第141話 お手紙
かなり忙しい休日となったな、というのが朝起きて、日頃の日課で剣を振っている時に思った事だ。
ロウボアの討伐かと思っていたら遺跡へのクエストになってしまい、そこに居た大ボスっぽい首無し騎士という魔獣と戦い、しかも遺跡へのクエストが原作イベントで泣く泣く神楽とは別れて街に戻ったらお世話になった少女の病気を緩和させる事が出来た……という激動の休日である。
まぁその次の日は特に何も無い休日だったけれど。
ひたすらゼン様と神楽が過ごしたわくわくピクニックイベントの話を根掘り葉掘り聞いていたぐらいだ。
どうやら遺跡の侵入自体はあの後はせずに、地上付近で過ごしていたようだ。
元々気分転換に普段見ない光景を神楽に見せるというイベントだったわけだし、まぁ陰鬱な遺跡にはそりゃ入らないか。
その後は適当に運動を切り上げると、神楽と共に朝食やら洗顔やら色々を済ませ、制服へと(自分は改めて)着替えて学園へと向かう。
二人して外に出れば、気持ちのいい朝日が照らしていた。
寮の廊下では静かだった人達も、エントランスを抜ければお喋りが混じり始める。
「楽しかった休日ですね!」
「アタシには大変な休日だったよ」
「オリヴィアさんも一緒に来たら良かったのに」
それは何度思った事か。
「流石にクエストの途中で切り上げるのはね。アタシ的によろしくなかったから」
「……でしたら、その心底悔しそうな表情は」
「ぬぅ」
本心は顔に出る。
朝の学園への道は生徒に追い抜かれたり追い抜いたり、中々騒がしい。
寮済みの人達はだいたい二人一組、あるいはそれより多くの人数で歩くのを見かける。
同じ寮に気の合う友人達がいるのなら、登校も楽しかろう。
といっても、すぐに学園に到着してしまうのだけれど。
途中でクラリッサも見かけたけれど、何だか隣の子と夢中に話していたから特に話し掛けず。
学園へと着く頃になると猫かぶりモードに移行する。
切り替えてやってきたクラスメイトに挨拶しても、神楽は特に何も言わないぐらい慣れたものである。
休日にあんな濃い体験があったのだから、週初めぐらいは何も無いだろうと高をくくっていたのだろう。
だから、最初見かけたときは何か嘘かと思ったのだ。
「ん?」
教室の後ろには個人ロッカーが存在する。
地味に魔道具で個人認証して解除出来る高性能なものだ。
基本的には野外実習用の服が入っている。
あとは流石に持ち帰っても勉強出来ないだろうという教科書類は不勉強にも仕舞っていたりするのだけれど……。
「んー?」
教科書の上にちょこんと乗っかっている、シンプルな白色の紙の封筒。
ロッカーの上方には投入口があるから、そこから入れられたのだろう。
取り出して見てみる。
学生や気心の知れた友人同士で渡し合うような、ちょっと可愛らしいサイズの封筒である。
口を止めているのは封蝋だ。
この国の貴族やお偉いさんが使うものだが……。
「何だろう、これ」
思わず素に戻ってぼそりと呟く。
その封蝋の模様は……何処か見覚えがある。
記憶を振り返ってみても、自分が何かやったような記憶は無い。
自席に戻って読んでみる。
手紙には、差出人の名前は無い。
封蝋を剥がすと、これまたシンプルな便箋だ。
字は綺麗。
恐らく女子が書いた文字……に見える。
中身は……?
ふむ、と読む。
かなり婉曲な表現をされているが、前から気になっていたのでお付き合いして頂きたい、みたいな感じだ。
貴族とか、お偉いさんの娘さんが書いたりするような文体な気がする。
アタシとは縁が無い感じがする。
「……実はやっぱり男性だったり?」
そんなことは無いか。
心の準備も含めてか知らないが、会いたいと記載されている日付は明後日の放課後となっていた。
最後まで読んでも誰かはわからなかった。
しかし、これって……。
「それって……ラブレター、ですか?」
呟いたのはアタシじゃ無い。
振り返ると、見てしまったという表情をしたクラリッサがそこにいた。
――――そして、クラリッサの言葉に、教室が一瞬ザワリと震えたような気がした。
深夜更新です。
次の更新は今週の土曜日です。連休が短いので。




