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第135話 イベント確定

 結論から言えば、ここでゼン様と神楽が来たのは原作イベントで間違いないだろう。


 ちょっとした茂みをばっさりと切って切り開いた先、見えたのはミステリーサークル……のように円形に生えそろっている、一種類の花である。

 思わず見つけた瞬間固まってしまった。

 そして、神楽が横からひょっこりと顔を出して、驚いたような声を出す。


「うわぁ……こんな風に綺麗に円形になっているなんて、面白い! とても不思議ですねぇ!」

「そうね……」


 見覚えのある景色だ。

 といっても、アタシが見たのは一枚絵なのだけれど。

 

 ジャイルズが神楽と周辺をフラつくと見つけるイベントである。

 神楽が面白いのがある、と声をあげてジャイルズと共に見に行くイベントであり、ジャイルズの悩みを大きく変えるイベントだ。

 

 一面、柔らかい黄色い花が生い茂っている。

 前世なら実にSNS映えすることだろう間違いなしだ。

 縁取りしたかのように美しい円を描き、元気よく空へと背を伸ばしている。

 

 そんな景色を前に、神楽が声をあげてミステリーサークルの中央へと駆け走る。

 そうすると、花びらがヒラヒラと散って少しだけ幻想的な風景が加速した。

 原作の一枚絵だと、ジャイルズがこのミステリーサークルの中央にいて、目を輝かせながら、外側にいる神楽に話し掛けるのだけれど。


「魔森林だから、周辺の魔獣には気をつけてよ」

「はい!」


 今回は、神楽が目を輝かせながらこちらへと視線を向けてくる。

 魔森林の中にいるため、気を張り詰めてはいるが、今のところ何かいそうな気配は無かった。

 花の背丈も、太ももより下ぐらいのサイズしかないため、まぁ何か潜んでても蛇ぐらいだろう。

 

「あと、一応貴重な薬草だから、あまり踏まないようにね。別に踏まれてても問題無かったと思うけれど」

「え!?」


 後出しで告げると、神楽が慎重に、今まで歩いてきた所だけを通って戻ってきた。

 原作主人公が、ちょっとしゅんとした表情で戻ってくるのは中々新鮮味がある。

 時々、寮内でお茶を零したときに見るぐらいだから。


「先に言ってくださいよ……」

「神楽が思ったより早く駆け出しちゃったから、ちょっと見てようかなって」

「いじわるですねっ」


 神楽をいなしながらしゃがむと、花を一本ちぎる。

 確か、貴重な物ではあるものの、あまり量が必要になるものではなかったはずだ。

 必須の患者の絶対数は少ない上に、乾燥させて使うので保存がきく。

 

 この薬草が何に繋がるかというと、ジャイルズの妹の病に繋がる。

 

 ジャイルズの妹は、魔法を感知するための魔感知力が異常過敏になる病に冒されているという設定がある。

 

 魔感知力過剰反応とか、そういう類いの名前だったとは思うけれど、妹さんの病気そのものはがっつりストーリーに絡む物では無かったため、具体的な情報は知らない。

 確か、発症から年単位で継続しては自然治癒する事があるものの、子供が発症すると衰弱が激しく、命を奪う事がある病なのだ。

 発症そのものが希な病気であり、また薬草となる花自体が見つかる事も希なため、中々流通することが無い。

 ジャイルズの妹は、不幸にも小さいうちに発症してしまったというわけだ。 

 

 フィオレンティーノ・ジャイルズとしてユピ神国からここ、ヨルム王国へと来ているのは何も神楽が関わる任務の為だけじゃない。

 この薬草が最も手に入る可能性があるのがヨルム王国である、という理由もある。

 植生が滅茶苦茶な魔森林ならば、季節を問わず見つかる可能性がある。

 まだヨルム王国ならば、民間の市場に少量でも流れる可能性があるからとか何とか。


 ジャイルズルートだと、ここで妹の治療に役立つ薬草が手に入り、肩の荷が一つ軽くなる……という話が出る。

 この薬草により病が治るというわけではないが、発症した際に影響を弱めることが出来るため、体力を得るための……成長するための時間を獲得出来るというわけだ。

 

 運が避ければこの薬草に頼らなくても生きていられるが、誰も分の悪い賭けをしたくはないだろう。

 何時起きるかわからない発作と、今回はダメかもしれないという恐怖心は想像するだけで身震いが起きる。


「この薬草はどうするんですか?」

「一帯を全部持ち帰ろうかな」

「一帯!? 貴重なんですよね!? 取り尽くしちゃっていいんですか!?」


 神楽が驚く。

 まぁそりゃそうだろうけれど。

 先の一本に加え、幾つか、先んじて自分の手でぶちぶちと引っこ抜いて、小さな鞄に入れていく。

 

「この花、残ってるからその周辺から花が咲く、みたいな事は全く無くてさ。残しておいても不思議とそのうち消えちゃうんだって。育てる方法すらわかってないみたいだし、そういうのも珍しさに拍車をかけているらしいよ」

「なるほど……」

「ま、こんだけあればしばらく余裕でしょ」

 

 ひとまず、ここの回収はゼン様に依頼してみることにしよう。

 そう神楽に告げて、アタシ達は遺跡の前へと戻ることにした。

 ……今回のゼン様と神楽の遭遇イベントが、結局原作イベントだったことに、若干肩を落としながら。

次の更新は引き続き土曜深夜ですねー。

シナリオを少し考え直したいので、何処かでまた一ヶ月時間をとってみるかもしれませんね。

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