第126話 地下へと向かう
side - アラン
一階――ではないらしいが、突入した階とその上層階には特に何も残っていなかったらしい。
ただ。
「……これは、先駆者がいたかもしれんな」
とは部屋を探索したメンバーの見解らしい。
クエスト仲介所の話では新規発見だったはずだけれど。
部屋の荒らされ方からして、恐らくこの文明があった頃より後に荒らされたのだろう、といった推測を立てていた。
先に入ってきた誰か達はここ最近侵入したわけではない。
数年以上、もしかしたら数十年ぐらい前かもしれないという。
「でもそうなると……ヨルム王国がまだまだ魔森林を開拓しきってない頃にここに来た……って事ですよね」
メルベリがそう言う。
これは期待出来なさそうだ、とややテンションを落とし気味に、今度は地下一階……実際は違うのだろうけれど、全貌がわからない以上、地下層への階段を下っている最中だ。
一応、三チームがバラバラに階段を下るため、しんがりを務める自分達はいまだ上層にいる。
俺とジェラルは口も閉じてかなり神経を尖らせているが、メルベリと中衛がこなせる開拓者であるカガネは喋りながら周囲を見ている。
ジェラルが言うには、あれで必要十分な注意を配っている――俺達よりもよっぽど――らしいが、俺にはなぁなぁでやっているように見える。
「昔は……っていうか、今もだけれど、遺跡漁りっていうのはやっぱり一攫千金、って感じで狙っている人が多いし……実現もしちゃうのよね。実際、私達の手には届かないけれど、古代の魔道具って結構流通してるじゃない?」
「そう……なんですか?」
「まぁそうなのよ。特にお金を持った権力者とか欲しがってねぇ。世の中に流通している大部分の古代の魔道具は正式ルートじゃないって話もあるし」
「それっていいんですか?」
魔法がなければ何も見えないが、建物中は蜘蛛の巣が我が物顔で張り巡らされ、外から入ってきた落ち葉がそこら中に散らばっている。
全員が下りきったようで、下から挨拶が飛んで来た。
「ほら、貴方達二人が先に降りなさい。後ろは私達が見るから」
「……うっす」
新人扱いされるとむっとする。
ジェラルは特に気にしてないみたいだが、ジェラルに言えば「俺達はし、新人でしょ? 間違いないと思うけど」ぐらいは言うだろう。
そうしてチーム全員で下り始める。
次の地下層への階段はこの階を探索してから下る。いったんお預けとなる。
「で、いいのか悪いのかっていうと……まぁ良いのよね」
「えっ」
「公式っていってるのも、ただ単にちゃんとした金額で安全に売買出来る、ってレベルの話で抑制自体はしていないもの。開拓者が自発的に頑張る状況の方が値千金なんでしょうねー」
「はぁ」
「だから、一攫千金を狙う人達の中には開拓者なんて登録もしないで、自由気ままに魔森林に入って戦ってる人達もいるのよ。たぶん、ここに来た人もそうだったんじゃないかな」
下りきると、別のチームの人達も周囲を確認しながら雑談している。
いや、同じぐらいの練度に見える人は緊張しているようだ。
その姿を見て、少しだけ自分の緊張を解すことが出来た。
ジェラルに目を合わせると、少しだけプレッシャーから解放されたような顔になった。
十分に安全が確認されているからという事もあってか、そうなると口も開く。
「下ると、以外と綺麗だな」
「そうだね。二階……というのも変だけど、まぁ二階も綺麗だった。た、ただ、地下の場合は二階と違って、汚れがハッキリしだしたんじゃないかな」
「まぁ、確かに」
一階は大量の枯れ葉や土が目立ったけれど、この通路には……。
「足跡、ですか」
「魔獣も住み着くからね。やっぱり何かいるのかなー」
多くの歩いた跡がくっきりと残っていた。
乾いた土のようで、足でほんの少しでも触れると脆く崩れ去る。
全員でその跡を辿るようにして歩き出す。
その後も部屋を幾つも見に行ったが、どれもこれも収穫はなかった。
死んだ魔獣の骨が室内で見つかったぐらいだ。
これも相当前とのこと。
先頭チームが緊張でバテないよう、前の2チームで先頭が入れ替わりつつ、順当に潜る。
未だ収穫はゼロだが、襲い掛かってくる魔獣の気配もゼロだ。
安全なのは良い事だけれど、気疲れだけがたまってくる。
足音だって自分達の音だけしか聞こえない。
地下1階も特になく。
地下2階も警戒したが、特に何もない。
獣か魔獣か、それらの跡も少なくなった気はする。
これまでの間に先駆者の痕跡が幾つかあったらしいが、俺達より大分前に来た、という意見を補強するぐらいのものだ。
恐らく年単位に前とのことだ。
見慣れた景色が続き、飽きが出始める。
警報装置がある遺跡にはあるらしいけれど、ここまで来て何もなければやはりこの建物の警報装置は壊れているのか、無いのか、停止しているのか、という話が前から漏れ聞こえてくる。
停止しているだけだとしたら、もし動き出すような事があれば大変だ。
最も、これまで歩いてきた中で、何か罠があるような箇所はアラン視点では何もなかったが。
地下3階になってようやく変化があった。
のだが、ただ、廊下が崩れていたぐらいだ。
少しだけ話し合いがあって、特に崩れる予兆も無さそうということで避けて通る事になった。
「全員、あまり崩れた箇所に近づくなよ。丈夫な建物だが、近づいて落ちたりでもしたら、ロープを出すのが面倒だ」
廊下の中央にぽっかりと空いた穴から十分に避けるように歩く。
その際、メルベリが崩れた下の階を見て、また何か不思議そうにしていたのが印象に残った。
次の更新は一応土曜予定です。
今回は日をまたいだこともあり、短めでした。orz




