第131話 vs首無し騎士 3
主人公視点です。
一撃、二撃と景気よく捌き続ける。
一歩だけ後ろへ歩く。
その瞬間、目の前を鉄塊が通り過ぎた。
首無し騎士の大剣だ。
ごう、という小さい音と共に風が髪の毛を揺らした。
物量で圧し潰すことを主眼とした分厚い刃が、瞬きよりも短い時間で通り過ぎていった。この振り抜きの速度なら突きへと移行することは無いだろう。
相手の剣筋は十分に読めるほど時間を掛けた。
ざっと相手の剣の状態を見た感じ、あと数時間も戦えば根元から折れるなりなんなりしそうだ。
折れれば流石にこちらの勝利だろう。
翻って自分の剣はとちらりと見るが、相も変わらず問題なさそう。
頑強なだけが取り柄のこの長剣は、やはり冒険で大活躍してくれる。たまに研ぎに出しもするが、さっと磨かれて帰ってくるだけだ。やれることが握りの調整ぐらい、とは以前対応してもらった鍛冶屋の言葉である。
相手は大振りなスタイルは鳴りを潜め、小ぶりな振りをメインにし始めている。
何度もこちらがいなしていった結果、今のままではだめだと思われたのだろう。
アタシとしてはかなり助かる。
手首で振るかのような挙動はしかし、大剣に力が乗らない事に他ならない。
剣の振りが結果的に増えることで後ろから聞こえる驚きの悲鳴は多くなったが、体力を消耗せずにサクサク捌けるようになったので良いことだ。
種別はレイピアでも刀でも無く大剣であるがゆえ、取れる行動はそう変わらない。
突きが織り交ぜられてきたがこれも踏み込みをしてこないため、たぶん普通の冒険者でも吹き飛ばされるぐらいで済む。
相手の大剣は突きに秀でた性能を持っていないのだ。
なお、時折来る大振りの一撃は、今となっては狙うべき一撃である。
大振りを放つパターンは読めた。
こちらが一歩下がって回避したところで、すぐに斜め下から切り上げが雷のようにジグザグと飛んでくる。そこにそっと置くように剣をぶつけてあげれば、何もない空をもう何度目かわからないが大剣が切り裂いていく。
それを見て踏み込み、ソードブレイカーを意識するように剣の腹が見えた瞬間に突きこもうとすれば、すかさず盾が割り入る。
これも慣れたものだ。
相手の盾には無数の傷がある。
古い傷ばかりだが、中心に絞ってみれば真新しい傷に置き換わりつつあった。
聞き飽きてきた甲高い音と共に、自分の攻撃の反動を使って一気に――――意図的に距離をとった。
「さぁ、来なさいな――――」
こちらがニヤリと笑っても、魔獣はそれがどういう意味かわからないだろう。
――――活路は見えた。後はタイミング次第、といったところである。
時間さえ掛ければ、武器破損という手段で相手の戦闘能力を下げられることがわかってはいるが、だからといってそれに付き合う必要はない。
曲がるだけで終わる事だって十分にある。それなら狙ったって旨味はそれほどでも無い。
要は、首無し騎士の上部。
弱点らしい弱点を持たないかのように見えたが、ある特定部位へと攻撃が近づくと途端に防御行為を取る。
――――それは首だ。
首そのものは無いが、首があった個所には黒く、鈍く光る切断部分が見えている。
首が無くなったことで弱点らしい弱点が無いかと思われたが、どうやら首が弱点という事を克服できたわけではなかったらしい。
ここへ魔法が到達しそうになると防御姿勢になる様子が見られた。
ただ、厄介な事に、単純に弓矢を打ち込んだ限りでは何の反応も見られず、金属ではないが固い殻に弾かれたような音をして数本の矢をダメにしている。
首が弱点ではないか、ということは他のメンバにも告げている。
弱点を後生大事に自分だけに取っておいたって碌な事が無い。
「それならいけるかもしれない!」
と開拓者の一人が意気揚々として弓矢を放った結果、少なくともただの弓矢では効果が無いらしいことがわかったのだが。
その後、戦闘をしながら堂々とその場で作戦会議をして――魔獣は人の言葉がわからないので隠す必要が無い――難色を示されたものの許可された、この戦いに決着をつける方法。
盾に攻撃した勢いを利用して、相手が空振りしても十分に対応できる距離まで弾かれるように下がった。
それを合図と見て、部屋の空気が変わる。
固唾をのむ音。
アタシからすれば即座に攻撃に移せるポジションではない、不利な位置。
巨体の様子が変わる。
足を引き、腕を絞る。
期待していた、大振りの、それも掬い上げるかのような一撃――!
「カガネ!」
「準備はばっちり!」
一気に踏み込む。
強固な床をガリガリと擦りながら、大剣が目の前へと迫りくる。
これまでなら、ただ側面から剣を叩いて終わり、だが――――!
ぐっと踏み込むと、アタシは一気に飛び上がった――――相手の剣線上へと飛び込むように。
ぐぬぬ、時間が……。次回決着となります。きっと。
次回は土曜……土曜深夜になります。




