第107話 見慣れぬ仲介所風景
街に来て、もはや慣れた様子でクエスト仲介所へと向かう。
が、その途中で何となくすれ違う人が多い気がする。
それに、魔獣特有の匂いが前回通っていた時よりも断然多い。
開拓者達もそうだが、普通の人も多い。
「……なんだろう、これ」
思わず呟いてしまうほど違う。
しばしあるけば、見慣れた三階建ての面白みの無い正方形の建物が見えた。世界が違えばコンクリ製物件と言われるだろう、クエスト仲介所だ。
建物から横に飛び出た看板一つないため、建物の正面に立たなければなんのお店かもわからないだろう。普通の比較的安価な集合住宅にさえ見える。
建物の前には多くの開拓者達や仲介所の職員、馬車が屯しており、引っ切りなしに出発している。
それに加え、ここでも妙に普通の服装の人が多い。
道中すれ違った人達は、全員クエスト仲介所から来ているのかもしれない……というか、そうだろう。ここに来るまでめぼしいお店は無いのだから。
そんな不思議な様子を見つつ、大きい扉を開いて中に入る。
クエスト仲介所に入れば、すぐに受付嬢の織賀さんと目が合ったのでぺこりと挨拶をする。
受付嬢さんから視線を外せば、かなり賑やかだ。
他の受付カウンターも度々人が訪れている。
入った直後に何人かすれ違った。
このクエスト仲介所の奥の方は魔獣を狩る集団が多く、手前側は街のクエストを消化する人が多いが、今日は両方とも人が多い。いや、魔獣を狩る集団が多い?
こんな状態なら、織賀さんに話し掛けるのは止めた方がいいかな……と思ったが、ニコニコとこちらを見ているので周囲を伺いつつ向かった。
ばっちりこちらを見ている状態でクエストが張り出された壁に向かう度胸はアタシには無い。
「こんにちは、織賀さん」
「こんにちは、オリヴィアさん。学園が始まったのでは無かったですか? まだ一週間しか経っていませんが、また学園が休校になりましたか?」
「流石にそう頻繁に休校になりませんよ。織賀さんも冗談を言うのですね」
「ふふ、こういうやりとりは好きな方ですよ、私は」
柔らかい表情で問いかけられると、こちらもほっと顔が緩んでしまう。
返す言葉にも笑みがのる。
アタシもこれくらい、余裕のある大人の女性になりたいものだ。
「まだまだ学業に余裕がありそうなので、休日はまたお世話になろうかと思ってます」
それに、と加える。
脳裏を過るのは三層に積み上がったパンケーキ。そしてそのお値段。
「実は、光栄宮学園のメニューが私には高くて……好き放題食べるとちょっとお財布が……」
「まぁ」
そう言うと目を輝かせ、確かにあそこの食事処は高そうですね、と小さく笑ってくれた。
ふと思ったけれど、光栄宮学園は外部の人がふらっと入っても大丈夫なのだろうか。
大学というものがこの世界には無いが、大学に近しい光栄宮学園の設定なら、実はあのカフェとかも外部の人が利用出来るのかもしれない。
可能なら、お暇なときに織賀さんを誘って味わって貰いたいぐらいには、あそこは美味しいのだ。
「来てくださるのは大変ありがたいですね。今、魔獣が多く発生しているようで、少し人手が足りないのですよ」
「人手……外もいっぱい人が居ましたね」
そう言って改めて中を見渡す。
魔獣が多く湧く、と聞けば、増えるのは魔獣を狩るクエスト組、つまりハンターとか開拓者達と呼ばれる人が多くなると思ったのだけれど……。
明らかに戦いに行く装備じゃない、それも割りかし若い人だったり、主婦層の人も多く見られる。
つまり、街側のお手伝いクエストの人が多い。
「街側のクエストも多いのですか?」
気になって聞いてみれば、魔獣の増加と関連があると告げられる。
「狩ってきた魔獣の運搬が多いのです。討伐証明以外にも、大きい部位や丸々持ってきてくれれば、ある程度の値がつきます。クエスト仲介所が馬車を持っていますから、ここまで移動する分には問題ありません」
記憶を振り返っても、確かに移動は馬車、それもクエスト仲介所が出す物しか使っていない。
クエスト仲介所とは少し離れた場所に専用の馬車管理所があるぐらいには一組織で馬車を大量に所持しているという話を聞いたことがある。
「しかし、あくまで移動範囲は仲介所までです。ウチで素材を買い取りしない人は、個別でお店まで持って行く必要がありますから、その運搬クエストが多く出ている感じですね」
「一体丸ごと、ですか? それにしてはすれ違った人はそんなに大きな荷物は持っていなかったですね」
「クエスト仲介所の裏手側で、絶賛解体ショー中ですが、オリヴィアさんは魔獣の解体は得意ですか?」
「い、いえ……」
「確か、光栄宮学園では解体の授業があると、先日長月さんからお聞きしたのですが……」
解体だけでもお安いですがお給料は出ますよ? と言われたが首をブンブンと横に振らせて貰う。
そりゃ出来るし、先々週までいっぱいやったし、授業もやっているが、進んでやりたいものじゃない。
今はまだ、クエストを選べる程度に余裕があるのだから、そういうのは切羽詰まったときだけにして欲しい。
それよりも、アタシも魔獣を狩る側に回りたいのだ。
「魔獣が多いというのは、よくある事なんでしょうか」
物語的には増加はまだ後の方のはずなのだけれど。
今増えるとちょっと怖い。
「そうですね……あまり頻繁に起こる事ではありませんが、無くは無いです。例えば、数ヶ月前にも実は増加の傾向がありました。その時はここまでではありませんでしたので、特に問題視はされていません」
不安そうな顔が見えたのだろう、改めて柔らかい笑みを浮かべて続ける。
「ご安心ください。人手が足りないと言っても十分対処は可能です。希望した開拓者の方達が忙しくなる程度で回っていますから。いざとなれば、クエスト仲介所から特別な働きかけを行います。オリヴィアさんはご自由にクエストをお選びください」
次の更新は明日木曜日です。
GWも終わりが近づいていますが、エル○ンリ○グはまだ終わっていません。




