第124話 遺跡の入り口
次の更新は次の土曜です!
9月は死ぬほど仕事が忙しいです。
「出入り口付近は特になんともないみたいだ」
「設備の機能が生きているって感じはしないな……いいぞ」
前衛がおそるおそる入った後、OKの言葉を聞いて足を踏み入れる。
出入り口とは行っているが、穴が空いた壁から入り込んでいるだけだ。
遺跡への侵入前に、各々、大きめの武器を入り口に置いていっているのが印象的だった。
基本的に室内戦ばかりの為、持っていてもしょうがないという声にはまぁ確かにと頷くしかない。
よって、前衛の方々は、持っていた大きなバルディッシュではなく、コンパクトなバトルアックスに変わっていた。斧である事には変わりが無いらしい。
ただ、周囲を見ると室内戦では剣は多いらしい。
「お前はその剣を置いていかなくて良かったのか」
と、周囲の人達の武器を見ていたことに気づかれた……というわけではないようだが、ぼけっとしたアタシの後ろからアランが現れる。
「問題無いわ。室内で振り回すことも慣れているから。これぐらいならまだ、場所としては広いと感じる方よ」
そういうと、こちら側の剣を凝視してくる。
「……もしかして、その剣しか扱えねぇのか?」
「別に剣であるなら何でも問題はないわよ? 学園の授業だと、自分の剣じゃないものを使うから」
「授業? 授業で戦い……があるのか? 人との?」
「えぇ」
珍しくアタシの言葉で目をぱちくりとしている。
学園が何をやっているか、なんてのは、この子達みたいな子からしたらそりゃ知らないか。
実際、この子以外でも普通に知らない人が多いとは思う。
学園の卒業生の多くは魔獣関連の仕事に就くし、開拓者となる学生も多いが、卒業と同時に仲介所内のランクを駆け上がるとは聞いている。
そうなると親しくなる前に強いパーティの人達のところに入ってしまうだろう。長期で未開拓地のクエストに頻繁に出掛けることになる。
そうなると……まぁ、学園の人達と、開拓者のランクが低めの人達との接点はあまり多くはない気がしてくる。
「光栄宮学園は魔獣に関するプロフェッショナルを育成する場所であるから、本来は魔獣との戦いがベストなのだけれど、学園である以上、都合の良い機会じゃないと無理はさせられない」
そうは言いつつも、襲撃を何度もされているが。
あれは学園としては不本意なので本来は機会が無いというのは間違いない。
「無論、グループをつくって魔森林を探索するとかはある……とは聞いているけれど……。それはともかく、今の学年ではそうそう魔獣との戦いの機会はないし、それでも体の動かし方は身につけなきゃいけない。だから、対人で体の動かし方を学ぶのよ」
「へぇ」
アタシが告げた言葉に素直な感心の言葉が聞こえてくる。
「それで、使えるのは剣だけなのか?」
「そうね……。他となるとそこそこぐらいしか使えないわ。無手はもう、からっきし」
槍でも斧でも、変わった物なら鞭でもそこそこ動ける。並の手合いならたぶん問題無い。メリケンサックだって他より劣るが……いけなくもない。そういう訓練を昔してきたから。
ただ、無手だと動く体も動かなくなるぐらいには苦手である。昔からそこが弱点だとはよく言われていたが、結局どうにもならなかった。
……刃物とは、自分の中での切り替えスイッチのような物だし、ナイフ一本、それこそいつぞやのように食事に使う程度の短いナイフでも別に良いので、今度から隠し持ってた方が良いかもしれない。
メリケンサック使うぐらいなら、刃渡り数cmのナイフの方がまだマシだ。
「そうか……ふ、ん……」
聞きたい事は聞けたとばかりに、そのまますたすたと歩いていく。
なんだ、仲良くしに来てくれたんじゃないのかとその背中を凝視する。
アランの後ろを追うように遺跡に入ってきたジェラルが、そんなアタシを見かねてか、そっと声を潜めて教えてくれた。
「あ、あれは一応、アランなりにし、心配してたんだと思う……」
「あぁ……そういうこと」
その言葉に苦笑する。
距離感を測りかねているという所だろうか。
当初に比べれば格段に違うので、少しでも心配してくれたのかと思うと悪い気はしない。
「それはそうと……遺跡の中は真っ暗ね」
「う、ん。小さい光がぽつぽつとは見えるけど……」
「あれじゃ何も見えないのと一緒よ」
ほとんど一寸先は闇、だ。
他の人達も光が届くまでの範囲に留まっている。
見える範囲では研究室……かもしれないぐらいの雰囲気があった。
ここの廊下は三人並べるぐらいには余裕があるか。かなり広い。
前世の建物とは内装が全然違う。
見た目が近未来的なのでつい前世と同じような感覚でいたが、異世界は異世界の論理で動いているということなのだろう。
こうなると、部屋の配置とかも前世の常識が通用しないかもしれない。例えば、普通なら非常階段はだいたいあるはずだが、そんな物はこの世界にはないかもしれない、などだ。
天井の高さは普通だ。
蜘蛛の巣が幾つも張っていて虫の死骸がぽつぽつ見える。
足下は硬く、風で吹き込んできた枯れた葉っぱなどが絨毯を作り始めているが、その下にはしっかりと石のような感覚がある。
壁は汚れていて、タイル状の物が敷き詰められていた。破損も幾つか見える。
その時だった。
最後に入ってきた女性が魔法を唱え始める。
「輝きを私に……光よアレ」
「おぉ……」
思わず、といった声が自分やジェラルから零れる。
真っ暗だった世界に光が生まれた。
ただ、室内が全部見えるわけではないみたいで、人を中心として光が出ているという不思議な光景だ。
しかも、光が減衰しているかようで、廊下の奥まで届かないうちに消えていく。
これはこれでホラーっぽくて怖い。
懐中電灯やランタンのように奥まで見通せるわけじゃないのか。
魔法を唱えた人は、ここに来るまでの戦闘で、軽口を言いながらロウボアに風魔法を的確に当てた女性だった。
「凄いですね」
「ん? ありがと! 私も習得頑張ったからねー、これは!」
えへんと胸を張る様子が可愛らしい。
しかし、ゲームにはこういう探索系の魔法は欠片も登場しないから気になる。基本的にはノベルゲーなのだからそれはそうなのだが。
「これは何属性なんでしょうか」
「火属性よ! 光を放つ仕組みを自分の中でどう解釈するのかが難しかったのー。一応全員に掛かってるから、しばらくは大丈夫だと思うけど、遭難したら時間経過で切れちゃって真っ暗になるから、遭難しないようにね!」
「は、はぁ」
基本属性もかなり応用が利くんだなぁと驚きつつ、それよりも女性の近さというか、元気なテンションにビックリする。
……こういう距離感の女性、そういえば周辺にいないなぁと思いつつ、一同は間隔を保って探索を開始した。




