錬金術師は意気地がない。
私は錬金術師として師匠の力量に驚かされる。
師匠は私を作るさい、生き物が自然発生する仕組みを探っていた。
その未発表のレポートにはこうある。
”生命は生まれるというよりもやって来るという言葉が最も近い。歩きながら徐々に姿を現す。”
生命の誕生には主に親から生まれる者と自然発生するものかあった。
そして自然発生する生き物は赤子でなく子供の姿で生まれる。
師匠の私を生み出す前の共同研究者は、生命の自然発生する際に見られる核に触れようとして死んだと聞いた。
それは強力な呪いだった。
そしてそれは別の世界に続く門。
錬金術師にとっては石もユーアルコントグリレスも人も世界さえも同じ命でつながっていると考える。
命に変わる石があることは何ら不思議ではない。
私は師匠の孫ミラに話しかける。
「大魔境と呼ばれるところがある、昔神様がこの世界を創ったとき、この世界はあるとないが同時に起こる±0の世界だった。それを大魔境という不思議な緩衝地帯を通していくつかの神々の世界とつないであるにしたんだ。それぞれの世界の生き物になりたいと目指すものがこの世界に生まれる。獣と魔物の世界、ドラゴンの世界、エルフの世界と巨人の世界、人は自然発生しないとはいえ影響は受けている」
錬金術師の間で語られる神話だ。±0外の世界からの流入で+に傾く。
それならば外の世界は逆に薄くなっていくように感じるかもしれない。
そうならないために我々は生きている。
心を鍛え、技を磨き、世界に還元することで世界はより強くなる。そう付け加える。
「やっぱりおかしいです。錬金術師の話はいつも矛盾だらけ、その強くなる分の力がどこから出てくるのか全く分からない。」
ミラの反論はすべてその通り。
錬金術師の話は矛盾に満ちている。
矛盾を押し通す事こそ魔法。
その言葉は知っているが私はいまだにわからない。
魔術師としての才能を見せ始めるミラに理解させられる言葉を私は持っていない。
「わかるよ、僕も師匠、君のおじいさんに何度も説明を受けたけれど、結局わからなかった。大魔境と呼ばれる地域があるのは知っているね?あそこの先に別の世界がある。優秀な魔術師でも超えられるものはほとんどいない上に、あちらの世界の王に合うと達成不可能な試練を与えられる。自然発生する生き物の発生個所には大魔境ほどではないが呪いが発生している。君のおじいさんが世界で唯一、その呪いを超えて、生命発生の素を手に入れることができた。他には誰もできない。呪いを消さすと消えてしまう、呪いにやられると死んでしまう。このことは本当に師匠の親友数人と弟子のボクしか知らない。生命誕生の矛盾を昇華させられるかもしれない成果だ。ただボクにはその解明はできていない。君はこのことを発表してもいいし、同じように黙っていてもいい」
世界を揺るがすかもしれないこと。
師匠は生命発生の素を一つ手元に残していたが師匠の死後それは消えており証拠はもう残っていない。
本当に生命発生の素だと証明する方法もない。
ミラだって聡明な子だ、私がその生命発生の素により生み出されたホムンクルスだという事には気づいているだろう。
「どうして私に話したの?」
ミラは私にたずねる。
「師匠の親友たちはもう死んでしまったり生きていても年を取ったものも多い。今の私と同じように誰かに話しているかもしれない。何も語らずに死んだかもしれない。ただ消えてしまっていい話ではないと師匠が死んでから思うようになった。きっと自分だけで秘密を抱えられなくなった時に話すんあろう」
私はそのように答える。
ミラは顔に手を当て少し考えをえぐらせるようなしぐさをした。
「やっぱり、錬金術師って意気地なしね」
ミラはそのようにいった?
全くその通りだ。




