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第127話 不穏な落とし物

 side - アラン



 地下二階も何もなく、地下三階へと向かった。


「くそ、こうも何もないと退屈になるな……」

「さっき気を引き締めたんじゃなかった?」

「気は引き締めたままでも退屈にはなるだろ」

「違いない、ね」


 ジェラルに小さく言葉を返す。

 どうせ三階も何もないだろう、と高をくくっていた。

 階段を下りきった先は今までと様子が違っていた。


「んー? 雰囲気が違うね」

「そうね。……下への階段が無い?」

「つまり最下層?」

 

 そう思っているのは他にも居るようで、階段下を先に確保していたグループの人達も拍子抜けという雰囲気が広がっていた。

 そのまま、何もないだろうと流れのように部屋の探索をしていた時だった。


「おおい! 見てくれ!」

 

 それはこの探索の中で初めて出た、喜色満面の表情。

 部屋の前に飛び出してきては、ハンドアックスを片手にブンブンと元気よく振るう。


「あぶないな! 武器を片手に呼ぶ奴がいるか」

「へへ、すまないなリーダー。でもよ、いいもんがあったぜ!」

「ん?」


 そういって部屋に消えていくリーダー。

 盛り上がりつつある部屋が気になってぞろぞろと入っていく開拓者達。

 気にはなるが、廊下の安全が確保出来る人材は必須のため、渋々残る。

 のだが。


「ね。入っちゃわないの?」

「俺らのグループは監視だろ」


 うちのグループにいるカガネがそんな事を言うのでむっとしながら当たり前の事を返す。 


「そりゃそうだけどね。こういうのはちょっと聞いてみるもんだよ――――リーダー! 私達も気になるんですけど」

「ちょっ」


 思わず何をしているんだと言いそうになるが、ちょっと待ってなってと諭されて。

 カガネが部屋に首を突っ込んでそう言ってしばらく。

 驚いた事に別のグループが監視を変わるというので中に入ることが出来た。

 室内……というが、部屋の構造はシンプルな一部屋構造、では無かった。

 入って直ぐ、複数の扉が並ぶ一本の廊下があり、数人ぐらいなら余裕ですれ違うことが出来る。

 足下は何人もの人が通ったかのように薄汚れている。

 天井からはよくわからない線が大量に垂れ下がり、一瞬女性の髪のように見えてびくりと体が硬直した。

 扉はそれらがどれも開きっぱなしで、奥は折り曲がって更に先に進めるようだ。

 リーダー達は奥に居るのだろう。

 足を進めると一際広い部屋に辿り着いた。

 ここも途中でしかないようで、奥にはまた別の扉が見えるが、室内の様子は……明らかに、古の文明が滅んだ後に、誰かがここを使ったかのようだ。


 周りの部屋からかき集めたのだろう布で仕切られた寝所、火を使ったと見られるたき火跡に、かなり古ぼけた幾つものバッグ。

 メルベリが一歩進んで、驚いたような表情で周囲を見て、楽しそうにバッグに触れながら口を開く。


「これは……?」

「過去の開拓者の跡、だろうな。やはり、誰かが先んじてここを漁っていたのは間違いないようだ」


 答えたのは、この遺跡に入るときに会話をした前衛の一人だ。


「じゃあ、何も残ってないんじゃないのか、普通」

「あぁ。だが、そのバッグのどれにも魔道具が入っている」

「……本当に?」


 そういって目を向けたのはリーダー達だ。

 リーダー達もバッグの中身を慎重に取り出している。

 確かに……用途不明そうな、いかにも魔道具といった物が出てくる。

 一つ一つがゴトリと音を立てて埃の被った床の上に置かれていく。


「何で置いていったんですかね」

「……あとで取りに来る予定だった、とか?」


 呟いた俺の声にメルベリが何でも無いように返答をする。

 一瞬ぎょっとして見るも、メルベリはこちらをみてきょとんとしているだけだ。

 その様子に、こちらだけがこの女を強く意識しているように感じられて少しだけ血が上る感じがした。


「はっ、じゃあ間抜けにも戦利品を置いていった事でも忘れたのか。第一置いていく理由は何だよ?」

「一つわかるのは、引き続き探索をするのならば、この量を持って行くのは邪魔以外の何物でも無いだろう」


 噛み付くようにメルベリに告げた言葉をするりとリーダーが掬い上げて返答する。


「つまり、この先に何かあるかもしれない、と?」


 暗に戻って来られなかった事情がこの先にあるのでは、という話だと気づいたのは、メルベリの言葉で周囲の空気がずっしりと重くなった気がしたからだ。

 その可能性もある、と静かにリーダーが言う。

 

「あるいは、遺跡を出て売り払った後にまた来るつもりだったか」


 そういって立ち上がる。

 

「これだけの量があるんだ。少人数で忍び込み、持ち帰れる分だけ持ち帰った説もありそうだ。いつの時代だかわからないが、この場所までそうそう簡単に来れるはずがない。つまり、置いておいても盗まれる危険性がない。……また来ればいい、とでも思っていたのか」


 結果、戻らぬ人となったわけだ、と呟く顔は少しだけ険しい。

 そういってバッグを持ち出さないまま部屋を出る。


「俺達も同じだ。この先を確認して、問題が無ければ帰りにこのバッグを持って悠々と帰ればいい。今はここに置いておこう」


 部屋から出れば、全員がピリピリした様子で待っていた。


「この先、何があるかわからない。気を張って歩けよ」


 俺達はまだ、入り口で聞いた音の正体すら掴めていないからな、とリーダーが告げると、そのままグループの再編成を命じたのだった。


次は来週の土曜です。

あともう一回、アラン視点……やも?

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