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第138話 クエストの終わりに


 それから何度かリーダー達が往復して首無し騎士の素材を回収した後、私たちは普通に撤退した。

 なお、アランの話の後に食べたお肉は美味しかったのだが……一体何の肉を使っていたのかを教えてくれなかったのが気がかりだった。

 魔獣の肉もあるにはあるのだが、あれは意外と高いのだ……美味しいものは。

 こんな場所で食べられるお肉でそんな高いものは無いはずなのだけれど。

 ロウボアの肉なら大量発生している今は安いはず。つまり入手しやすいし、このお肉はロウボア……と思っていたのだが、周辺の開拓者がロウボアとは違うな、という話をしていたのを聞いたので全くわからない事となった。


 そんなこんなで、セーフティハウスを去ったのはお昼時を過ぎてからだった。

 朝からかなりハードモードをこなしたなと思いつつ、回収した素材でギチギチになった馬車――多くの開拓者はそんな中でも眠っていた――にゆっくりと揺られる事しばし。

 

 アタシ達は、無事ヨルム王国の街へと戻ってくることが出来たのだった。



 

「きょ、今日はありがとう……。朝は急に誘ったから……迷惑かけたかなって……」


 ジェラルの言葉に、ひらひらと手を翳して気にしないでと伝える。

 ただ、振ったその手の反動で、アタシの背中からチャリチャリと音がする。

 勿論、武器が擦れる音ではない。

 

「逆にありがたかったわ。巨大な魔獣と戦えて良い経験が出来たし、初めての遺跡は興味深い景色ばかりでしたし、お金も予想外にいっぱい貰えましたから」


 仲介所へと戻ると、リーダーと随伴していた仲介所の職員の説明に加え、首無し騎士の討伐した証しである素材が揃っていたことで難易度上昇分の金額が加算され、かなり良いプラスの収支になったのだ。

 それほど危険な魔獣であるのかと改めて唸った程だ。

 それに加え……。


「首無し騎士の素材報酬……」

「うん」

 

 それとは別に首無し騎士の素材報酬だ。

 これは意図したものではなかったのだけれど、これの売買による報酬の8割がアタシに来ることになった。

 流石に素材の回収にアタシが関わっておらず、というか価値すら認識していなかったがため、こんな状態ではお金を貰えないとリーダーと交渉したのだ。

 彼ら彼女らがいなければ、この金額になることは無かったのだから、アタシが持つのはおかしい、と。

 

 そう話すと、ならせめて君と俺たちと半々で、という事になった。

 魔道具の売買による収益はあっても正直助かる、とはリーダーの言だ。


「お前もおかしなことするよな。普通は減額交渉なんてしねぇって」


 アランがほとほと呆れたような表情をしている。

 ……セーフティハウスでお肉を食べている時は避けられているような、引かれているような感覚があったけれど……今はそうは見えない。

 

「あの程度しか作業していなかったのに、その素材報酬で8割貰う、なんてできませんよ」

「あの程度、ねぇ……」


 そう呟いてジェラルと顔を合わせると、肩を竦めた。

 お金を余計に貰えんなら貰っておけよ、というアランの言葉には、今度はこちらが肩を竦めて流させてもらった。

 

「お、俺たちも、装備を買い替えた分がすぐに補充出来て、よ、良かったよ……」

「あんだけ頑張って貯めた分が一気に戻ってきたのはちょっと気持ち悪いけどな」

「それこそ、良かったのでは。余裕があるなら無茶なクエストをしないようになると思いますしね」

「しばらくはひ、暇出来そうだね……」


 二人は、袋を揺らして嬉しそうに音を確かめる。

 そうして笑い合った姿は、確かに開拓者という感じがするなぁ。

 かくいうアタシも、体を揺らすと聞こえてくる金貨の音にはニコニコしてしまうが。


「私もしばらくは余裕のある生活が出来そう」

「なんだ。メルベリは光栄宮学園に通ってるお嬢様なのにお金に余裕が無いのか……って、そういや金欠って言ってたな」


 思い出すように空を見るアラン。

 確かに、そんな話を出会った当初にしたような気がする。


「学園から貰ってるお金だと日常を可もなく不可も無く過ごせるぐらいだから、こういう時に入ったお金は貯めておかないと」

「珍しく堅実だな。学園に通ってる奴は違うな」


 このアランの言葉には裏が無く、言葉の意味のまま受け取ってもよさそうだ。

 特にこちらを貶そうという意思は見えない。

 開拓者は何時死ぬかわからないということで、欲しい武器とかの目安が無ければあまり貯めないのかもしれない。


「それでは、私はこの辺で。お風呂にでも寄って、街の中でも散策することにします」

「あれだけ動いてま、まだ体力があるんだ……お、俺たちはもうそのまま家に戻って寝るよ……」

「お前ほど動いてねぇはずなんだけどな……ちょっと体が重いわ」


 疲れた、というジェラルとアランの顔は、確かに疲労が溜まっているように見える。

 自分の力量よりも遥か上の敵がいる戦場に長く居たのだ、そりゃ精神の摩耗は起こる。

 一歩間違えれば全滅していたのだから、アタシだってそんな状況になったら疲れるに決まっている。


 

 お互いにまた元気で、と挨拶を交わすと、アタシたちはクエスト仲介所の前で別れたのだった。 

次の更新は次の土曜深夜ですー。

来年は完結させたいところですが……(当初は100話は超えないだろうと思っていた

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