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第120話 馬車で運ばれる

「二人とも、最近は順調なの?」


 アランとジェラルの二人とは最近絡んでいない。

 見かける事もあったが、挨拶をする程度である。

 

「うん。お、俺も魔獣との戦いに慣れてきたし、武器や防具も、か、買い換えてから慣れてきた、よ」

「……本当に数週間前とは様子が違うものね」


 そういって少しだけじっくりと見れば、顔つきもしっかりしているし、装備を新しくしたと言っても装備に引っ張られている感がない。

 前の装備はひとまず防具を纏いました、という感じだったのに、二人してそれぞれ、自分にとって危ない箇所はどこか、というのを選んだ感じがする。

 元々はアランの方が先に開拓者をやっていたと思うのだけれど、ジェラルの成長に引っ張られる形で変化していってるのだろう。

 命の危険があると短い期間で急激に成長するもんなんだなぁとしみじみする。

 いや、男の子というのは親友がいれば、競い合うように成長するんだっけっか。

 男子三日会わざれば刮目して見よとは誰の言葉だったか。

 思わずほう、という声を上げてしまった。

 照れたようにジェラルは頬を掻き、アランはフン、と顔を逸らした。

 それはそうと。


「今日は二人して魔獣を討伐しにいくのかしら? それとも、何処かのパーティに参加するの?」

「そ、そういうわけじゃなくて……」

「お前に用がある」


 しどろもどろするジェラルを見かねたように、アランが口を開いた。

 

「お前、一緒に来い」

「へ?」




 あれよあれよと準備が進み、気がつけばアランとジェラル以外は喋ったことは無い人達のパーティに入っていた。

 一応、何となく見かけたことはある人達ばかりの9人パーティである。メンバーの中には喋ったことは無い……はずだけれど、妙に見覚えのある人もいるにはいるが。 

 

 アランからの話は単純だった。

 

 『未調査の遺跡が出たので、先遣隊を出す』というクエストがあったので、それに参加して欲しい、というものだ。

 最近懇意にしている人達が集まって出発しようとしていたらしいのだが、参加者が集まらない状態だったとのこと。

 

 簡単・手軽で時間的拘束時間も貰えるお金も段違いな魔獣狩りのクエストが乱発している今、この手の調査系クエストの消化に急ブレーキが掛かったらしい。


 窓口で破ってしまったクエスト用紙を差し出して代わりに貰ったクエスト用紙を見れば、なるほど確かに安い。

 勿論、魔森林(ましんりん)でのクエストなので、街中のクエストで得られるお金と比較すれば大きい。

 お金目当てで仕事をしている人達が多いので、魔獣増加中の今は稼ぎ時とばかりに討伐系ばかりやりこみ、調査系はやらなくなると。

 クエスト仲介所も無理強いするわけにもいかず、かといって調査が止まるのは避けたい。何か有益な、あるいは有害な古代の魔道具がある可能性があるからだとか。


 そうして顔合わせと自公紹介を軽く済ませた後、こうしてゴトゴトと、2台の馬車が走ってしばらく経った。

 道中何もなかった……というわけではなく、度々立ち止まっては通行の邪魔をする魔獣を斬って捨てている。三人組となり、代わる代わる対応していた。

 鼻の頭が蝋燭のようになっているイノシシ、ロウボアが出るかもと思って少しだけ不安だったが、幸いにもアタシ達の時にはゴブリンとコボルトの雑魚だけだった。

 慣れた様子で対応するのはアタシだけではなく、アランとジェラルもそうで、変えた剣の長さには十分気をつけているようだ。


 道中は他のグループが良く喋っていたので基本的に無言の状態はなかった。

 アランが他のパーティと話しているのを見たときは何となく意外だった。振り返ってみれば、彼が尊敬している、ベテランのアギトさん達と一緒に行動した事はある。が、それ以外で一緒になったことはない。

 アランの普段の様子を見るのはこれが初めてというわけだ。


「意外。あんな風に笑うのね」

「う、うん。普段は、気の良い奴だよ、アランは」


 目の前で、アランが好奇心に溢れた様子で先輩開拓者達から話を聞いている。

 ただまぁ、ジェラルは相変わらず人見知りのようで、あの輪に入れずに居たのでアタシが何となく話し掛けている状況だ。

 時々アタシにも話を振られるのだが、他の人より見覚えのある開拓者が何故か顔を引きつらせるので、距離をおかせてもらった。

 アタシが何かやらかしただろうかと思ったが、なんかあったかな……。

 そうして、会話が盛り上がっている方々の様子をぼんやりと眺める二人組の出来上りである。


「でも、腕の立つ開拓者の知り合いがいないか、ってき、聞かれた時に、メルベリの名前をあげたのは、あ、アランだよ」

「へぇ。なんて言って推薦してくれたの?」

「その……」


 そこで少しだけ言い淀んだ後、少しだけ眉を困惑状態にして続ける。

 

「初見の魔獣ではびびることはあっても、ひ、一人で戦い続けても負けないだろうって」

「……」


 あの野郎……。

 まぁ全くもってその通りだとは思うので反論はしない。


「あ、あとは向こうのパーティにいた人が、め、メルベリなら大丈夫かって話になって……」

「その話がまとまった後、ちょうどアタシが現れた、ってわけだ」

「う、うん。今日、もしメルベリが来たらそうしよう、って事になったから……タイミングが良かった」


 ストレス発散の一つとして魔獣をしばきたかったのであって、魔獣以外の方法でも別にかまいやしなかった。

 この世界の元となる『Diamondに恋をする ~ユア・ベスト・パートナー~』公式の設定資料集には遺跡がどうたらとか、かつての魔森林があったあたりの世界がどうたらとか記載があっても、基本的に乙女ゲーなので深掘りした描写も少ない。

 

 なので、ここらでかつての遺跡の一つぐらい見ておきたい、と元イチプレイヤーとしては思ったので、諸手を挙げて賛同した、というわけだった。


「げ、減速した……」

「――――ひとまず、所定の場所には着いたみたいだね」


 前の馬車から声があがり、荷台からひらりと飛び降りる。

 そこには、まだ来たことがなかった、初見のセーフティハウスの姿があった。

また零時を越えてしまった……。

次の更新は引き続き土曜です。某モンスターを狩るゲームの追加コンテンツ買いました。

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