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この問題児たち、危険度SS級につき  作者: AtoRei


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8/11

桜餅戦争―変わりゆくもの、変わらぬもの―①



春は、笑顔が咲く季節じゃ。


風は柔らぎ、光はほどけ、花は一斉に咲き誇る。

そして人間は、よう集まる。


儂はこの丘に立つ桜の精じゃ。

樹齢は人間の数代を軽く越え、

幹は太く、

枝は広く、

春になればこのあたり一帯を薄桃に染め上げる。


動くことは出来ぬが、

その分だけ、

ここに来る人間たちの営みは、

よく見える。


昔に比べれば、森は減った。

風の通り道も変わり、

鳥の数も少しずつ減っておる。


――だがここ十年ほどで、もう一つ変わったものがある。


力を与えられた者が、増えすぎた。


火を操る者。

風を裂く者。

雷を従える者。


そして、それらを巡って争う者たち。


《国家連合》と、《ヴィラン連合》。


どちらが正しいかなど、儂には分からぬ。


ただ――これは偶然ではない。


大地の奥から、何かが押し上げてくる。


まるでこの星そのものが、


人に問いかけておるような気配。


――おぬしらで、整えよ、と。


それでも――人の笑い声は、増えた気がするのう。


この季節、

儂の足元に敷物が広げられ、

酒が並び、

弁当が開かれ、

誰かが笑う。

それを見るのが、儂は好きじゃ。


――その日も、そうなるはずじゃった。



「よし、ここでいいだろ!ちゃんと日陰とれてるし!」


青い髪の少年が、忙しなく敷物を広げる。


その後ろから、妙な気配を纏った子らが

ぞろぞろと現れた。


黒衣の剣士。

白髪の少女。

炎のような髪の少女。

風をまとった少年。

そして、小さな白い獣。


……ほう。 儂は枝先で少しだけ身じろぎした。


ただの人の子ではない。


気配が濃すぎる。


まるで、嵐がそのまま人の形を取ったような連中じゃ。


じゃが――


「みゅ!!」


「おい、それ俺のサンドイッチ!」


「……弱肉強食」


「違うだろ!?」


……ほっほ。中身は、ただの子供じゃな。


「俺は昆布だ」


黒衣の少年――夜翔が、

妙に格好つけた手つきで

おにぎりを持ち上げる。


「私はたらこ!」

カレンが即座に返す。


「……鮭」

真白は短く。


「風向き的にはサンドイッチかな〜」

タクトが軽く笑う。


「いや風向きで食うなよ!?」

潮音がツッコミを入れ、場が緩む。


よい光景じゃ、実によい。


人は減った森の代わりに、

こうして笑いを増やしていくのかもしれん。


ならば、それもまた悪くない変化じゃろう。


――そう思っておった、その時じゃ。


夜翔が、ゆっくりと立ち上がる。


無駄に、間を置いて。


右手を軽く振り、袖を払う。

その動きに合わせるように、


――花びらが、一枚だけ軌道を変えた。


一歩、前へ。

足音は、ほとんどしない。

だがその一歩で、

場の空気がわずかに沈む。


彼は左手を背に回し、

右手だけを静かに前へ差し出した。


指先を揃え、

空間を“なぞる”ように――


ひらりと落ちる花びらを、二本の指で挟む。


そのまま、視線だけを上げる。

顔は動かさない。

瞳だけが、空を射抜く。


「見ろ」


低く、通る声。

花びらを、指先でわずかに回す。

意味などない動作。

だが、それを“意味あるもの”として成立させる。


「散りゆく花弁――これは終焉ではない」


一拍。


わざと、間を置く。


「存在が形を捨て、次の位相へ移る証明だ」


指を開く。

花びらが、落ちる。


――いや。


一瞬だけ、“落ちるのをためらった”。


「この刹那にこそ、真理は宿る」


そのまま、腕をゆっくりと下ろす。

最後に、ほんの僅かに顎を引いた。


――決めポーズだった。


「おい」

潮音が顔をしかめる。


「外だからな?」

「沈黙は、この景色に対する冒涜だ」


……なんじゃあれは。


わしは思わず枝を揺らした。


周囲の人間もざわついておる。


「ママ、あのお兄ちゃん何してるの?」


「見ちゃだめ」


ほっほっほ。

……いや、笑っておる場合ではないのう。


じゃが当の本人は気にする様子もなく、

むしろ胸を張っておる。


「視線を感じるな……理解できぬか、この高みに」

「やめろって!!」


潮音の叫びが虚しく響く


……ちと残念な子じゃのう。



こんばんわ、アトレイです。


問題児の群像劇がまたまた開始です。

桜の季節なので、お花見回にしてみました。


今回は桜の木の精の視点で書いてみています。

お気づきの方もいるかもしれませんが、

平和でほのぼのな設定なのに、


不穏感が漂っています。


桜の木はやはり人間よりも動物寄りなんでしょうか。

犬の方がいち早く地震に気づくって言いますしね。


そんなこんなで徐々にお話が転がり始めます。


後編をお楽しみに。


でわでわ。

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