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 ローズのカーテシーは新鮮で美しかった。でも、ローズのお辞儀の方が高貴さが増す、陛下もローズのお辞儀を評価していた。

 ローズにこちらのマナーを押し付ける必要があるのだろうか?

 ローズには最高爵位が与えられる、ローズがカーテシーする必要があるのは陛下だけになる、式次第を少し見直そう。


 ローズの身分が正式に発表されれば、ローズの周囲は騒がしくなる。

 自分の娘をローズの友達や侍女にと売り込む輩が、どんな手に出てくるかわからない。

 頭の良いローズに見合う令嬢がいるのだろうか? ローズの立場が、貴族令嬢とは全く違うことを理解できる令嬢がいるだろうか?


 ローズのドレス決めが終わって、ローズが着替えて戻ってきた。


「ローズ、少し話す時間をもらえる?」

「はい、セス様?」

「明日、王立アカデミーの試験を受けてもらいたい。午前中に4時間、お昼を挟んで午後に4時間の計8時間を予定している。ローズの体力も加味して4時間ずつ両日に分けることもできるけど?」

「両日に分けると、明日と明後日ということですか?」

「そうなる。その場合、明後日は午前に未成年後見人選定と爵位授与の儀で、午後に試験後半を受けてもらうことになる」

「明日、全ての試験を受けます……」


「ローズ?」

「毎日何かしら予定があるのは……多くの人に会うことになって苦手で……」

「そうだったね、予定が立て込んでしまったね。今後の予定はできるだけ調整するから」


 ローズは、小さく頷いた。


「ローズ、私からも召喚についての謝罪をさせて欲しい。そして、私は今まで以上に君を大切にするとを誓う」

「セス様からの謝罪はもう受け入れています」

「ローズ! それはいつ?」

「えっ、それは……セス様が優しくしてくれた時かな?」


 そう言ったローズは、くすっと笑った。


「セス様、丁寧な謝罪を何度もありがとうございました。セス様の心のこもった謝罪は既に受け入れております」

「ローズ! ありがとう」


 思わずローズを強く抱きしめた、サリがそれを見て飛んできた。


「旦那様! そんなに力を入れたらお嬢様の骨が、息が止まってしまいます」

「あ、ローズ……大丈夫?」

「……なんか息が止まりかけましたが……たぶん大丈夫です」


 私は慌てて手をほどき、ローズの背中をさすって髪を撫で指を絡めた。

 黒いサラサラの髪が指に触れる。


 私は、この少女が可愛くて仕方がない。

 ローズ、君はどんな風に甘えるの?


「旦那様、お茶の準備ができました。お嬢様をお離しください」


 ローズの髪から手を離すのが名残惜しい。


「セス様、お茶にしませんか?」

「ああ、ローズ。お茶にしよう」


 あ~、ローズが可愛すぎる。



 ※



「お嬢様、お目覚めください」

「レデイ・カグヤ、お目覚めの時刻でございます」


 あっ、朝かぁ。


「お嬢様?」

「……おはようございます、サリ、ミヤ」


 王宮で2回目の朝を迎えた。

 今日は確か、試験があったはず。


 まずは吸入を、吸入薬のカウンターは残44。


 朝食は自室で、試験はサロンダイニングに書類机が持ち込まれ行われた。


 王立アカデミー長官から、試験方法について説明を受けた。


 複数の試験官の前で、小学生レベルの国語・算数・理科・社会・外国語の記述式試験から始まり、徐々に科目も増え難しい内容の筆記試験が続いた。

 各科目毎に問題用紙、解答用紙、メモ用紙が置かれ、試験後には全て回収された。

 実技試験が無くて良かった。私にとって、スポーツは観るもの、音楽は聴くものだ……。


 お昼は、セスに連れられて自室に戻って、軽食を取った。

 1時間の短いお昼時間が終わると、セスに連れられサロンダイニングに戻った。


 午後は、超難解な論述式試験の後に、それに対する口頭試問も行われた。


 夕方5時、とりあえず試験が終わった。あ~、頭を使った。

 試験が終わり喜んだのは、セスだった。


 試験終了と同時にサロンダイニングの離れたところで書類仕事をしていたセスが、私の所まで飛んできた。


「ローズ、部屋まで運ぼう」

「いえ、歩けます」

「ローズが足りない!」

「…………」


 何を言っているのだ?


 そういえば、起きているときに4時間も離れていたのは久しぶりのような……。

 えっ、あれ? 三食一緒で食後のお茶も一緒で、その合間の二回のお茶と夜のお茶を共に過ごして、読書の時はセスも私の部屋にいて、外出時も隣で……。いつもエスコートしてくれるセスの手があって……。


 あれ? というか意外!

 朝晩、顔を合わせる程度の家族とさえ同じ家で過ごせなかった私が、一人が好きな私が、セスとそれだけ時間を過ごしていたなんて……。まぁ。


「ローズ、夕食まで、夕食も私の膝の上で過ごして欲しい」


 それにしても、大丈夫かな? この人。


「いえ、椅子に座りたいです」

「私の腕の中で過ごすというのは?」


「旦那様、お嬢様、お迎えにあがりました」


 ヨハンの登場で、色々な私の危機は去った。


 静かに息を吐きながら思った、色々と静かに考えたい、少し一人になりたい。

 少し困った優しい笑顔のセスと目が合った、う~言えない。



 夕食後、国王陛下とセスから、明日の未成年後見人選定と爵位授与の儀について簡単な説明があった。


 私は、ローズ・カグヤという名で永住権を取得し国王陛下が未成年後見人になる。

 国王陛下は未成年後見人の役割とされる、身上監護権・法定代理権・財産管理権のうち身上監護権をセスに委嘱する。それによりセスは、監護教育権、居所指定権、懲戒権、職業許可権を担うことになると説明された。


 うん、難しいぞっ……。


 要するに……私に関わる法的なやり取りは、国王陛下が決める。実際に生活を共にして、私の心身の安全や教育についての責任を持つのはセスということで……。

 召喚されてからの状況を法的に裏付けたということだろう、たぶん。


 その後、私はエティエンヌ公爵位を賜り貴族になると説明された。


 一瞬、貴族! と思考が停止した。

 その後、暗い気分になった。不安しかない。


「異国から来た15歳の少女が、功績もなく公爵位はおかしいです」

「ココ、この国には15歳で即位した国王もいる」


 あっ、そうだった。この国王陛下は、15歳で即位していた。


「ですがその国王陛下には、血統という確固たるものがありました」

「だが、それも継承順位第七位という低いものだ」


 いやいや、普通は継承権ないから……。


「何人もココに対して無礼を働かないように公爵位にする」


 いつも自信に満ち溢れている国王陛下だが、15歳での即位は風当たりが強かったのかな? だからと言って、国王への即位を引き合いに出されても筋違いだ。


「ローズ、以前から召喚された者には爵位を授与する予定でいた。今後のことは我々が全面的に手伝うから……、どうしても嫌だったら成人した時にまた考えよう、だから……」


 そうだ、私に選択・拒否権は無かった。


 ここは水槽の中かしら、息苦しい……。


 生活を共にするのが監護者だから、セスの暮らすフォード邸が私の過ごす場所だと説明された。

 でも、未成年後見人の国王陛下は、未成年被後見人の私に王宮に部屋を用意してくれるらしい。

 爵位に伴う拝領予定のホテルにも私の居住区を用意し改装を始めていると説明された。


 早く、ホテルの改装は終わらないかな? そこで少し一人になりたい。

 というか、永住権とホテルの一室をいただければ、それで……。

 成人まで生きていたら、是非そうしてもらおう。



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