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第114話 戦女神

次の更新は引き続き土曜です。

仕事が稼働上限までいったのでひと段落しました。わー。

 side - ???

 

 オリヴィア・メルベリさんという女子生徒が光栄宮(こうえいみや)学園にはいる。

 雑踏の中でも分かる、力強く光を放つような存在。

 

 女子の中でも上から数えた方が早いほどの長身で、女子の中では学園一位では無いけれど、クラスの中では一番背が高い女子生徒。

 ピンと伸ばした背筋は思わず良家の女子の視線さえ奪うときがあり、廊下ですれ違いざまに目で追いかけてしまう女子生徒は多い。

 歳は周囲より一つか二つ上という情報もあって、一年生のまだ若い部類の子達はその魅力に強烈に当てられるらしい。お姉様と呼ぶ一部の層も派閥の中や、別派閥では見られている。

 

 目つきは鋭く鷹のようで、見つめられると心の奥底を矢で射貫かれるような魅力がある。けれどふとした拍子に緩む目元が、夜闇に浮かぶ雲の狭間から差す一瞬の灯りが魅せる夜の花のような……そんな美人に仕立てている。

 ブロンズヘアーが軽く靡く程度の長さで揺れていて、窓際で風に揺られている姿は一枚の絵となり、普段から近寄りがたいのに、いっそう世界から隔絶された雰囲気を醸し出す。

 絵心がある生徒が秘密裏に流しているポストカードサイズの姿絵は私も持っていた。

 

 男子生徒からの人気はというと、実はそんなに高くは無い、というのが情報収集した中で得た意外なものだった。

 男子の中では物騒なあだ名が流行っており、また力自慢が模擬戦で次々と沈み、腕の立つ教師でさえ剣技で後れを取るという尋常では無い実力が、男子達からの人気を一歩二歩、下げさせる要因となっているらしい。

 当たり前だ。

 彼女はこの光栄宮学園では滅多に出ない特待生。

 剣技一本で入ってきた実力者であり、学園側が招いた人物と言ってもいい側の人間なのだ。有象無象の男子達とは分けが違う。

 

 対人の模擬戦授業の噂話を聞く度に、どうしてそこに自分が居なかったのかと何時も思う。

 曰く、巨漢の男子生徒からの猛攻を一歩も引かずに防いだ。

 曰く、4対1でもかすり傷一つ負わずに勝利した。

 曰く、クラスメイト全員と連戦しても最後まで余裕があった。

 曰く、あの香月院ゼンが唯一本気で相対する相手。

 などなど。

 模擬戦の授業中は教師役として動いているらしく、実力を求める男子生徒の列が出来る人気らしい。

 それがまた、女性として魅力が無いと言われているようで思わずペンをへし折ってしまったけれど、高嶺の花である事には変わりが無いという報告があったことで、男子達に対する苛立ちは少しだけ落ち着いた。

 

 男子生徒の中では人気が高い女子生徒の一人は、神楽ルカという女子生徒だ。可愛らしくも力強い姿が逆に保護欲を誘うらしく、確かに女子から見ても頭一つ抜けてイメージだ。

 コロコロと笑い、表情は愛らしいと言う。

 

 ……オリヴィア・メルベリさんと常に一緒であり、寮も同室であるらしく、その構図に胡座をかいたかのように馴れ馴れしい態度を取っている。

 少し前にそれが原因で騒ぎを起こしたというのに、休み明けの学園生活では反省の片鱗が欠片も見えない。

 寮の食堂では仲睦まじい様子がよく見られるという。

 

 入学して直ぐに香月院ゼンやフィオレンティーノ・ジャイルズ、ガスト・レナード、塔仁義ゴウといった学内の有名人と次々と知り合っている。

 誰も彼も、派閥のトップ層だ。力を持ちすぎた人々。

 特に香月院とジャイルズの二人からは特に目を掛けられているらしい。

 決闘騒ぎの時に二人から積極的に稽古を付けられていたのは有名な話だ。

 何時も遅くまで模擬戦場を借りていた。ファクト・メンバーの中では、決闘時に何分で負けるか、という賭博も流行っていたらしい。唾棄すべき連中だ。自国だけで閉じこもっていると思えば、他国からの援助も受け取る堕落した貴族モドキ風情が。

 

 あの騒ぎで神楽ルカの評価を落とすかと思えば、逆境にも周囲の視線にもめげずに真っ直ぐに立ち向かったとして評価が上がってしまったのが不思議なところだ。

 前評判は確実に勝てないという内容だったのに、最後の最後では勝ちを拾ったらしい。模擬戦場のシステムが故障した中でも、一歩も怯まなかったという。

 ……オリヴィア・メルベリさんは強いからお前らの中では人気が低いのに、彼女はそうではないというのか。

 

 それはそうと、あのガスト・レナードに目を付けられるとはお気の毒、と心の中で笑ってもいた。決闘騒ぎも彼が裏にいたとか。彼が裏にいたかどうかは知らないが、入学してから起きた騒動では神楽ルカをいじめる派閥が出来ていたらしい。

 私がオリヴィア・メルベリさんを知ったのはその騒動が立ち消えた後だったため、知っていれば干渉していたのにとさえ思う。

 

 神楽ルカとオリヴィア・メルベリさんの間には絆がある。

 誰もがうらやむ、オリヴィア・メルベリさんから親しげに話しかけられている。

 気まぐれに髪を触られ、それに気づかないでいる。

 彼女からの提案があっても諸手をあげずに全てを受け入れていない。

 それを断ち切るために、行動するというのも理由の一つだ。

 本物の輝きを持つ『オリヴィア・メルベリ』という存在の傍に居て良い存在では無い。

 だが、排除しようにも神楽ルカにも友好的な層というのはこの派閥にも何時の間にか多くなっている。本件で連携を取れる人は限られるだろう。

 

 しかしながら、幸いにして協力者は見つかった。

 何処から話を聞き出したのか、向こうから接触していたのは意外だった。

 ガスト・レナードと手を組まないのかと聞いたが、向こうと手を組むには神楽ルカをメインにしなければならないし、そもそもガスト・レナード本人が好きではないらしい。それは同感であった。私も彼は嫌いだ。

 意外と言えば、向こうの用事はオリヴィア・メルベリさんにあるようだったが……彼女を害する可能性があると、彼女達が告げ、私がそれを聞いてもどうぞと返したのは意外だったらしい。

 その場では言わなかったが、どう足掻いても彼女が害される事は無いと確信している。彼女がより強くなるための駒として動いて欲しい。


 戦いの場へと出て、万人をひきつけてやまない、その輝く後光を私に見せて欲しいと、切に願う。

 

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