第128話 邂逅
side - アラン
総勢12名のうち、ベテラン勢4名を前に、それ以外を2名と6名の2グループに割り振った状態となった。
新人や実力がまだ足りない勢が最後尾に多めにまとまった状態だ。
最後のグループに配置された俺やジェラル、他の後衛として参加している新人2名、そこに中堅の人が2名で総勢6名グループだ。
これは、前衛が全滅した際にセーフティハウスまでの突破を容易にするための布陣らしい。
気になるのはあの女……メルベリと、カガネが中間の2名グループに割り振られた事だ。
明確な実力差を感じ取れる配置ではあった。
地下三階の奥へと進むと新たな下への階段が現れた。
ベテラン勢が下へと慎重に進む。
ひょっこりと下を覗いてみれば、リーダーを含むベテラン勢が耳を澄ませ、角から慎重に顔を出して進み、視界から消えた。
違和感があった。
悩んでいると、ジェラルがあ、と小さく声を上げた。
「なんか、高さが違うね」
言われてみればと天井を見上げ、その後に下を見る。
「何だこれ、2倍近いじゃねぇか」
「となると、今まで違った雰囲気かも、ね」
待機時間は今までよりも長い。
メルベリ達2名は階段下で陣取っているらしく、何かあった場合は上に声を上げるようだ。
「……怖いぐらいピリピリするね」
ジェラルの言葉に頷くだけにする。
言わなくても空気が違うのはわかる。
手慣れた開拓者二人は軽く気を張って雑談もしているが、新人――自分達よりも先輩だが――の人も今より緊張しているのが目に見えてわかる。
戦闘音らしい戦闘音は聞こえず、扉が開く音が少しだけ聞こえる程度だ。
それも今は聞こえない。奥まで進んでいるのかもしれない。
数分、数十分経ったのだろうか。
ようやく後衛もひとまず降りてもよさそうだ、という状況になったようだった。
「うわ、ぜ、全然今と違う」
「……広いんだな」
地下四階は広かった。
階段を曲がった先には今使っている魔法では照らしきれないぐらいの広い空間があった。
二階分の高さがあるかもしれない。
誰かが用意した松明が何本も周囲に刺さり、高い天井をうっすらと照らしている。
床は砕け散ったように凸凹が出来ていた。
明らかに過去、ここで何かがあったのだろう。
ただ、全員が歩いた跡がくっきりと残るぐらい埃が積もっている。
長い間、何も来なかったのだろう。
ベテラン勢は奥にいるようで、ここからだとうっすらとしが見えないが、鉄の壁を見て何か話している。
広さに合わせる様に全員がまばらに散らばって様子を観察し始める。
天井を見れば、地下三階で見かけた穴が見えた。
まるで下から穿ったようだな、というのが何気ない感想だった。
他の階なら問題なかったかもしれないが、地下四階の高さなら足をひねるぐらいはありそうだ。
と、暗闇から誰かが来る。
「うーん、階段も無いみたいだねー」
カガネが周囲を見回って来たのか、魔法の範囲外である闇から歩いて出てきた。
天井を眺めていたメルベリへと話しかける様子が視界に入った。
「そうなのですか?」
「うん。ここが最下層みたい。色んな仕掛けもありそうだけど……適当にポチポチ触ってもうんともすんとも」
「えぇ……危ないですよ、カガネさん」
「いいのよ。リーダー達が一通り調べたんだし」
「そうかもしれませんが……」
「それにしても何も無かったね!」
この空間みたいに空っぽ! と腕を大きく回す。
その様子にメルベリが苦笑する。
「となると、上にある魔道具が今回の収穫の全部でしたか」
「うーん、どちらかというと、上にある魔道具がここにあったんじゃないのかって気もする。倉庫っぽい場所もあったからね。そこに物があった! みたいな?」
腕を組んで悩むカガネ。
その様子を見ながら、ベテラン勢を見るメルベリ。
「それでリーダー達は何を?」
「なんか動きそうな鉄の壁があるらしいんだけど……」
「……動きそうな壁?」
眉を顰め、メルベリがまた考える仕草をする。
その時だった。
「あ」
誰かの声が聞こえ、この部屋全体が一瞬だけ強い光で包まれ、目が眩む。
そして一瞬で落ちる。
「何をやった!?」
「か、壁に触っただけです!」
遠くからベテラン勢の叫び声と、それに大声で答える新人。
新人近くの壁には、今も光る線が幾重も走っている。
明らかにこの施設の機能が蘇った。
妙な重低音が響く。変化は電灯だけではなかった。
鉄を巻き取るような激しい大きな音が、ベテラン勢が居る方角から聞こえてくる。
暗闇の中、遠目でも壁がせり上がっていくのが見える。
ガラガラと、錆びた様にぎちぎちと音を立てて鉄のカーテンが上る。
リーダー達が飛びずさり、各々武器を構える。
それと同時、後衛組の撤退指示があがり、経験豊富な開拓者が先頭となって階段へと駆け走った。
俺とジェラルは顔見合わせて走る。
「――入り口で聞いた音――特徴的な音――あれは金属を叩いた音? ――――ッ!」
その時、メルベリが考える表情を驚きの表情に変えるまでに数秒。
「リーダー!!! この遺跡に入った時の音を出したのは! ――――シャッターの向こうに居る何かですッ!」
「何ぃ!?」
シャッター、という言葉は聞きなれなかったが、勢いよく破滅的な音が響き、何かが巻き取られる音に――重たいものが飛び出したような、金属音の塊がぶつけあうような激しい音。
そして、逃げろ、というリーダーの叫び声
「アランッ! 下がって!」
「っぐ!?」
メルベリが飛び出すと同時、階段へと逃げようとした俺とジェラルが勢いよく後ろへと引っ張られる。
「何しやが――――」
抗議のために上げた声が止まる。
何かがドン! と重々しく着地した音にかき消される。同時に金属が擦れて不協和音がこの部屋一帯に響く。
もし進んでいたらアレに潰されていただろう。
見上げる程の大きさ。
魔法の光がハッキリと、松明の光が仄かにその巨体を照らす。
「魔獣……ッ!」
メルベリが叫ぶ。
確かにそれは魔獣と呼ぶべき怪物だった。
二本足で立ち、巨重を支えるに相応しい太い足を持ち。
身の丈程の大剣を持ち。
丸太よりも太い腕を持ち。
全身にあらゆる攻撃を跳ね返すような強靭な鎧を持つ。
――――人型の巨体。
だが、それは間違いなく、人ではなかった。
「――――」
着地姿勢から立ち上がる様は、自身が鈍重ではないことを証明するかのように滑らかだった。
金属が軋む音が声のようだった。
体の軋む音が声の変わりだった。
現れたのは、複雑な模様が幾つも刻まれた鎧を身に付けた――――首の無い騎士だった。
次の更新は次の土曜ですー。
アラン視点終わりです




