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第132話 トドメの二撃


「はあああ!!!」


 相手の掬い上げに()()

 そのまま受けるのでなくて、自らの剣を台座にするかの如く横にして受ける。

 曲芸染みた動き。

 肉体が受ける衝撃は並大抵の物では無かった。


「――!」


 受ける過負荷を食いしばって耐える。

 時間にして秒あるかないか。

 視界が高速で過ぎ去り、浮遊感。

 首無し騎士の剣によって掬い上げられたアタシの体は一瞬にして天井へと叩きつけられる――――無論、そんな無様な真似を晒すわけもなく、天井に着地する。

 

 見上げた地上にいる騎士はこちらを注視はしているが、下にいる他の開拓者を気にしている。

 攻撃があまり利かないし、アタシとの戦闘中はアタシしか注視していないが、決して完全に無視しきれるわけではないようだ。

 優先順位的には魔法、アタシ、開拓者達といったところだろう。

 アタシという存在を殺したと思ったのか、視界が360°あるわけじゃないのかはわからない。けれども、アタシを打ち上げた流れで振りかぶった大剣をそのまま開拓者達へと振り下ろしていた。

 完全なフリーとなったアタシ。

 そんなアタシが天井に着地するや否や、地上からカガネの声が響いていた。

 

「ちゃんと受け止めてよっ!」

「了っ解!」


 素早く詠唱をこなすと同時、魔法発動のキーとなる言葉が放たれる。

 

「――――ファイアアロー!」

 

 同時、アタシは天井を勢いよく蹴った――――剣を頭上に突き差すよう構えて。


 目の前で速度の違う、複数の魔法の矢が飛んでいく。

 幾つかは今まで通り、敵の上体へと向かう。

 

 魔法に対しては過剰ともいえる反応で盾を構えて迎え撃つ。

 幾本もの魔法が火を散らし、雲散霧消して消えていく。

 盾に焦げ目だけを残して。

 

 そして、魔法の数本は的外れのごとく、首無し騎士の更に上へと飛んでいき、それは見逃される。

 ……だが、その魔法の目的は首無し騎士じゃない。

 ちょうど、アタシの落下位置の先に魔法の火矢とも言うべきものが飛び込んできた。

 速度調整は難しいと言っていたから、予備で放った魔法とすれ違いつつ、一つの魔法の火矢に触れる。 

 赤く光を放つ魔法へと剣先が触れると、素早く響く、エンチャントと叫んだカガネの声。


 次の瞬間、剣全体がボウと音を立てて、剣先から火花が走って火を纏う。

 赤く照らされているのに、アタシ自身は不思議と熱くは無い。

 その瞬間に上を向いたかのような仕草をした首無し騎士だが――。


「遅いっ!」


 一本の赤い光条とアタシが、首無し騎士の首部分、鈍く光る切断部へと突き刺さる。


「――――――――!!!!」


 魔獣があげる、声なき叫び声。

 天井を蹴った勢い、重力に全体重が乗った剣は抵抗らしい抵抗を感じる事無く、剣の根元まで一気に突き刺さり――次の瞬間には差し込んだ先から火を噴き始める。

 その熱風が顔を――。


「って熱っ!?」


 さっきまで熱くなかったのに!?

 火に炙られてはたまらないとばかりに剣を手放して首無し騎士の体を駆け下りると、下に居た開拓者達に手招きされたので転がるように駆け込んだ。


「やったな嬢ちゃん!」

「あれは致命傷だろう、まさか上手くいくとはな……!」

「カガネさんのエンチャントが決まって良かったです」


 振り返れば、首から火を更に噴き出しながら藻掻き苦しむ魔獣の姿。

 盾が放り投げられ、頭上を越えて壁に激突し、大剣をブンブンと意味も無く空中に振り回している。

 

「メルベリちゃーん!」

「カガネさん……!? まだ危ないですよ!」

「あれは死んだでしょー流石に!」


 駆け込んできたのはアタシだけでなかったようで、カガネに抱きつかれて無事で良かったー上手くいって良かったーと零している。

 タイミングは全てカガネ任せだったから、それはそれはプレッシャーがあった事だろう。


「……おい待てよ!? まだ倒れねぇのかよ!?」


 と、切羽詰まったようなアランの声に、慌てて魔獣へと振り返る。

 と。そこには。

 

 首から火を噴きながらも、大剣を振り回し、こちらへと歩き出した首無し騎士の姿が!


「ぶ、武器をくださいっあ、アタシは丸腰だと何も出来ませんよっ!」

「クソが!? 最後くらいさっさと死ね!」

「お前ら、正念場だ、ここで死んだら笑い事だぞっ! 気張れ!」

「え、ええ!? どうしてこうなっちゃうの!?」


 全員が改めて気合いを入れ直し、アタシもとりあえず欠け始めた剣を借り受けて首無し騎士へと向き直った!



 その瞬間だった。

 


 カガネや一部の開拓者がばっと、注意を首無し騎士の後ろへと向けた気がした。

 

 と同時、首無し騎士の後ろから氷のツララが幾つも幾つも地面から飛び出しながら、首無し騎士へと迫る。

 驚く間もなく次の瞬間には首無し騎士の足下に氷が到着し、纏わり付くように氷が上っていく。

 氷が瞬時にその動きを封じ込め、魔獣の体が嘘のように一気に凍り付き始める。

 ヒヤリとした空気がこちらに押し出されたような気がした。

 

 だが、首無し騎士もただやられる事もなく、大剣を振り回して氷を砕こうとするが……。

 体が自由になるよりも早く、新たにやってきた人物が、魔獣の体表に付いた氷を駆け上って首元へと辿り着くと、火を噴いている切断面に新たな()を差し込んだ。


「――――」


 瞬間、火が消えると同時、爆発したかのように体中から氷のツララを生やして――――首無し騎士は、大剣を掲げた状態のまま、動かぬ氷像となった。

 大きな空間が、シンと静まり返った。

 冷たい空気は、今や、目の前から限りなくやってくる。

 

 事を成し遂げた人物が危なげなく魔獣から飛び降りると、こちらへとゆっくり歩いてくる。

 

 全員が警戒しているが……こんな事が出来る人物、アタシとしては一人しか知らない。

 よって、警戒する開拓者達をかき分けて前面へと飛び出して相対する。

 目が合った。


「――――首無し騎士か。こんな遺跡に出てくるとはな。魔獣の生息区域は予測しづらいな物だな、メルベリ」

「ぜ、ぜぜゼン様ァ!?」


 唐突に現れた香月院ゼン様に、アタシは素っ頓狂な声を上げたのだった。

 

かなり遅れてしまいました。執筆している最中に寝落ちしたのが痛かったです!

ということで、次の更新は引き続き来週の土曜深夜です!

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