第139話 再びの少女
街へと向かうと、まずは公衆浴場でさっぱりとする。
替えの服は無いものの、そのままで居るよりかはマシと思う事にする。
過去、公衆浴場で替えの服を忘れて涙目になっていたアタシはもはやいないのだ。
セーフティハウスで洗えば良かったかと思うものの、あの施設にシャワーなんてあっただろうかと今更思う。
少なくとも料理のために魔導具を使って水が出せたり火が出せる仕組みがあったが、あれらは定期的に魔力の補充が必要のはずで、体を洗う場所は無かったかもしれない。
格好そのものは土埃などで汚れた状態であるため、お店の中には流石に入らない。
特にそういう制限は無いのだけれど、まぁマナーというものだ。
開拓者御用達の道具店はまぁ問題無く入れる。
……あそこは臭いがきついから、別の意味で入りたくない。
乙女ゲーの世界観の一つなのだから、もうちょいフローラルな臭いにして欲しかった。
いや、原作では基本学園の物語なので、そういう設定は考慮していなかったんだと思うけれども。
ふらふらと道を歩く。
道行く人達はみな楽しそうだ。
子供達が元気に走り回り、カップルがテラス席で何か笑いながら話し合っている。
大きめの馬車がガラガラと大量の荷を引っ張りながらアタシを後ろから追い越していった。
区切られた道路なんてものは無いので、所謂徐行運転みたいな速度でゆっくりと追い越されていく。
近場に魔森林があり、魔獣が街に侵入してくるのもたびたびあるのにそれを感じさせずに過ごしていて逞しいことだと毎回思っている気がする。
何時もの道でケーキを取り扱っているお店の前で立ち止まる。
店番の人はお兄さんではなくお姉さんだ。
まぁお店の中で働いているのだとは思うけれど。
「あ、これ美味しそう……」
「こんにちは。今日はクエスト帰りですか? お疲れ様です」
こんにちは、と馴染みの女性店員に返事をしつつ、商品を眺める。
お店の外から見たり買ったりする分には問題は無いかなと勝手に思っている。。
むしろ、開拓者クエストをこなした後はお腹が空いているので狙い目すらあるのではと。
馴染みのお店も増えて、こうして店員と顔見知りになってくる場所も増えた。
街に来る度に少しずつ知られていく事が増えていくのが少し心地よい。
「はい。終わってみれば短かったかもしれないですが、くたくたです。今日は……このシンプルないちごの載ったショートケーキでお願いします」
「おおー。何時もは見ているだけでしたけど、今日は買っていくんですね」
「今回は遺跡の探索でして。それでたんまり貰えましたので奮発しました」
「それは素晴らしい! ……クエスト、危なくなかったですか?」
あ、外の席で食べます、と言いながらさてどう答えるか。
不安そうな顔を変に曇らせたくは無い。
「ええっと……ちょっとだけ危なかったかもしれないですね。私は大丈夫でした」
「……今大量発生しているロウボアの討伐でも、やっぱり怪我をされてる方が多くて。開拓者って大変ですけど、本当に怪我にはご注意くださいね?」
「はい」
「よろしい! ではお代を頂きますねー」
貰ったばかりの金貨を銀貨と銅貨に細切れにしてもらい、綺麗な白いお皿と共にショートケーキを貰う。
お店の前にちょこんと用意された席について食べ始めてほっと一息を吐く。
食事は、しばらくはお金を掛けても良いというのが素晴らしい。
学園のカフェでも美味しい物を今度食べよう。
あそこは金額設定が高いので、何時も安めにしているから。
直ぐに食べるのも勿体ないとのんびりと食べていると、こちらにテクテクと近寄ってくる小柄な人影。
特に気にせず食べようかと思っていた。が。
「おねーちゃん?」
「ん? ……あら、また会ったわね」
会ったのは、何度か出会った少女だった。
体が弱いとは前に聞いているけれど、何時も一人で出歩いてないか、この子。
「今日も一人?」
「ううん。シズエさんが後から来るの! だから一人じゃ無いの!」
シズエさん……確か、お世話をしてもらっているお家の人だったか。
見た限り、まだ姿は見えない。
待ち合わせでもしているのだろうか。
「そうなんだ。じゃあ私とちょっとゆっくり待つ?」
「うん!」
元気で良い事だ。
店員さんに、この子の為に新たな注文をしようと手をあげて呼ぶ。
そうして、少女がとてて、と走ってくる……と、ずばしぃ! という擬音が似合うぐらいの転け方をする。
慌てて店員さんと一緒に駆け寄るが……。
「く、うう……」
……苦しそうに、呻きだした。
次の更新は31日、年越しの土曜となるかもしれません。
24日はSEKIR○ボスラッシュなどをやって深夜3時まで気を紛らわせる遊びをしているので、多分投稿は無理です。




