知らない天井
動かない身体と無為な日々
ふと気が付くと、薄暗い部屋のベットで横になっていた。
知らない天井だ…
思わずお約束の感想を漏らす狸氏であったが、先ずは自己の現状把握をしなければと考え、上体を起こそうとした。
身体が動かない…
頚から下の部位、いや顔でさえ痺れて上手く動かない、全身に鬱血時の痺れのような不快感を感じつつもようやく誰かを呼ぶという考えにいたり、唸り声とも呻き声ともつかない叫びをあげることとなった。
身体が動かずさらに上手く言葉を喋れない現状に驚愕しつつも、何者かが反応してくれることを待った。
しばらくすると看護師らしき人物が視界の隅に現れ、緊急入院している旨、一通りの検査を終え経過観察中である旨を伝えられた。
家族の連絡先を問われ、なんとか辿々しい言葉を発し実家への連絡先を伝えると、動くことも叶わず病室で無為に過ごすしかなかった。
どれくらいの時間がたったであろうか、沈痛な面持ちの母が病室を訪れた。
気苦労を掛けたことを詫びつつも、諸々の手続きを頼み、今後の入院生活について共に説明を受けた。
医師からの説明によると脳出血のなかでも、脳の中心部に当たる脳幹付近での出血であり出血は止まっているものの再出血の恐れがあるので安静にする必要があること、身体に様々な障害は血腫による脳組織への圧迫により引き起こされており何はともあれ暫くは投薬による血圧管理を実施し経過観察するしかないとのことだった。
ベッドから起き上がれず手も上手く動かない、出来ることもなくただ天井を見つめるだけの日々を過ごした。
食事は鼻からカテーテルを通し、尿や便もカテーテルで垂れ流し、まるで大きな管だなと哲学的な思考に陥るまでに暇をもて余した狸氏は、独りしりとり・連想ゲーム・瞑想等時間を潰すことをあらかた試したが大きな効果は得られなかったのであった。
暇という毒物にへの曝露訓練に嫌気が差し始めた頃、ベッドをリクライニングさせテレビを観るという解決策も見出だした。
しかし脳出血の影響か、周囲の音に対し耳鳴りが鳴る状態のため消音状態で字幕を読むと言う方法ではあったが…
少なくとも暇による発狂エンドは避けられたが四肢が上手く動かない現状は変えようがない現実であった。




