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第119話 お肉と再開

 朝練のルーチンワークをこなしてから街へと向かった。

 神楽は起きてこなかったので、今日は顔を合わせることなく寮を出た。

 人手は少なくともきっちりと動いている往復便のなんとありがたい事か。

 既に御者さんとは何度か会っているためか、

 

「お。今日は魔獣狩りかい? 休日だってのに、精が出るねぇ!」

「はい。少々ストレスを発散しに」

「……ストレス発散なら、劇を見に行くもんじゃあ?」

「いえ、体を動かしたいのです。とても」

「はぁ……」


 などと、学園と街との往復便の御者さんに言われるぐらいにはなった。

 常に同じ御者さんではないのだけれど、同じ時刻で動いていればだいたいかぶりもする。

 仲介所へと続く道すがら、ふとウィンドウショッピングと称してまだ開店していないお店を外から眺めてはあの服は好きなどと楽しむ。

 仲介所への道は普通に少女が楽しめるようなお店がほとんど無い。

 居酒屋はあるのだが……魔獣を狩るクエストをしていた人達が集まるとかなり臭うらしい。

 先輩開拓者からそういう話を聞いたので、夜までクエストを行った事は無いため、どれくらい繁盛しているかは知らない。


 クエスト仲介所から走り出した馬車が少し遠くに見えた。

 それを横目に、でかい両開きが特徴的な仲介所の扉を開く。最初の緊張など、既に忘れてしまった。

 

 受付を見回すが……今日は、初めて対応して貰ってから仲が良いと勝手に思っている織賀(おりが)さんはいなかった。

 業務会話程度はこなしたことがある女性の受付嬢さんが二人、カウンターの向こうで資料をひたすら捌いていた。

 目が合ったので会釈だけすると、クエスト用紙が張り出されている廊下へと足を向ける。


「朝から多くの人がいるなぁ……」

 

 孤児のような少年少女から、優しげな眼鏡の青年に、普通の主婦のような、街中専門のクエストを行う人達。

 

 奥へと目を向ければ、明らかに服装が違う、魔獣討伐をメインにした人達も勿論いる。

 比率的には討伐組……ハンターが多い。

 用紙を持った男三人組が歩いてくる。二十代に到達しているかどうかってぐらいか。

 見た目からしてがっちりとした探索装備。開拓者である。


「今日もコイツか」

「まぁ良いじゃないか。あの店で格安なのに美味しい肉にありつけんのは、俺らが狩りまくってるからだろ」

「仲介所は良い金額で金をくれる、飯代も安く浮く、それに美味しい飯にもありつける。良い事だらけじゃん……ぁ」


 三人組がわいわいと言いながら通り過ぎる。アタシと通り過ぎる時だけ、何故か喋るのを止めてしまったが。

 クエストボードを見ると、大量討伐はまだ続いているようだった。

 同じ内容が書かれた用紙が、クギでズンと束ねて撃ち込まれている。

 

 前回は空きを募集していたところに入って、8人パーティで進めていたけれど、途中で相性の悪い魔獣が出て撤退したのは苦い思い出だ。

 今回はそんな事が無ければいいけれど……。


「そもそも、良いパーティと組めればいいけれど……」


 用紙を見る。

 主に、増加が見られる魔獣、『ロウボア』の討伐らしかった。

 クリア報酬のお値段は日給のアルバイトとしてはやや安い。が、回収した肉の量によって支払いに色づけがあるとの注意書きがあった。

  

 前回とはまた違った魔獣が増えているらしい。

 ロウボアとは鼻の頭が蝋燭のように白くなっているイノシシであり、普通のイノシシよりも大きく、目の数も足の数も多い魔獣である。

 足が多いために踏ん張りが効くし、目の数が多いので死角も少なめ、なのだが、真っ正面が全然見えないらしいため、そこが死角になる、ということを、授業でやっていたな思い出す。

 1年目の授業で習うくらいなので、正直強くはないとは聞くけれど……。

 この世界の人間でなければ、普通にぼろ雑巾のようにされて終わりだろう。なお、この世界の、筋力にステータスがかかった人達でも全力の突進に当たるなとは普通に言われているが。

 

 肉が美味しい、と先生が言っていた記憶があるので、さっきすれ違った人達もこの討伐クエストを受注するのだろう。

 この用紙には書いてないけれど……何処かで料理のサービスとかやっているのだろうか。

 学園のお上品な料理はとても好きだけど、それはそれとして、雑な一枚ステーキとかも食べたい時はある。


「……ま。これでいっか。まだ見慣れた形の魔獣の方が気が楽かな」


 戦闘はしたこと無くても、イノシシなら極端に戸惑うこともなかろう。

 用紙をちぎった……その時だった。


「おい」


 乱暴だが、聞き慣れた子供の声。

 当初よりかはトゲが取れた物の、今度は何処かやりづらさも垣間見える声には心当たりがあった。

 振り返る。


「あら、おはよう。今日は二人揃っているのね」


 そこにいたのは、腕を組んで眉を顰めているアランと、やや気弱そうな見た目はかわらないジェラルが居た。

 ちゃんと絡むのは久しぶりな気がする。


「……おう」

「お、おはよう、メルベリ。久しぶりかな」


 二人して前よりも長い剣を腰に差し、防具も前よりしっかりとしている。

 それに、見える範囲で傷跡も増えている気がした。

 ちゃんと戦闘経験を積みつつあるのだろう。

 既に二人からは、新人という気配が抜けつつあるようだった。


今回は短めです。

タイトル、こう書くとお肉と出会ったのかな、と感じますが、まぁいいか、と思ってそのままです。

次の更新は引き続き土曜です!

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