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死ねない少女は、もう死にたくない  作者: トウロウ
第1章: 洞穴の底から
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断章Ⅰ: サヨ

 アルビノとして生きることは、たいして難しくない。

 

 別にこの程度、人間なら誰しも抱えている問題の内の1つなだけだ。

 ちょっと日中に外出しにくいだけ。ちょっと目が悪くなりやすいだけ。決められたルールの中で生きていれば、致命的な異常なんてなんにもない。

 原っぱを駆けまわれて、悲しい物語を読んで泣くことができて、美味しいものを食べて感動できる。

 お父さんとお母さんも優しかった。ずっと私のことを気にかけてくれるし、守ろうとしてくれる。部屋の中でしか遊ぶ手段を知らなかった私を、外に連れ出してくれた。夜中に連れて行ってもらったテーマパークなんて、きらきらしていて、目が飛び出るかと思うくらい綺麗さにびっくりしたものだ。

 

 友達はできなかったけど、それでも日々は充実していた。

 それだけで、今の幸せだけで、十分。

 

 ――全部、欺瞞だ。


「っはーーー。相変わらず重いんだよ」

 

 学校の頼りない椅子の上に胡坐をかいて座り込む少女が、私が話し終わるなり盛大に息を吐いて毒づく。私は彼女のすねをぺしと叩いて、

 

「脚。パンツ見えるよ?」

「今更サヨが見てどうなる。興奮するってなら今すぐ閉じるけど」

「そういう話じゃないって。まだ学校だし……普段から意識しないと。せっかく綺麗なんだから……」

「そう言われるとなおさら警戒心が……身の振り方考え直さなきゃじゃん……」

「だからっ」

 

 必死に訴えかける私の話に頷いてくれたのか、不承不承という様子できちんと座り直す。かと思うと急に立ち上がり、短いスカートを自ら持ち上げて見せつけるようにぴらぴらと揺らした。思いもよらない行動に目を逸らし、困惑の声を上げてしまう。そんな私の反応を見て意地汚く笑い、

 

「スパッツ履いてるからいーの。じゃなきゃこんな折って履かん」

「だっ、だからそういう話じゃないって! 普段からおしとやかにしてないと……いざという時さぁ……!」

 

 顔を赤くして怒る私に「どうどう」と手のひらを向けて制してくる。それに燃料を注がれた私の怒りが頂点に達し、今日こそその傲岸不遜な立ち振る舞いを矯正してやろうと立ち上がりかけ――途中で、目の前の少女に腕を掴まれて制止される。

 

「今日、家は?」

 

 打って変わって真面目な声色にひるんで身体が固まる。そのまますとんと椅子に腰を下ろし、俯く。

 

「……一人」

「だろうな。……甘えるのが下手すぎ。直せよ」

 

 窓の外から差し込む夕日から守るような位置で座る少女が、机に頬杖をついてこちらを見る。掴んだ私の手から力を緩めて、普段の言動からは考えられないような優しい手つきで私の袖をまくった。

 

「増えてないな」

「……言われたから」

「バーカ。だからダメなんだよ」

 

 吐き捨てるようなセリフは私を咎めるようで、誰に向けたものでもないようなか細いものだった。少女は私の手首から目線を外して、私と目を合わせる。

 

「1回ウチ寄ってから行く。着替えないし……何時に着きゃいい?」

「……ごめんね」

 

 思わず俯いて謝ってしまう私に「バカ」と再度侮辱の言葉を投げかけて、思いっきり私の額にデコピンをした。

 

「ーーー~~!?」

 

 突然の衝撃に何事かと涙目になりながら額を押さえる私を見て、堪えきれないとばかりに笑いながら、言った。

 

「謝んな。私が好きでやってることだよ」

 

 再度合わせた目、少女の瞳は照れくささで揺れていて、それが彼女なりの精一杯の慰めだと理解した。それになんだか救われた気がして、



 

「うん、ありがと。███」

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