第130話 vs首無し騎士 2
side - 開拓者の一人
これだけ体格差があるとまともな戦いにならない、と誰もが当初は思った。
初撃は女性の開拓者が防いだが、多くの開拓者達はそれが何度も続くとは期待していなかった。
人間の身長の倍以上もある剣は剣筋を持って悠々と振るわれ、押し出すだけで風圧を生み出すほどの大きな盾を軽々と扱う首無し騎士の魔獣。
既に助けを呼びに行っている連中は助かるだろうが、ここに残された連中全員が生き延びることは無いだろうという空気が漂うのは早かった。
こんなのがあの壁の向こうで何年も何年も、自分を解放する誰かをじっと待ち続けていたなんて流石に想像はしていなかった……理解不能な行動をするのが魔獣だが、誰もが魔獣が生きて中にいるとは思ってもいなかった。
この首無し騎士の実力を見るに、明らかに戦力が足りていない。
Aランク級の開拓者を集めるか、Sランク級の開拓者が必要なレベルだと思うぐらいだ。
ここにいる開拓者達は最大でBだ。Bランクの中でも上澄みにいるような連中もいない、至って普通の開拓者達だ。
ここから抜け出すだけで、上層階で見つけた魔道具によるまとまったお金が手に入りそうなのに、絶望で先が見えない。
リーダーを見れば苦々しい顔をしながら敵を見つめて言える。
手をこまねいているのは間違いない。
息を整えて話しかける。
「また、全員で攻撃を?」
「まだ隙が無い……! 下がれっ!」
その言葉に合わせて更に全力で後退をする中、一人だけ変わらず最前線に立ち続けている女性は下がらない。
人のようにスムーズな動きで行われる、空間を薙ぐ一撃。
それが大型の魔獣から解き放たれる。
殺戮的な風切り音が聞こえるが、それを向かい打つ一人の開拓者は危なげなく立ち向かった。
彼女が振るう、剣の軌跡だけが眼に見える。
もう何度も響き渡った強烈な金属音。
耳を覆いたくなるほどの轟音は一つの結果を生み出す。すなわち、水平の一撃を上方へと移動させた。
そんな事がもう十分近く続いている。
あんな攻撃、二度も続けば体が壊れるというのに、動きが鈍る様子はない。底なしの体力には驚愕しか出ない。
女性開拓者の戦闘センスも異常だが、どう上手く剣を扱えば未だ壊れる事無く戦い続けられるのか。
普通ならば剣が砕けてもおかしくない、いや砕けているはずだ。
「何度見ても信じられん光景だな……! いくぞ!」
リーダーの声に合わせるように、下がった状態から一気に踏み込むと両足に攻撃を仕掛ける。
弾かれるような甲高い音が幾重も重なる。
まるで効いていない。
傷はあとどれだけ付ければダメージになる。
クソ、弱点らしい弱点がない!
普通は頭が弱点のはずだが、首から上が無い怪物はその点を克服している!
女性の開拓者は攻撃後の隙を衝くよう攻撃を仕掛け……ようとして、その前面に騎士の盾がゴウと音を立てて入り込み、押し出されるように一歩下がった。
俺達の動きは何一つ阻害される事は無い。
だというのに、彼女の動きは警戒される。
首無し騎士の明確な敵は彼女のみ。
そう明言しているかのようだ。
周囲に居る俺達は羽虫みたいなものなのだろう。
魔獣の剣が即座に引き戻されるのを見て、俺達も後退した。羽虫を振り払う一撃でバラバラにされかねない。
時折、魔獣の背後から魔法が散発的に飛んでくる。
うちのチームメンバーのカガネだ。
この施設の明かりは薄暗くとも復活している以上、彼女がこの場に居なくとも視界は問題ない。
この場にいるのは危険だと、リーダーが何度も下がれと叫んでいるが、気を引くぐらいならできますから! と叫んでは居続けている。
彼女の火魔法が空に軌跡を残して上半身へと襲いかかる。
何度打ち込んでも、まるで見えているかのように魔獣が払い落とす。
その隙に改めて女性開拓者が一呼吸入れるのだが……。
「……まさか?」
その声は戦っていた女性開拓者からだった。
ハッとしたように声を上げると、何事かをカガネへと叫ぶ。
もう一度、火線が空を彩る。俺たちに当たらないよう、上方に向けての攻撃。
振り払う魔獣。
次の火線は、胴体から下だ。
こちらに当たらないよう、注意を込めた一撃はそのまま魔獣へと当たり、何事も無かったかのように消えた。
それをじっと見ていた女性開拓者が一瞬、ニヤリと笑うのが見えた。
また主人公視点から外れたァと思いながら。短めです。
次の更新は引き続き次の土曜ですー。




