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 国王陛下との夕食は綺麗なお皿が続く……。


 国王陛下が、昨日の事件の詳細を話し始めた。

 アンジュ元王女を近衛兵ルイスが会場に引き込んだが失敗。

 その後、ルイス単独でのアンジュ元王女救出作戦は呆気なく失敗。

 反体制過激派による王立劇場襲撃は、国王陛下暗殺と召喚魔導書の奪還を目的としていたが失敗。実行犯は全て収監され、潜伏先や関係者の追跡捜査が始まった。

 ラナ見習いのヘクターは、異国出身、三年前から見習いとして潜入し召喚魔導書を狙っていたと自供した後は黙秘を続けている。混乱に乗じて狙った対象がセスか私かは不明、共犯者・背景等不明、聴取が続いているとのこと。


 昨日の複数の事件で私が気になったのは、ロイヤルボックスに入れる立場の近衛兵とラナ見習いが犯人だったということだ。

 まだまだ、現国王政権は盤石ではないようだ。

 だからこそ、召喚魔導書を手にし、異世界召喚を実行したのだろう。


 それにしても召喚魔導書……ハクはなかなかの人気者だ。

 それだけ国難の時なのか? セスは以前のように出仕した方が良いのでは?


「ココ?」

「ローズ?」

「えっ、はい?」


「ココ、犯人が身内からも出てしまい、怖い思いをさせたな」

「……あの美しい劇場が……せっかくの楽日だったのに残念です」


「本当に怖かった」と答えられず、変な返事になってしまった。


「ローズ、君がラナ見習いのヘクターの事を言ってくれなかったら……」

「セス様が教えてくれたから、魔法陣は攻撃対象と真横からは見えないと」

「ココ、それは上演前のあの時か?」

「はい、あの時です。国王陛下の横、私の正面にあの魔術師はいました……」


 セスが、椅子から立ち上がって礼をとった。


「陛下! 誠に申し訳ございません。私が気づかなくて……」

「ラムセス、あの会話は私も耳にしていた……席についてくれ」


 あれ、失言だった?

 セスは立ったまま顔を上げない……。


「ラムセス、食事を続けよう」


 国王陛下に促されセスは静かに席に着き、食事は再開された。


 国王陛下もセスも表情が暗いなぁ~。


「ココ、王宮の食事は合わないか?」

「えっ、いえ」

「そうか、随分軽く感じた」

「陛下、軽くとは?」

「昨日、ココを抱き上げた時だ……」


 昨日、抱き上げた? 昨日の記憶は曖昧なところが多いみたい。


「ラムセスには眠る事を、ココには食べる事を命ずる!」

「「えっ?」」

「陛下、ローズに無理に食べさせることはおやめください」


 うんうん、そうよっ。セスの言う通りよ!

 なぜなら、親が幼い私に無理に食べさせて、私は苦しくて全て吐き戻して、それが毎食・連日で最後は病院に運ばれる。それの連続で大変だった、今でも軽いトラウマなの。

 それに、満腹状態で咳が出ると苦しいし……だから、とにかく、やめて!


 私の少食がそんなに問題なの?

 セスが私の少食を責める事は無かったよね。


「私の少食は昔からで、だから栄養価を考えてバランスよく食事するように心がけています、本当は一日二食にしたいのを頑張って三食とっています、これ以上は無理です」

「ココ、先ほどからお皿の中身が減っていないではないか?」

「これは……もうお腹が……」

「陛下、ローズは自分のペースで食べるので大丈夫です。食事量の事で追い詰めないでください」


「ココ、もう少し食べよ!」


 食べ残すことを是とする国なのになぜ?

 国王陛下は私の食の自由を認めてくれないの?


 私はフォークとナイフを揃えて置いた。


「食事中ですが、本日は失礼させていただきます」

「ローズ……」

「ココ?」


「今後は、一人で食事を取ります」


 そう言って私は席を立った。


 失礼なのは理解している。とはいえ、先ほどまで安静にしていた身だ、このコテコテソースのお肉ドーンというメニューがそもそも謎だ。それに、何だか味がしない、美味しくない。食べ始めると不快になるお料理って、どういうこと?


 しかも、私より重症だったはずのセスがパクパク食べるから、余計に良くない。


 こういう時に基礎体力というか生きる力の差を思いしらされる。

 どんな時でも自分から栄養を取りに行ける人が羨ましい。


 国王陛下はいつも以上に変だし、セスの暗い顔も見たくない。


 ハクのところでお菓子を食べたし、お部屋に戻って、一人静かに白湯を飲んでいる方が心身の安定に繋がると思う。

 ハクの事も考えたい、頭の中を整理したい。


「おやすみなさい、国王陛下」

「おやすみなさい、セス様」


「ローズ、部屋まで送るから……」


 セスが近寄ってきて手を出した、私はその手を取らないことにした。


「ローズ?」

「セス様はお食事をお続けください、私は部屋で休みます。

 ヒース、お願いします」


 ヒースに手を取られ私はサロンダイニングを後にした。


 パタン!


 背中で扉が閉まった。


 セスが追いかけてこない事にホッとした。


「マイ・レディ? お加減が悪いのですか?」

「そうね、食事が辛くなりそう。弱っている時の食事は疲れるのよ、点滴で栄養を入れて欲しい」

「軽食を部屋へ運ばせますか?」

「前菜を少しいただいたから、夜だしこれ以上の食事はやめておきます。お茶の用意をお願いします。あと、ヒースとミヤ以外は部屋に入れないで欲しい」

「かしこまりました」


「ヒース、私の少食は病的かしら?」

「いえっ、ただ……前より少しお痩せになっていらっしゃるので……」


 体重計も無いのに?


「マイ・レディ、ドレスのサイズも合わなくなっていると報告が……」

「そう、それで……」


 夜の咳が落ち着いているのに痩せているなんて……。



 ※



 パタン!


 ローズの姿が見えなくなった。


 ローズからの拒絶に私は立ち尽くしていた。


「ラムセス……」

「陛下! なぜあのようにローズを追い詰めたのですか!」


 ローズが食事中に席を立つなんてことは、今までなかった。


「いやっ、ただ、ココは、もっと食べた方が良い」

「ローズは食べたいのです。もっと、モリモリと食べたいのです。フォンテーヌでお茶した時も、ケーキを全種類食べたいと言ったぐらいです。少食を自覚して色々と我慢するような性格です。

 今だって、この後に続く料理を考えて、自分の体調を考えて、ローズなりにペース配分していたのです」

「わかった、わかったからラムセス、落ち着いてくれ……」


「陛下、食事の持ち込みの許可をください」

「ああ、許可しよう」

「ヨハン、すぐランスのスープを届けさせろ、ヒースの食事としてローズの部屋へ運べ、ヒースにローズから離れないように伝えてくれ」

「かしこまりました」


「ローズがスープでもいいから飲んでくれれば……」

「ココの食事はそんなに大変なのか?」


 陛下の慌てる姿に、私はハッとした。かつての自分だ。


 ローズと暮らし始めた頃、ローズの極端な少食に驚いた私は食べさせようと試みた。ランスがそれを遮った「食事を楽しい時間にすれば、お嬢様は大丈夫です」と断言してくれた。それからだ、時間帯によってローズは口にする量を変える事に気づいた。


 私が陛下を責めることはできない。


「陛下、感情的になって申し訳ございません。

 ローズは、少食な上に味にも敏感です。夜は、もともとあまり量を口にしません。おそらく朝とお昼に無理して食事を取ったせいかと……」

「いや、昼もほとんど食べていなかった、それもあってだな……」


 ローズは、かなり調子が悪いのか?

 その時、ヨハンが「お嬢様のお皿をお調べください」と私に耳打ちした。


「なに、どういうことだ?」


 ローズの席にある皿に目をやった。

 今まさに給仕が皿を下げようとしている。


「待て!」

「ひぃ……失礼いたしました」


 私はローズの皿に鑑定術を展開した。


「ラムセス、どうした?」

「陛下、ローズの皿に……この系統は……痺れ薬か? 薬物が塗られています」

「どういうことだ、毒見係は何をしていた。全ての皿を調べろ」



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