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第144話 不可思議な状況


 お茶会で話したのはひたすらクエストで起きたことだった。

 道中や遺跡についての話はそれはもうウケた。

 

 この学園に滞在するという事は、将来的に多かれ少なかれ魔森林の開拓に直接、または間接的に関与する事になる。

 この学園のすぐ隣には魔森林があるが、敷地はデカい上に魔森林と接している個所は警備員が巡回して魔獣の侵入を監視しているため、実態の魔森林とはかけ離れている。


 やる気や向こう見ずな男子学生層はともかく、女子達は親の都合もあるのだろうが、実際に、安全を確保しづらい魔森林に足を踏み入れる女の子は少ない……のだろう。

 クエストをしている女の子はもっと少ない。

 長月トオコみたいにクエストをする必要が無い以上、そもそも富裕層が半分以上を占めるこの学園ではやらないのだろうが。

 

 とりあえず、お茶会で首無し騎士との戦闘を話した。

 改めて振り返る様に話をするが、魔獣が人型の場合の相性を再確認したようなものだった。

 とはいえ、過去一つ目のサイクロプスを見た時はうまく戦えるか疑問に思ったのも事実。

 となると、相手が重厚な鎧姿で人であることを強く意識するような見た目をしていたのが重要だったのかもしれない。

 

 遺跡の中で見た事聞いた事を話すたびに、隣にいるライリー=ローレンがたびたび詳細を聞いて来るのでそのたびに改めて深堀したり、どう剣を構えたのかを実際に試したり……逆の隣に座っている子(前も隣に座っていた、目隠れっ子)からも熱心に質問が来たて談笑しながら回答したり。

 それでいて美味しい紅茶をご用意致しましたとか言われたら、紅茶もお菓子も食べなくてはと、まるで戦闘をしているかのように目まぐるしく動いた。


 他のグループもいる中で剣を疑似的に構えるのは正直恥ずかしく、実は苛めなんじゃないかこれは!? とも。

 ……まぁ、このグループ以外の、他のグループの子も目を輝かせてみていたように見えたのが救いか。

 お遊戯会を開いているかのような気持ちに襲われかけた。


「ふぅ……」


 結局、終始クエストの話で終わってしまった。

 

 熱気が終始こもりっぱなしであった私たちのグループがこの部屋に最後まで残ったグループとなり、時間を告げられて慌ただしく閉会となった。

 その後は、お茶会が行える部屋の近くにあった椅子で休んでいる。

 ……ちょっと飲み過ぎと食べ過ぎが、ね。

 予定よりも遅くなったので神楽が心配しているかもしれない。

 

 しかし、何処かのタイミングでラブレターの話が出るのかと思ったのだけれど……不自然なほど話題に出なかった。


「極一部を除いて情報は知ってそうだったけどなぁ……」


 今は動きたくないので、学園の質の良い椅子に深く座りながら先ほどまでの全員の様子を思い出す。

 話題に出なかっただけで、全員が何かしら聞きたそうにアイコンタクトやもどかしそうな表情をする時があったのをチラチラ見かけている。


 その中で、まったくそういう様子を見せなかったのは。


「あら、メルベリ様。まだお帰りにはなられていなかったのですね」

「ローレン」


 そう、このライリー=ローレンと、その後ろを従者のように歩く目隠れっ子だけだった。

 完璧な一礼を見せられて思わず立ち上がりそうになったが、どうぞそのままでという声で立つことはしない。

 背筋は誰かが近づく気配を感じた時にきっちりと伸ばした。


「今回も誘ってくれてありがとうございます。楽しめました」

「そういって頂けると私たちも喜ばしいのですわ。あのグループのメンバーは全員、メルベリ様の冒険譚を聞くのが大好きですから。今後も是非ともお話をお聞かせくださいませ」


 そうはいってもね、という思いが苦笑となって現れる。


「私も学生ですから、そう頻繁に今回みたいな面白い話は出来ませんよ」


今回のようなイベントが毎回起きていると思われるのは流石に困る。

 

「前もお話していただきましたが、過去の話でも構いませんし、そもそも何もないクエストでも良いのです」


 思い出すようにうっとりと目を閉じる。


「魔獣との闘いも、私たちはまだ学生の身。真剣に死と向き合う、生の環境に身を置き続けたことは無いのですから、メルベリ様のお話は常に値千金となりますもの」

「うーん、すぐに話すネタが切れてしまいそうですね……困りました」


 実際に困った表情を見せながら言えば、ライリー=ローレンは慌てたように手を振る。


「いえ、いえいえ! 困らせる意図は御座いませんでしたが……確かに、先週から続いてお誘いをし続け、あまつさえずっとお話をさせて頂いているこの状況は……確かに良い関係では御座いませんわ!」


 くぅ、私としたがなんて無様を、という声が小さく聞こえてうつむくと同時、目隠れっ子がそっと、ライリー=ローレンに耳打ちをすると、すぐに頭を振って悔やんだ様子を消してみせた。


「……失礼致しました。私たちのお誘いそのものに問題があることがわかりましたので、少なくとも明日はお休みさせていただいてもよろしいでしょうか」

「問題ありませんよ。私は誘って頂いている側なので……」

「メルベリ様のご意見が一番ですので! ……それでは、遅くまでお時間を頂いてしまって申し訳御座いませんでした」

「いえ。私は楽しかったですから……ありがとうございます」


 お互いに礼を告げれば、二人はあっさりと翻って去っていく。

 放課後から時間が結構すぎている。長話をするようなタイミングではなかったのだろう。

 ライリー=ローレンとだけ喋っていたが、腕を組み、ううむ、と唸る。


「やっぱり不思議だよなぁ」


 あんだけ感情が表に出る子なのだ、ラブレターの話題を聞いたら確実に聞いて来るだろうに。

 

 やはり、ライリー=ローレンと恐らくその友達である目隠れっ子は、ラブレターの件を何らかの理由で知らないように見えた。 

 

次の更新は引き続き土曜深夜となります。

なお、来週投稿後はいったん2月は投稿停止、3月再開見込みとなりますー。

(でも区切りよく終わりそうにないorz)

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