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この問題児たち、危険度SS級につき  作者: AtoRei


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5.閑話休題:イヴァルの憂鬱



遠く離れた荒野の岩山。

赤雷を纏った巨躯が、遠隔透視でその光景を眺めていた。


……また、笑っている。


あの化け物どもがプリンを囲んでいる。


戦場ですらない。

ただの食卓。


それなのに――


「……なんなんだ、あいつらは……」


イヴァル・ヴォルグラスは、肩を落とした。

かつて都市を焼いた赤雷は、

今は弱々しく指先で明滅している。


「戦っても意味がない……」


ぽつり、と零れる。


力は通じない。

理屈も通じない。


挙げ句、勝っているのか負けているのかすら

分からなくなる。


あの連中と関わると、全部がどうでもよくなる。


「……もう、いいだろ……」


低く、弱々しい声だった。


視線を逸らそうとする。

だが、逸らせない。


プリンを口に運んで、笑っている。

あの連中が。

ただ、それだけの光景なのに。


理解できない。

理解できないのに、目が離せない。


拳を握る。


いつものように猛々しい雷が走る――はずだった。

だが、弱々しく弾けて、すぐに消えた。


「……はぁ……」


深く、長いため息。


岩に腰を落とす。

その巨体が、どこか小さく見えた。


「次は……行かん……」


誰に言うでもなく、呟く。


「絶対に、もう行かん……」


少しだけ強く言い直す。


その時。


「ホーッホッホッホッホッ!!!!!」


乾いた岩山に、場違いな高笑いが響き渡った。

空気が歪む。


イヴァルのすぐ背後に、ひらりと影が落ちる。

振り返る間もなかった。


「また逃げるんですの!?

情けないですわね、イヴァル!」


びくり、と巨体が跳ねた。


「……っ!?」


いつの間にか、そこにいた。


豪奢なドレスを翻し、愉悦に満ちた笑みを浮かべる女

――ローザリア・フローレンス。


まるで最初からそこにいたかのように、

当然の顔で立っている。


「……いや、行かん」


イヴァルは一歩距離を取りながら、低く言った。


「もう、あいつらとは関わらん……」

「あらあら、怖じ気づきましたの?」


ローザリアは扇子を口元に当て、

楽しげに目を細める。


「あんな“食遊び”に負けたくらいで、

随分と弱気ですこと」

「……負けたんじゃない」


ぼそりと否定する。


しかし、言葉が続かない。

自分でも説明できない何かに、

喉が詰まる。


「まあいいですわ」


ローザリアはくるりと踵を返し、

軽やかに言い放った。


「わたくしは行きます」


ぴたり、と足を止める。


「あんな連中、次はまとめて叩き潰して差し上げますわ」

「やめろ……」


即座に出た言葉だった。


「準備なさい」


振り返る。

その瞳には、微塵の迷いもない。


「出撃ですわよ!」

「やめろって言ってるだろ……!」


イヴァルは頭を抱えた。

指の隙間から、弱々しく赤雷が漏れる。


「……もう嫌なんだ……」

絞り出すような声。


「関わると、全部おかしくなる……」

拳を握る。

だが、雷は弾けきらない。


「何を言っているのかしら」

ローザリアは、心底不思議そうに首を傾げた。


「これほど面白いこと、ありませんわ」


――その一言で、すべてが決まる。


沈黙。


やがて――


「……はぁ……」

深く、長いため息。

肩が落ちる。


巨体が、ひどく小さく見えた。


「……行くしか、ないのか……」


赤雷が、弱く灯る。


それは怒りでも、闘志でもない。

ただの、ため息のような光だった。



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