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第121話 遺跡の説明

 初めて来たセーフティハウス。

 が。

 どうにも見覚えがあるような、無いような……。

 思わず目の前の大きい装甲家と思うような家を眺める。

 

 ……それよりも、だ。思わず思ったことがある。


「何だか他と比べるとやわっちいな」


 アランの呟きには同意する。

 隣を見れば、ジェラルが困った顔で周囲を眺め、アランが眉を顰めて家を眺めていた。いや、これはジェラル同様に困っているのだろうか。

 記憶にあるセーフティハウスは周囲を徹底的に柵で埋め、場所によっては丸太で巨大な壁さえも周囲に作られていた。魔獣は決められた方向からしか進入出来ないようにし、またその侵入経路も馬車一台分と狭める事もあった。

 それにセーフティハウスそのものもかなり頑丈な作りとなっていて、ただの家には似つかわしくない鉄の装甲板で覆われていた。


 ここも確かにセーフティハウスそのものは装甲板で覆われているし、周囲を見れば柵もあるのだが、柵の隙間は大きく、一つ一つ使われている木々の太さにばらつきがある。

 三階建てであるが、装甲板も全面ではなく、要所のみに絞られている印象を受ける。

 二階以上の外壁は全て素の壁に見える。

 それに、何となく真新しいのが逆に不安を煽るのだ。実践証明がないのではないかと思ってしまうからだろうか。

 それはともかく。

 

「あら、奇遇ね。私もそう思ったのよ」

「……そうか」

「こ、こはまだ出来たばかりだから、必要最低限なんだ……」


 どうも、新しく開拓された領域の一つらしい。

 新しくといっても、既に運用が始まって一ヶ月は経っているとのこと。

 

「ふぅん?」

「普通は、この状態でも十分だってき、聞いてる。ここから規模を大きくして、よ、より安全な状態に持っていくんだって」

 

 つまり、ひとまずの拠点構築と言った所なのだろう。

 

 そんな話をしながら他の人達にならい中に入るとまず驚くのが綺麗さだ。

 足下は一ヶ月相応に汚れてはいるが、調度物や壁、天井などに汚れは見えない。

 ……そんなに複数のセーフティハウスを渡り歩いたわけではないけれど、今まで見てきたセーフティハウスの中は基本汚れがあり、壁際などは人が背を預けるだろう場所がわかるほどの痕があったりとお世辞にも綺麗とは言いがたい場所ばかりではあった。大きい武器を身につけたり、中で手入れする事もある関係上、床に窪みや切り傷なんかは無数にあった。

 なお、家の中には鉄骨もあるものの、基本は木材である。外の印象と中の印象が全く違う。火を扱う魔獣が出た場合はちょっと怖い気もする。

 

 それはそれとして、他のメンバーも興味深そうに見ていた。

 ここに事前に来たことあるメンバーは少なそうだ。

 クエスト仲介所の職員がセーフティハウスの内装確認をしている間、思い思いに散らばっていく。

 異口同音に綺麗だというので、綺麗な状態のセーフティハウスというのは珍しいらしい。


「まだまだ新築って感じの匂いねー」


 中に入って広々としたリビングで思わず鼻をすんすんとさせるが、今まで見てきた何処とも違い、汗臭い匂いが無い。

 期間が短いと染み込む事もないらしい。


「案外、新しい素材で作ってるのかも……」


 ジェラルがアランに対して話す内容を聞く限り、この手の家では、素材の試験運用をしている噂があるという。

 開拓者達がいない間に、職員がセーフティハウス内をメモ片手に練り歩き、その効用を調べるという……。


「では、みなさんお集まりをお願いします」


 そんな話をジェラルがし始めようとした時に、クエスト仲介所の職員がリビングに入ってきてそう告げた。


 9人全員がリビングに集まった事を確認して、今回の目的を説明する。


「目的はここから一時間ほどの場所にある遺跡です。規模としては……外見上、大きくは見えません。地上部分は二階程度の高さがあると思われます。見える部分だけで考慮した場合、調査時間だけなら、数時間で完了するかもしれません。内部の調査は入り口のみ行われています。毒性の検出はされませんでしたが、魔獣の出入りや気配、生きている罠は十分にあるとの見解が出ています」


 ぺらり、とメモを捲りながら告げる。


「地上露出物を見る限り、別件で観測された他の遺跡と似ているため、埋まっている地下層が存在すると思われます。過去の遺跡では3階建てでした。今回は一歩踏み込んだ調査となりますが、攻略は必須ではありません。地下層に強い魔獣や罠などがあれば撤退となりますし、進捗にかかわらず、日を跨がずに撤退します」


 遺跡の調査――過去、この世界では、今よりもずっと発達した文明が存在していた。

 その文明は地形や生態環境すら劇的に変えるほどの力を持ち、結果的に滅んだが、こうして一部の建物が残り、遺跡として扱われる。

 遺跡とは書かれているが、作中のワンシーンで見たことがある背景絵では、かなり現代的な……というより、SFに足を突っ込んでそうな建物が、長い時を経て地面に埋まり、草木まみれとなっていた記憶がある。

 作中では基本的に語られる事は無いが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であることは設定資料にガッツリ記載されているので、はた迷惑な文明の残し物である。


 引き続き、注意事項は続く。

 意外だったが、遺跡で手にいれた物は基本的に開拓者の私物にしていいらしい。

 が、重要度の高い魔道具は買い取りを提案させて頂く形になるらしい。

 私物にしていいとは意外と太っ腹で、これ目当てで参加者が爆増しても良いとは思うのだけれど……。

 そんな呟きを漏らすと、


「……そう簡単に物が手に入るかよ」


 と、アランが小さく零していた。

 職員が何度も罠に関して警告している通り、危険性が未知数で、どんな魔獣が潜んでいるかわからず、ハイリターンの可能性はあれど、リターンが手に入る確率はそう大きくはない、と。

 確かに喜び勇んで参加するかと言われるとちょっと考え物である。


 職員の説明を聞きながら、自身の顔に、詳細な情報が作中に無い生の遺跡攻略に関してのワクワクが抑えきれずに出ていたことは、職員の話が終わってジェラルに指摘されるまで気づかなかった。


次の更新は引き続き土曜ですが、もしかしたら日曜になるかもしれません。

いいね・ブックマークいつもありがとうございます。特にいいねがつくときは、読み手がいるのかとかなり動揺したりしてます。

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