかに」


 湊はたまに取材を受けるし、彼が表に出ることでブランドができている。そうやって知名度を上げているから、広報やマーケティング業務は重要なのだが、やる人間がいない。そういうものは僕がやっている。


「小さい会社は出来るだけ自分でやるしかないだろ」


「……決算(中間)(期末)(月次)……評価(四半期)……給与確認(月次)賞与算定(半期)、備品の選定(随時)……広報素材確認(随時)……プレスリリース(随時)……うは、だから重なると瀬川さん死ぬのか」


「勝手に殺すな」


 この間の残業続きの時の事を言っているのだろうか。あれからは気を付けている。……また担ぎ上げられたくはない。


「あ、花田さんも送ってください。俺まとめますんで」


「え? あ、ええと。まとまってないから、ちょっと待ってもらえる?」


「はい」


 花田は驚いたようだが聞いてはいたようだ。


 数日後、経営管理部の業務一覧を手に入れた高城は、勝手に業務を振り直した。結果、僕の仕事は減った。


 いや、仕事を分けるのは部長の僕の仕事だろうと思うのだが、「経験積みたいんで、これ、やらせてください」といわれれば、断る理由もない。やる気ある若者にチャンスを与えるのも上司の仕事だ。


 高城は人事と広報まわりの作業を持って行った。プレスリリースの下書きとか、メディアの対応とか、採用とか、若者が好きそうなきらきらした業務が多い。


 確かに、僕よりは高城のほうがはるかに向いていると思う。そのあたりは僕も手探りでやっていた範囲だから、あまりクオリティは変わらないだろう。


 そうして空いたところには、また別の業務が入り込む。


「瀬川! ちょっと! ねえ、ちょっと!」


 弾んだ声がフロアに響き渡り、皆が顔を上げる。


 湊が社長室のドアから身を乗り出して、僕を大きく手招きしていた。メッセージで呼べばいいのに、それすら面倒だったのだろう。


「すごいすごい! すぐ来て!」


 裏表のない、嬉しそうな声。何度か聞いたことがある。こういう時は決まって、大きなチャンスが目の前にある時だ。


「はい、すぐ行きます」


 これは忙しくなるな。


 僕は手帳を手に、社長室へ向かった。


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